ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

UPON STONE 『Dead Mother Moon』

 

前回に引き続きメロディックデスメタルについて書こうかな。今回取り上げるのは今年に発表された新譜になります。

 

アメリカはカリフォルニア出身の、メロディックデスメタルバンド・UPON STONEの1stアルバム。これまでEPのリリースはあるようですが、フルアルバムは本作が初めて。

 

気になるのはまず出身ですよね。カリフォルニア!ロサンゼルスのようなイケイケの大都市とか、西海岸のスケートパンクとか、そういったイメージ。まったくもってメロデスの印象はない。

 

さらに音楽性は、それに輪をかけてカリフォルニアっぽくない。音だけ聴けばアメリカのバンドとはとても思えず、北欧のバンドだと認識してしまうでしょう。発せられるオーラが寒々しいもん。全然温暖じゃないよ。

 

音の質感は一昔前のスウェディッシュデスメタルっぽい感じでしょうか。90年代に勃興した、元祖メロデスサウンドを現代に蘇らせたような印象があり、ややノイジーで潰れたような歪みのギターは、「ああ、確かにメロデスってこういう感じの音出してるイメージあるわ〜」と言いたくなっちゃうようなシロモノ。2024年発表のアルバムでこの音を出すとは、メンバー自身「あの頃のメロデス」を再現しようと意図的に仕組んでいるのでしょうきっと。

 

去年、ガチのIN FLAMESフォロワーであるMAJESTIESがアルバムを発表し、90年代型メロデスの継承者として局所的に話題を呼んでいましたが、それに続けと言わんばかりのバンドですね。リバイバルブームでも起きるのでしょうか。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

バスドラ連打を多用しながらアップテンポで展開し、ひしゃげたギターが叙情性を含んだ慟哭リフをザクザクと刻んでいく。時折メロウさがバリバリと目立ったギターソロも飛び出し、古き良き叙情メロデスを愛するリスナーのツボを的確に刺激してくる。

 

演奏自体はそこまで特筆するところはなく(強いて挙げれば疾走パートのドラム、表と裏がひっくり返ってるような箇所ありません?)、このバンドならではの個性みたいなものは薄いですが、モダンさとは無縁のアングラ臭、哀愁溢れるスタンダードなメロデスの魅力がたっぷり。

 

どの曲も総じてメロディアスで捨て曲は無い。ザラついた質感のギターリフに、ここぞというところで切り込まれるギターソロ、噛み付くようなしゃがれたデスヴォイス、う〜〜〜ん、これぞメロディックデスメタル

 

疾走部だけでなく、M4「Dusk Sang Fairest」のようなスロー曲(後半に思いっきりブラストするが)においてもギターが非常にメランコリックな旋律を奏で、退屈さを感じさせないフックを備えているのも嬉しい。さらに30分ちょいという短さもあり、聴き疲れもなく慟哭リフに身を浸すことができます。

 

どの曲も押し並べて質は高いですが、安定しているが故に際立ったキラーチューンが無いとも言えるでしょうかね。まああえて挙げるとするなら、つんのめるようなブラストで爆走した後、切れ味と泣きを兼ね備えたリフ、リードで疾走しまくるM2「Onyx Through The Heart」かな。後半にちょっと顔を出す勇壮なメロがまた良いんだな!

 

ヘヴィさ重視のモダンな質感、Children Of Bodom的なキラキラド派手サウンドは皆無、ひたすらに叙情的なメロディーで駆け抜ける、潔い直球メロディックデスメタル作品でした。小細工無用、とにかくメロデスらしいメロデスで哭きたいんだ!という人にとっては、その欲求を十分に満たしてくれますよ。

 

 

個人的に本作は

"90年代的な北欧情緒、アングラなムードを漂わせた古き良きメロデス。リフでもリードでも、終始かき鳴らされるメランコリックなメロディーが大きな武器"

という感じです。

 


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