ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

ARCH ENEMY 『Deceivers』

 

前作『Will To Power』から5年ぶり、割とコンスタントにアルバムを作る彼らにしては長めのインターバルを経て発表された、ARCH ENEMYの11thフルアルバム。

 

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リリースサイクルが遅れたのはやはりコロナの影響が大きかったようで、各人が対面しての制作にこだわっているという彼らのレコーディングは、なかなか難航したそう(ジェフ・ルーミスのギターのみリモートらしい)

 

まあ、年齢を重ねるごとにどんどん時間の流れが加速してきている僕としては、むしろ「えっ、もう前作から5年も経ってんの?」って感じているのが恐ろしいところなのですが...(笑)

 

さて、ヴォーカリストにアリッサ・ホワイト・グルーズが加入しての3作目。基本的には近年のARCH ENEMYらしい、ギター中心のエクストリームメタル。これまで名作をたくさん出してきた彼らのこと、本作のクオリティーには何の心配もしてませんでしたが、期待通りの強力な楽曲が並びます。

 

ただ本作においては、ここ近作から感じられていたメロディックデスメタルらしさの希薄化がまた一歩進んだように感じられる。オープニングトラックであるM1「Handshake With Hell」がその最たる例ですね。

 

メロデス的な慟哭リフや泣きのギターを抑え(サビ裏ではガンガンリード鳴らしてますが)、ヘヴィでアグレッシヴな色を濃くした演奏を主軸とし、メロディー面はアリッサのクリーンヴォーカルにて表現。誤解を恐れずに言えば、メタルコア的と言っても差し支えない曲調であり、正直最初聴いた時は「ARCH ENEMYらしくないな」と思いました。

 

しかし怒涛の如く畳み掛けるリフの嵐に、ダイナミック&メロディックなサビ、キモであるアリッサの見事なヴォーカルワークが合わさり、ドラマチックな展開を見せる楽曲は、らしい・らしくないなんてことがどうでもよくなるほど魅力的。サビ終わりの"A lobotomy!"のフレーズの気持ちよさにすっかりヤられてしまうことに。

 

この曲以外においても、いわゆる北欧メロディックデスメタルと呼ばれるような寒々しい叙情リフは無く、かつての『Rise Of The Tyrant』『War Eternal』のようなアルバムほど、際立ってリードギター大盤振る舞いという出来でもない。

 

ヘヴィに叩きつけられるリフと高速ソロ、そのギターをガッチリと支えるリズム隊、獰猛なヴォーカルの畳み掛けは、もうメロデスというよりも、CDの帯にある通り「アグレッシヴ・ヘヴィ・メタル」という形容が方がふさわしいとすら言えるかも。

 

これまでCDに収録されていたボートラのカバー曲は、ある程度ARCH ENEMYらしいエクストリームメタルの体を保っていたものの、本作収録のPICTUREのカバーM12「Diamond Dreamer」は、全編クリーンヴォーカルにて歌い上げられ、完全に正統派メタルとなっている点からも、"脱メロデス"の印象が強くなってます。

 

この点をして、純粋なメロデスリスナーとしては面白くないと感じるかもしれず、同日発売のTHE HALO EFFECTのアルバムに興味を持っていかれるかもしれないですね。しかし、僕としては正統的&攻撃的なヘヴィメタルとしての魅力をきちんと提示してくれている本作は、十分以上に評価に値するもの。

 

先行公開されたMVでグッと新作への期待を高めてくれた疾風怒濤のM2「Deceiver, Deceiver」、それにも負けないほどの疾走感(中盤のスローダウンはちょっといただけないが)と、アグレッション満載のリフに圧倒されるM4「The Watcher」、特にメロディーにメランコリックな叙情性が強くブレンドされたM5「Poisoned Arrow」など、楽曲のクオリティーの高さは折り紙付き。

 

確かに個人的にも、このバンドについてはもっとメロデスメロデスしてほしいとは思うし、マイケル・アモット特有の強烈な泣きのギターをもっと導入して悶絶させてほしいという気持ちはあります。本作においては力で押すリフの魅力は強いですが、リードギターについてはやや足りない印象があるので。

 

しかし、それでも僕としては、本作もまた良作であることは認めざるを得ないな!ジャンルの枠を超えて描き出される、アグレッシヴなヘヴィメタルのカッコよさが詰まった一作です。

 

 

個人的に本作は

"メロデス的な泣きはやや薄まり、「アグレッシヴ・ヘヴィ・メタル・バンド」の呼び名により近づいた獰猛な一作"

という感じです。

 


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