- スペイン産スラッシャーのセルフタイトル作
- スラッシュらしいアグレッシヴかつ切れ味鋭い音の嵐
- メロディアスさよりエクストリームメタルらしさを重視
前作『Cabaret De La Guillotine』が予想以上の好盤だった、情熱の国スペイン出身のスラッシュメタルバンド・ANGELUS APATRIDAの7thフルアルバム。
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クランチっぽいギターリフを主軸に暴走突進、しかしアグレッシヴなだけでなく非常にメロディアスな歌も部分部分に取り入れるなどして、クオリティーの高いスラッシュ作品を生み出した彼らですが、本作は結成20周年を経て作り出したセルフタイトル作。気合の入った作品であることがうかがい知れるというもの。
そして実際に、本作はかなり血の気の多い楽曲が取りそろえられていて、スラッシャー歓喜の爆走っぷり、重く、速く刻まれる容赦なきギターリフの波状攻撃が楽しめる痛快なアルバム。テンポを落としたパートでも、そのヘヴィさとリズミカルさを両立したリフのカッコよさで満足させられるのも、前作に引き続く美点です。
コロナによるロックダウンで、不満を募らせた状態で制作されたということもあるのか、前作に比べてさらに攻撃的になった印象。ハードコア由来のシンガロングも荒々しい。バキバキに歪みをかけたベースの破壊音も目立ち、よりエクストリームな方面へ舵を切っています。
その分、前作ほどにはメロディックな要素が目立っておらず、その点は少し残念ではあるかも。攻撃性に比重を置いたともとれますが、それは前作も十分にありましたしね。とはいえ楽曲自体の完成度の高さは本作も折り紙付き。
初っ端から獰猛なヴォーカルと共に激音リフで爆走しつつ、ヘヴィなリズム落ちパートも豊富に取り入れたM1「Indoctrinate」、有無を言わさぬ疾走感、小刻みなヘヴィリフ、ひしゃげた歪みのベース、手数の多い超速ドラム、そしてライヴ感あるシンガロングと、要素が揃いに揃ったM7「We Stand Alone」は、本作を象徴する名曲と言えます。理屈抜きにカッコいい必殺の曲です。
他にもスピーディーに駆け抜けるスラッシュアンセムから、グルーヴィーなリフでヘドバンとモッシュを誘発するアップテンポナンバーまで、一切の隙を見せない展開を聴かせますが、中でも白眉なのがラストを飾るM9「Empire Of Shame」〜M10「Into The Well」の二連発。
二曲ともキレッキレのスラッシーなリフで疾駆するスラッシュメタルでありながら、ほのかにキャッチーなメロディーをまとわせる手腕が非常にクール!前者はズシリと重いリフで展開するパートもあり、中盤のツインギターの速弾きが迫力満点。後者もまたツインギターソロが大きな聴きどころですが、こちらはテクニックに頼らないメロディアスなリードフレーズ。これまた劇的でカッコいい!
あからさまなメロディアスさは多少控えめになったものの、20年のキャリアを経て作られたセルフタイトルに恥じない強力作。王道かつ高品質なスラッシュメタルを、本作でもまた提示してくれました。こいつら頼もしいです。
個人的に本作は
"超アグレッシヴ&微メロディアス、骨太でスラッシーなリフ主体のスラッシュメタル一辺倒"
という感じです。
ANGELUS APATRIDA - Indoctrinate (OFFICIAL VIDEO)