- 正統的なヘヴィメタル要素を増強
- 前作より獰猛な勢いは少し控え目、歌と演奏の充実度は高い
- スラッシャーも正統派メタルヘッズも心して聴くべき名盤!
スラッシュメタルという枠を超え、もはやJ-METALシーンの押しも押されもせぬ重鎮のポジションについて久しいOUTRAGE。前作『Raging Out』より約3年ぶりとなるニューアルバムです。
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前作はベテランとは思えぬほどの衝動と暴力性に満ちた快作でしたが、本作はというと全体的にそこまでアグレッシヴ一辺倒というほどではない印象。依然として勢いはあるし、キレた楽曲は収録されているものの、より正統的なHR/HMに近づいたというか、過剰なエクストリームメタル要素は抑えられている感じですね。
これでメロディーや演奏が面白くなければ、下手を打てば前作の劣化版扱いされそうなところですが......とんでもない。こりゃあかなりの完成度を誇る作品に仕上がっています。
これまで以上に歌やギターのメロディーが豊かになっているのが何よりも大きなポイント。OUTRAGEというバンドから想起される音像からは一切ブレず、かつ橋本さんのヴォーカルもよりメロディーをなぞるものに変化。キャッチーさとアグレッションのバランスが非常に良く、聴いたときの爽快感がハンパではない。
メンバー自身「前作は若返りを図ろうとしてたけど、今回は自然体で録った」「前作は若い人もできるかもしれないけど、今作はジジイにしかできない」と語っており、アグレッシヴでクレイジーではあるけれど、制作にあたり過剰な気負いはなかった様子。
スラッシュメタルというにはあまりザクザク感がなく、どっしりとしたヘヴィさ重視の歪みをかけたギターに、ドラマチックなメロディーを塗した楽曲群は、ただひたすら暴れた倒すだけでない、ヘヴィメタルとしての普遍的なカッコよさを内包しています。曲によっては完全にスラッシュメタルという呼び名が相応しくなさそうなものもありますしね。
これは血の気の多いスラッシュから、モダンなスローチューン、さらにはNWOBHMのリスペクト企画までやってきた、様々なメタルの経験を経た今だからこそ作り上げられたのでしょう。
何といっても冒頭三曲のインパクト!これに尽きます。ヨーロピアンテイストの正統派メタルのマナーに則ったイントロからゾクゾク高揚させ、堂々たるメロディアスな歌唱も映えるM1「Edge Of A Blade」からして早速ブチ上がる。
そして本作最高にメロディアスなヴォーカルメロディーと共に疾走し、共に歌わずにはいられないサビで天を仰ぐM2「Blood And Scars」で最高潮へ。
そこからさらに初期のサウンドを彷彿とさせる熾烈なM3「Hot Rod Immunity」と続くのなら、こりゃリスナーを殺しにかかってきているとしか…
もはやメロディックメタルと呼んで差し支えないアップテンポチューンから、前作の流れを汲んだOUTRAGEらしさ全開の武骨な疾走曲、ロックンロールのドライブ感あふれるリフに非常にキャッチーな歌メロが載るノリの良い曲と、程よく幅を広げた楽曲は飽きも来ない。こりゃ曲単体でもアルバム全体でもガッツリと聴かせてくれる名作ですよ。
スラッシュのようなエクストリームなバンドのアルバムは、攻撃性に焦点が絞れる分、ともすれば一本調子になりがちなのですが、本作はそれとは無縁。そういった意味でも、本作はスラッシュメタルバンド・OUTRAGEというより、HR/HMバンド・OUTRAGEの姿があるといえます。
個人的に本作は
"攻撃性も多彩さもメロディアスさも、絶妙なバランスで配合したOUTRAGE流正統派HR/HMの名盤"
という感じです。