アメリカのグルーヴ/エクストリームメタルバンド・MACHINE HEADの、前作『Catharsis』以来、4年ぶりとなるフルアルバム。
show-hitorigoto.hatenablog.com
MACHINE HEADらしいモダンなヘヴィさを際立たせた激烈リフと、時にポップとも言えるようなメロウさを併せ持った前作は、やや収録曲の多さが聴き疲れを覚えたものの、充分にカッコいいと思える力作でした。
ただ、川嶋未来さんのライナーノーツでは、「前作は賛否分かれる作風であり、アメリカの音楽雑誌に酷評レビューが載って、ロブ・フリンがSNSで猛抗議した」なんてエピソードが語られていました。そうだったんだ。僕としては全然悪くないアルバムだと思ったんだけど。
そして本作、リリース前から告知されていたので皆さんご存知かとは思いますが、本作はコンセプトアルバムになっており、何と日本の漫画・アニメ『進撃の巨人』のストーリーからインスパイアを受けたのだそう(ロックダウン中にロブが子供とアニメを見ていたらしい)
あくまでアルバムストーリーの制作に影響をもたらした、というだけで、漫画の内容そのままのコンセプトであったり、キャラクターの名前を出したり、といったことはないようです。Linked Horizonのカバーが収録されていることもない。
日本の漫画をモチーフにしたということで、リリース前は殊更にその事実がセールスポイントとして打ち出されていた感がありますが、いざ音源を耳にしてみると、ぶっちゃけ言われたとしても気づかんレベル。従来のMACHINE HEADらしい「野蛮」とすら形容できるようなヘヴィ&アグレッシヴな作風です。
通常のヘヴィメタルにおける"ヘヴィ"の要素を2倍濃縮に煮詰めた、ハンマーで目の前のものを叩き潰すような激重リフ。それもただ重たいのみならず、テンポの速いパートならば、触れたもの皆切り裂かんとばかりな鋭利な攻撃性もある。
このリフを鼓膜を通して脳みそに流し込んでいく快楽はかなりのもので、リフの刻みに合わせてヘドバンしたくなること必至です。グルーヴィ&スラッシーで、猛り狂うロブ・フリンのヴォーカルと合わせて、聴き手の熱を天井知らずに上げていく。
そして、単純にヘヴィな攻撃性のみで突き進むのみならず、意外にもクリーンヴォーカルで(声質的にクリアな感じではないが)メロディックに歌い上げるパートも多く、曲によってはドラマチックなツインギターの絡みも登場するなど、メロディアスなメタルとしての魅力も兼ね備えているのが嬉しいところ。アグレッションに不足はないのに、どこかキャッチーにも響く。
特にM2「Chøke Øn The Ashes Øf Yøur Hate」〜M3「Becøme The Firestørm」の流れは、アグレッシヴ&キャッチーという本作の美点が全面に出たキラーチューン。特にM3なんか、サビのメロディーは共に歌えるほどキャッチーなのに、バックでは速弾きギターとブラストビートが重なり合い、猛烈な爆走感を生み出している。これでテンションが上がらないはずもない。後半の狂った疾走ギターソロ、機関銃のようなバスドラ連打もたまらん!
本作の中ではバラード(というにはイカつすぎるけど)的役割を果たすM5「My Hands Are Empty」に、非常にメロウなサビメロとエモーショナルなツインギターソロが特徴的なM8「Kill Thy Enemies」など、メロディックな方面に舵を切ってる楽曲の存在感も大きいですね。音質こそヘヴィながら、じっくり味わい深く聴ける瞬間もある。
後半に差し掛かるM9「Nø Gøds, Nø Masters」〜M10「Bløødshøt」の流れは、前述のM2〜M3と並ぶ本作のハイライトですね。エモーショナルなシンガロングを誘発させる哀愁の効いた前者に、曲タイトル連呼のフレーズがキャッチーかつ熱い後者と、キメとなるキラーチューンをここにも用意してくるのが頼もしいです。
全編通してMACHINE HEADらしい野蛮なヘヴィさが濃厚に詰まっているのですが、決してエクストリームになりすぎず、メロディックでダイナミックなヘヴィメタルとしての魅力を捨てないという、彼らの楽曲作りのバランス感覚が遺憾無く発揮されたアルバムかと。
あえて一つネガティヴなことを言うなら、ボーナストラック含めて全15曲・70分と、さすがに長くて聴き疲れしやすいことかな〜...。本作の中ではかなり落ち着いた曲調であるM13「Arrøws In Wørds Frøm The Sky」でさえ、どんだけ弦ダルンダルンにしてんの?って言いたくなるくらいヘヴィなパートあるし。
とはいえ、あまりにモダンなヘヴィさを強調された作風は苦手...という方でも、本作くらいのバランスなら充分に聴けるのではないかと思いますよ。このリフの気持ちよさ、快感はメタルヘッズ共通の感覚だと思うので。
個人的に本作は
"荒れ狂うアグレッションとヘヴィさを貫きながら、メロディアスなヴォーカル、ギターワークも加えた作風。エクストリームに寄りすぎないバランスが絶妙"
という感じです。