- 前作から叙情性とドラマ性が大きく向上
- 感情表現豊かなヴォーカルとギターワーク
- 獰猛なアグレッシヴさはまだまだ充分
前回に引き続きBRING ME THE HORIZONのアルバム感想を。2008年に発表され、彼らがの知名度が日本でも広がるきっかけになった2ndフルアルバムです。
下腹部から内臓を抉り出している女性がインパクトを放っているジャケですが、「裸になって、自分の内面をすべて曝け出す」というコンセプトになっているとのこと。ゴアグラインドのような、徹底して悪趣味なグログロジャケではなく、どこかアーティスティックな雰囲気を携えている感じですね。
プロデューサーにフレドリック・ノルドストロームを起用した結果か、1stに比べると音質にも向上が見られて、より各楽器の音が聴き取りやすくなった印象があります。1stのザラっとひしゃげたような音作りも嫌いではありませんでしたが。
徹底して凶悪、かつ青臭さ全開で畳み掛けるデスコアだった前作と比べると、本作はエクストリームすぎる要素を少々削減。デスコアというよりもメタルコアに近い音になっていて、メロディアスな旋律を取り入れる箇所も多くなり、より横軸を広げたような作風に。
オリヴァーのヴォーカルも、噛みつきシャウトもしくはグロウルの二択から、地声混じりの咆哮を多用するようになったことで、より感情表現も広がりましたね。良くも悪くも勢い一辺倒だった前作から、音楽的成長がしっかりと見て取れます。
しかし、そうはいってもまだまだ当時平均年齢20歳過ぎくらいのバンドですからね。まだまだ若手バンドにふさわしい、勢い任せに突っ走る獰猛さはしっかりと残っています。M1「The Comedown」から、ワイルドなギターリフでアグレッシヴに進み、エクストリームメタルの姿勢を崩さないことを証明する。
そのままの流れで続くM2「Chelsea Smile」は、デスコア〜メタルコアの流れを組むブレイクダウンを持ちつつ、キャッチーさを持ち合わせたリフの畳み掛け、後半にメロディックとすら言えるほどの旋律をブチ込む展開と、本作の路線を象徴するような名曲です。NEX_FESTで特大のピットが生まれ、ハードコアモッシュが炸裂した景色を思い出しますな...
どこか透明感漂うシンセに焦燥感のある切ないリフ、感情的になったヴォーカルで魅せるM3「It Was Written In Blood」、ほんのり叙情性を纏いつつも、吹っ切れたような爆走で飛ばすM6「Sleep With One Eye Open」、スピードは少し抑えつつも、より正当的なメロディックメタルギターフレーズが目立ち、クリーンヴォーカルによるドラマ性も増したM8「The Sadness Will Never End」など、ひたすらにエクストリームな曲にはない、音楽的魅力が備わり出しているのが嬉しいところです。
M10「Suicide Season」のような8分以上の大作を生み出すチャレンジ精神もありますが、やはり大作構築力が優れている訳ではないのか、単純に長尺に向かないジャンルだからか、少々ダレを覚えてしまうか。
若手らしい愚直な勢いはそのままに、メロディック&ドラマチックな要素も取り入れることに成功したメタルコアアルバムと言えますね。デスコアとしての凶暴性は落ち着いたとはいえ、それ以外の面である音質、演奏、ヴォーカル、曲の良さは全てにおいてスケールアップしています。彼らの初期の名盤と言えば、やっぱこれになるのかな?
個人的に本作は
"エクストリームメタルとしてのアグレッションは充分に、音楽的なスケール、ドラマ性を引き上げた出世作。この時点でデスコアらしさは控えめに"
という感じです。