ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

WHISPERED 『Shogunate Macabre』

 

前回RYUJINのアルバム感想を書いた際に、「そういえば和の世界観をメインに据えた、Children Of Bodom型のメロデスって他にもいたよな〜」と思い、CDラックから引っ張ってきました。

 

フィンランド出身の歌舞伎メタルバンド・WHISPEREDが、2014年に発表した2ndフルアルバム。国内盤リリースされて局所的に話題を呼んでいたようなので、知ってる人も結構多いのではないでしょうか。

 

本作がリリースされた当時、僕は大学生でCDショップでバイトをしており、社員さんから「なんか今歌舞伎メタルバンドって怪しいヤツが出てきてるんだけど知ってる?」と話しかけられ、それがきっかけで購入しました。

 

歌舞伎メタルバンドってなんぞや?と思う人もいるかもしれませんが、要は和楽器の音色を大幅に導入し、日本古来の情緒を演出してるんです。先日のRYUJINと同様に、ルーツはChildren Of Bodomと思われる、楽器がキラキラとド派手に舞うメロデススタイルです。

 

歌詞のテーマには源義家とか、天照大神とか、カッパとか雪女とかが使われ、三味線や胡弓の音色を積極的に取り入れる。国内盤ボーナストラックは『銀牙 -流れ星 銀-(フィンランドではかなりの人気作らしい)のテーマソングに、FFのBGMのカバーをそれぞれ収録してるし、アー写は歌舞伎役者の格好で日本刀所持と、筋金入りのニッポン贔屓っぷりを見せています。

 

僕は歌舞伎については「白塗りにした役者が"勘定奉行にお任せあれポーズ"をとってる」「苗字、中村・市川がち」くらいの知識しかないので、この音が歌舞伎の世界観をちゃんと表現できているかはわからん。ただ、日本的な情緒はしっかりと出せているのではないかと。

 

見てくれやバンドコンセプトだけですと、ネタ臭いイロモノバンドみたいですが、その音楽はというと非常にハイクオリティー和楽器の音色が大量に使われていながらも、それらが邪魔になったり、あざとくなりすぎたりすることがない。COB的キラキラ疾走メロデスサウンドに、和要素がしっかりと落とし込まれています。

 

どうしても和楽器によるアレンジに耳が行きがちになりますが、曲の骨格はあくまでメロディックデスメタルであるところがキモなんですよね。大仰なオーケストレーションにより、映画的な劇的さ、緊迫感を演出しているのもあり、アグレッシヴなメタルとしての出来の良さがしっかりと担保されているのが嬉しい。単なるイロモノに終わらない。

 

この「和の要素が非常に強いにも関わらず、あくまで基本線はメロデスからブレない」という、絶妙なバランス感覚こそ本作の魅力でしょうね。作曲担当であるヨウニ・ヴァルヤッカのセンスの良さが光ってます。

 

そんなバンドの強みが特に強く発揮されているのがM7「Unrestrained」で、これぞまさにChildren Of Bodomタイプのメロデスと、和のサウンドが見事に調和したキラーチューン。ギターメロディー自体のキャッチーさもすこぶる良く、短い中にメロデスのロマンとダイナミズムが凝縮されています。

 

メロウなギターと共に疾走しつつ、和楽器の美しい響き、合戦の怒号が響き渡るM2「Hold The Sword」に、不気味さと神々しさを併せ持つサビが印象的なM3「Fallen Amaterasu」、戦士の勇ましいムードがシンフォアレンジでしっかりと表現された10分越えの大作M8「Upon My Honor」など、どの楽曲にも耳を惹きつけるフックが備わっています。

 

コンセプトはイロモノなれど、その実態は紛れもなくホンモノ。どれだけニッポン要素をゴリ押そうとも、根底にあるのは「カッコいいメロデス」であるところが素晴らしいです。ネタ臭いメタルを苦手とするような人でも、ここまで洗練された内容であれば抵抗なく聴けるのでは。

 

 

個人的に本作は

"和楽器によるアレンジを大々的に取り入れた、ニッポン贔屓メロデス。スタンスこそイロモノ臭いが、COB型ド派手メロデスとしてのクオリティーが非常に高い"

という感じです。

 


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