- 様々な音楽性をブッ込んだ個性的すぎるサウンド
- ヘヴィさと共存する超ポップなメロディー
- 再生時間は短いのに中身は超濃密
初期は割りかし普通のモダンメタルコア/ポストハードコアバンドだったものの、ある時期を境に大きく音楽性が変容、デジタルサウンドやヒップホップ、トラップなど異ジャンルの音楽を臆面もなくブッ込むようになり、唯一無二の超個性派ヘヴィロックをプレイするようになったPaleduskの新作EP。
このバンド、何年か前にYouTubeでMVを見た時は「ああ、よくいるポストハードコア系ね」くらいしか思わず、特に掘り下げようともしなかったので、たまたまシングル「HAPPY TALK」を耳にした際は面食らいましたね。「え!何コレ!?」って。
そんな尖ったセンスが評価されたのか、BRING ME THE HORIZONやリル・ウージー・ヴァートといったアーティストの楽曲制作に、ギタリストのDAIDAIさんが携わることになったのもよく知られているところです。
ここ近年色々な楽曲をデジタルシングルとしてリリースしてきましたが、ここにきてフィジカル音源がようやく発表されました。このバンドがCDリリースするのって、結構稀みたいですね。
本作はリリース済みのデジタルシングルに新曲をプラスした全7曲、20分ちょいのコンパクトな1枚。曲ごとの時間も短いので、聴き疲れることなくサッと聴き通せるのですが、短い中にもバンドの個性がとんでもないくらい濃密に詰まっていて、非常に面白い作風に仕上がっているなと。
オープニングのM1「PALEHELL」は、モダンで密度の高いヘヴィサウンドで攻め立てるも、サビに当たるメロディーは、ポップと言い切ってしまえるほどにキャッチーで、聴けば1発で覚えてしまうのでは。
先行配信されたM4「RUMBLE」は、聴き手を置いてけぼりにしてしまうほどとカオスに振り切った変態的展開を経て、大きなスケールを描くコーラスへと至る様が非常にドラマチックな名曲。中盤の山場として充分以上に機能しています。この曲のMVを最初見た時のインパクトはデカかったな〜。1曲の中に収まる情報量じゃないもん。
M5「I'm ready to die for my friends」は、モダンメタルコアにファンキーモンキーベイビーズが歌ってても違和感ないようなJ-POPメロが絡むという、ありえないファンタジーが実現したような奇天烈な楽曲だし、ラストのM7「Q2」は、パワフルなシャウトで畳み掛ける疾走曲ながら、ハードコア/メタルコアとしてはありえないほど希望に満ちたメロディーが支配的。CROSSFAITHのKoieさんがさすがのスクリームを披露しているのですが、怒りとはまったく違うポジティヴな感情が表出しています。
メタル、ハードコア、テクノ、ヒップホップ、J-POP、トラップなどなど、貪欲かつ何でもありの闇鍋的サウンド。普通ならヒッチャカメッチャカになってしまいそうですが、非常にキャッチーなメロディーを用いて、うまく1曲にまとめあげた手腕が活きており、十把一絡げなメタルコアとは完全に一線を画していますね...。好き嫌いは別として、衝撃度はかなりのものでしょう。
音楽性はかなり尖っているものの、前述したように聴き疲れを覚えたりすることはなく、これはひとえに音楽の根底にキャッチーさがあるからかな(それ故に「ポップすぎて受け付けない」という人もいると思いますが)
日本のメタルコア/ハードコアシーンでは、今やかなりの数の実力派バンドが現れていますが、こと"個性"という点においては、このバンドが抜きん出ているのではないでしょうか。ここまで各曲がキャラ立ちしまくってるメタルコアは、他を探してもそうそう見つかるもんじゃないと思います。
ここまでやりたい放題やっておいて、いまだに「作曲・編曲のアイディアが枯渇する気配がない」と言い切るソングライターのDAIDAIさんって、ひょっとして天才なのでは?
個人的に本作は
"短い中にありえないほどの音楽的エッセンスが詰め込まれた、超個性派エクストリームミュージック。どれだけカオスになっても根底にはキャッチーさがある"
という感じです。