ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

KREATOR 『Hate Über Alles』

  • 衝撃的メンバーチェンジから初のフルアルバム
  • 従来作よりテンポを落としメロウさに磨きをかけた
  • 疾走曲のクオリティーは言うことなし!最強!

 

ついに出ました、ドイツが誇るスラッシュメタルの帝王・KREATORの5年ぶりの最新作。

 

スラッシュメタルの帝王はSLAYERじゃないか、と言われるかもしれませんが、個人的にはKREATORはそんなSLAYERとも並び称される帝王のポジションにいると思っています。

 

凄まじい快作であった前作『Gods Of Violence』から、ベーシストのクリスチャン・ギースラーが脱退し、後任としてDragonForceのフレデリク・ルクレークが加入、それもDragonForceの新作が発表される直前という、衝撃的な交代劇も記憶に新しいところ。

 

日本でメロディックメタルのファンをやっていたら、どうしても「フレデリク = DragonForceのベース」というイメージが強くて、彼がKREATORのMVに映っているのはどうも違和感が拭えないな〜...。

 

そんなメンバー交代を挟んでの本作ですが、方向性としては前作以前とほとんど変化はなし。KREATORらしい凶悪ながらメロディアス、ドラマチック・スラッシュメタルには寸分の狂いもありません。

 

ただ本作中、爆速スピードで突っ走る疾走チューンはさほど多くなく(前作も疾走しっぱなしのアルバムではなかったけど)、中盤から後半にかけてはややテンポを落として、メロディアスなアプローチを強めた曲がメインを張る。

 

基本的に僕は「スラッシュメタルは速くてナンボ」なクチなので(だいたいみんなそうでしょ?)、もう少しチョッパヤな曲を置いても良かったかな。とはいえ、スラッシュの生命線であるスピードを殺したところで、まったく邪悪なオーラが衰えないミレ・ペトロッツァのヴォーカル、サミ・ウリ=シルニヨの叙情性満載のリードギターにより、決して腑抜けた捨て曲なんか生み出さない手腕はさすが。

 

邪悪な疾走ビートと、堂々たるメロディックなミドルテンポを交錯させたM7「Conquer And Destroy」、細かく刻まれるリフの切れ味に、どこか神秘的な歌メロが魅力のM8「Midnight Sun」は、女性ヴォーカルが歌い上げる瞬間もあり、彼らのメロディアスな側面において新たな魅力を生み出しています。特に前者のサビなんかはハイライトたりえる場面です。

 

リフとリードのコンビネーションが絶妙で、ザクザクのリフに溺れながらメロディーを堪能できるM5「Strongest Of The Strong」、ズンズンと力強く叩きつけるドラムに、緊迫感を増して唸りを上げるギターが気持ちよく、後半で聴けるドラマチックな哀愁のリードギターが感動的なM10「Pride Comes Before The Fall」など、ミドル曲はどれこもこれも粒ぞろいで飽きさせない。

 

不満をしいて挙げるとするなら、クライマックスの楽曲であるM11「Dying Planet」が、前作の「Death Becomes My Light」ほどの美しさを演出する曲ではなかったので、聴き終えたあとの印象の良さは前作に分があるかな?というところか。

 

そして疾走曲については、もはや何も言うまい。あまりの高揚感に打ち震えるばかりですよ。M2「Hate Über Alles」は、現在のKREATORというバンドに求めるものすべてが詰め込まれた、本作を代表するキラーチューン。そこからノンストップで続くM3「Killer Of Jesus」も負けず劣らずのドラマチック・スラッシュで最高。リフのカッコよさがエゲツないレベルまで磨かれています。

 

もはやスラッシュメタルというフィールドにおいて、彼らほどの境地に達しているバンドは(少なくとも2022年現在では)他にいないんじゃないでしょうか。邪悪さも攻撃性も保ったまま、ここまでメロディアスな音楽として聴かせるバランス感覚、もはやシーン随一でしょう。

 

5年の期間が空いて、メンバーが交代したとしても、KREATORという存在がブレることはない。そんなことを確信させてくれる1枚。名盤です。

 

 

個人的に本作は

"全体的な疾走感はやや減退するも、スラッシュらしい邪悪な攻撃性を落とさず、極限までメロディーに磨きをかけたドラマチック・スラッシュメタル"

という感じです。

 


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