イギリス出身のベテランスラッシュメタルバンドの7枚目のフルアルバム。前作からは実に7年ぶりだそうです。
前作から看板ヴォーカリストであったサイ・キーラーが脱退し、新たにデイヴィット・ガーネットという人物がヴォーカルを担当しています。
このバンド、正直「名前は知ってたけど、音源は全然聴いてきていないバンド」でしかなったので、過去にどんな音を出してきたのかまったく無知なのですが、非常にアグレッシヴでカッコいいスラッシュをプレイしているという本作の評判を聞いたので手を出してみました。
そして聴いてみてその高い評判も納得。獰猛で野蛮、暴力的な疾走感に満ちた、実に過激でヘヴィなスラッシュナンバーばかり。このバンドに限らずですけど、ベテランのスラッシュメタルバンドって、年を食ってからもかなり元気なアルバムを出してくれますよね。OVERKILLやKREATOR、TESTAMENTにOUTRAGEなどなど...
本作もその例に漏れず、スラッシュメタルというジャンルに求められる速さはもちろんのことながら、新加入のデイヴィットのデスヴォイス未満のがなり声ヴォーカルが非常に野蛮で危険な雰囲気を漂わせており、サウンドの極悪さをより強めることに貢献しているのがポイント。
そしてヴォーカルに負けず劣らず演奏陣も非常にアグレッシヴ。ギターリフはそこまで鋭利なザクザクとした音を強調しているわけではないですが、かなりヘヴィにズンズンと腹の底に響いてくる轟音を奏でる。時折見せる高速のギターソロはさらに勢いに拍車をかけてくれる。
そしてその音圧をさらに増強させるのがベースとドラムのリズム隊。ベースはバキンバキンに歪んでいて低音部をガッツリと補強しているし、ドラムはプレイ自体の迫力はもちろん、スネアの音がズッシリと重たくて破壊力バツグン。眼前に迫ってくるようなバスドラ連打も相まって、脳天をブン殴られるような衝撃です。
このスラッシュメタルらしい疾走感を保ちつつ、決して軽めのサウンドにならない強靭さ、極悪さは以前このブログでも取り上げたANGELUS APATRIDAに通じるところがありますね。あちらはベイエリアクランチらしいザクザク感が強いですが、リズム隊が目立つヘヴィさはこちらに軍配が上がりそう。
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初っ端の攻撃的なリフから、ハードコアライクなシンガロングまで勢いに満ちたM2「Strike Fast Strike Hard」、"No gods! No Masters!"の怒号に超スリリングな速弾きギターソロがカッコいいM4「Generation Antichrist」、今までの疾走感の70~80%くらいの勢いでヘヴィに進むも、途中のギターソロで一気に爆走パートへもつれ込む瞬間でテンションがブチ上がるM5「All Seeing Eye」など、どの曲でも30年以上もやってるベテランとは思えぬほどの暴れっぷりが堪能できます。単純に聴いてて非常に気持ちよくてスカッとします。
あと音楽的なことではないですが、歌詞の内容がハードコア直系の反体制の怒りや警醒に満ちているのもカッコいいです。M2の
俺が死ぬその日まで 肌の色のために戦ってやる
俺が死ぬその日まで 仲間のために戦ってやる
俺が死ぬその日まで 他の連中と戦ってやる
俺が死ぬその日まで ロクでなしどもと戦ってやる"
このフレーズなんて今の世界情勢にピッタリです。
今年はTESTAMENTやOUTRAGEが素晴らしいアルバムを出してくれていますが、それに続く名作と言えるはず。血の気の多い攻撃的なメタルが欲しいなら黙ってこいつを聴きましょう。
個人的に本作は
"怒りのエネルギーと野蛮な攻撃性があふれ出た、重厚スラッシュメタルの快作"
という感じです。
ONSLAUGHT - Religiousuicide (2020) // Official Lyric Video // AFM Records
ONSLAUGHT - A Perfect Day To Die (2019) // Official Music Video // AFM Records