- 前作よりDYNAZTY節を強く押し出すことに成功
- 待ってましたと言わんばかりのキラーチューン有り
- アルバム全体としては少々インパクト不足かも
北欧メタル大国スウェーデン出身のメロディックメタルバンド・DYNAZTYの2年ぶりのフルアルバム。ヴォーカルであるニルス・モーリンがAMARANTHEにヴォーカルで参加しているにも関わらず、なかなか早いペースで新作をリリースしてくれました。
このバンドは非常にレベルの高い楽曲を量産できる実力派バンドだと思っていますが、正直前作『Firesign』はあまり褒められた出来とは言い難かっただけに、本作の期待も実力に対してあまり高くは持っていなかったです。
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一抹の不安を抱えながら聴いてみた本作、結論としては、前作よりも『Renatus』『Titanic Mass』にあった彼ららしさがグッと強く感じられる。
基本的な楽曲の方向性は従来作と全くと言っていいほど同じですね。ニルスの熱い歌唱を中心に据えつつ、ギターソロを交えた適度にヘヴィでアグレッシヴな演奏で形作るメロディックメタル。正統派メタルともメロパワともメロハーとも言い切れない絶妙なバランス(意地悪な言い方をすれば中途半端ともとれるかも)は、DYNAZTY節と言えるでしょう。
何より歌メロが強化されているのが一番うれしいポイントです。M2「Paradise Of The Architect」はかつての名曲「Starlight」を彷彿させる極上のメロディーが乱舞するキラーチューン。焼き直しっぽさが無いわけではないものの、コレコレ!こういう曲こそがDYNAZTY!!
演奏は依然パワフルながら、切ない哀愁が一際光るスローバラードのM5「Hologram」、跳ねるようなリズムで歌われる、妙にキャッチーな歌唱が印象強いM6「Heartless Madness」、M2と同じく、ニルスの歌唱が熱く響き、大きなスケールを描くサビが素晴らしいM10「Apex」など、充分なフックや勢いに満ちた曲はさすがのカッコよさ。こういったやりすぎないキャッチーさと攻撃性の織り交ぜ具合こそこのバンドの真骨頂ですね。
ただいまいちパッとしないというか、印象に残りにくい楽曲がチラホラ見受けられるのも事実で、アルバム全体としてはちょっとばかし地味な印象が拭えなかった。タイトルトラックであり、ボートラを除けば本作のラストであるM12「The Dark Delight」が、そんなに名曲感あるものでなかったのも地味に感じた一因かも。
せっかくAMARANTHEなんてドメジャー&ドキャッチーなバンドにフロントマンが加入したのだから、そこから派手な要素と耳に馴染むメロディーをちょっと盗んできても良かったんじゃないかな〜と。
とはいえこのバンドの場合、ポップになりすぎない適度な硬派さが魅力につながっている(と思っている)から、あまりに売れ線じみたポップさに歩み寄るのは止めといたほうがいいのかもしれないけど。
個人的に本作は
"前作かららしさをしっかりと取り戻したナイスな作風。ただ名作と呼ぶにはあともうひと押し欲しかった"
という感じです。
DYNAZTY - Presence Of Mind (2020) // Official Music Video // AFM Records
DYNAZTY - Heartless Madness (2020) // Official Lyric Video // AFM Records