ここ最近の日本のインディーズメタルシーン、特にメタルコア・ハードコア・ラウドロック界隈において、頻繁に名前を目にするようになった、2014年結成の若手メタルコアバンドの1stフルアルバム。
メンバーも若く、まだそこまで長いキャリアを積んでいるわけではないバンドですが、その実力の高さから早い段階で注目を集めていたようで、coldrainやCRYSTAL LAKEなどの日本の人気バンドのゲストアクトに迎えられたり、海外アーティストとの共演も果たしているらしい。
本作の帯にもわざわざ"次世代 No.1メタルコア"と記しており、新進気鋭のバンドとしての自負が見え隠れするわけですが、確かにそんな強気な文句を書きたくなるほどに本作の内容は強烈。
近年の若手バンドがやるメタルコアということで、やはりモダンなサウンドだったり、Djentのようなヘヴィサウンドが聴けたりと、今風な音楽性ではあります。AS I LAY DYINGやKILLSWITCH ENGAGEのような、保守本流のメロディックメタルコアとはやや趣が異なるのは間違いないです。
しかしポストハードコアやスクリーモというよりは、激情ハードコアやニュースクールハードコアと言った方が通りが良いような、「硬派さ」というべきスタンスを貫いているのがポイント。爆走パートとリズム落ちパートを双方積極的に取り入れ、頻発するテンポチェンジを難なくこなすヘヴィな演奏、ほぼデスヴォイスのみで攻撃的な印象を強めるヴォーカルが実にパワフル。ひ弱でナヨっとした印象は皆無。
そして何といっても嬉しいのが、サウンドのパワーを一切邪魔しない範囲で、ギターフレーズや一部のヴォーカルにて、激情に満ちたエモ的キャッチーさを生み出している点。ひたすらアグレッシヴなだけでなく、しっかり耳に残るメロディアスさを描き出しているのが強いですね!近代の叙情メロデスにも通じるような哀愁が素晴らしい。
さざ波とピアノによる静かなイントロからM2「Bereavement」と差し掛かると、早速彼らの強みである、馬力と叙情性を両立した強靭なリフで疾走!ヴォーカルも見事なブチギレっぷりで熱量バツグン!途中急に挿入されるDjent的ヘヴィパートも、サウンドのパワーが充分すぎるからか、せっかくの勢いが削がれてしまう印象も無い。
そしてM3「Departure」はイントロから早速メロウなギターで疾走し、本作中最もメロディアスなサビも登場。どこか青臭くも泣かせてくれる旋律は実に魅力的で、そんな中にも怒涛の勢いで押し寄せる叙情ヘヴィリフ、超速バスドラ連打がエクストリームメタルらしい攻撃性をしっかりと演出。
とにかくアルバム全体通して、ハードコアらしいシンガロングや破壊力充分なデスヴォイス、荒々しくもタイトでヘヴィな演奏、疾走部とモッシュパートを複雑に織り交ぜた曲展開を貫き通し、強固で叙情美溢れるモダンメタルコアを徹底している。最もストレートな疾走感に溢れ、バッキングのリードギターがエモーショナルなメロをかき鳴らすM9「Towpath」で締めくくるおかげで、聴き終えた後の気持ち良さも文句なし。
"次世代No.1メタルコア"という文句が決して大げさにはならない、モダンメタルの魅力に満ちた強力盤と言えるでしょう。どうやらメンバーの脱退が多く、なかなか安定していないっぽいんですが、どうにか盤石の体制になって国産メタル・ラウドシーンの最前線を走り続けて欲しいバンドです。
YouTubeにある「Departure」のMVのコメント欄に"日本の若手メタルコア・シーンを引っ張っていってほしいランキング堂々の第1位過ぎる"というのがありましたが、僕も全く同じ意見。
個人的に本作は
"次世代No.1の自称に偽りなし。激情ハードコア的疾走とDjent的ヘヴィさを巧みに使い分けるハイクオリティーなモダンメタルコア"
という感じです。