- 過去作と何も変わらないキャッチーな正統派
- アルバム全体通して一本調子で起伏は少ない
- 安定感とマンネリ感の狭間
正体不明の覆面ヘヴィメタルバンド(The Metal Archivesのバンドページでは、普通に"See also"で他の活動が見られますが/笑)WARKINGSの、前作『Revenge』よりわずか1年のスパンで届けられたニューアルバム。
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新型コロナの蔓延でライヴ活動が軒並み白紙になった状況を利用し、すぐに音源制作に取り掛かったのが功を奏して、こうも早いペースでのリリースが実現したのだとか。単に現状を憂うだけでない姿勢が素晴らしい。
これまでのアルバムでは、その風貌やMVの世界観に合わせた、エピカルな要素を多分に盛り込んだ正統派ヘヴィメタルをプレイしてきましたが、バンドコンセプトが完全に固まっているが故に、本作においても方向性は全くブレず。叙情的かつパワフルなサウンドでグイグイ引っ張り、充分に攻撃的なんだけど非常にキャッチーなパワーメタルのオンパレードで、これまでの作品を気に入ってきた人や、正統派メタルを好む層には問題なく受け入れられるはず。
メロパワ的疾走感を持った曲は全くありませんが、重戦車のようにゴリゴリと叩きつけられるヘヴィリフ(もちろんモダンにはならない)がミドル〜アップテンポで楽曲をリード、抜けのいいドラムの打音もあり、聴いた際の爽快感や気持ちよさは、決して疾走メロパワに劣らない。むしろそんじょそこらのメロスピ/メロパワより遥かに勢いづいていると言ってもいい。
ヴォーカルのザ・トリビューンの暑苦しくならない声質のおかげで、これだけ濃ゆいパワーメタルであるのに熱量が過剰にならないのも聴きやすさに拍車をかけ、40分ほどの収録時間も合わせて、クドくならないバランス感覚をしっかりと発揮しています。
......と、ここまで書いてきて気づきましたが、前作の感想文とほとんど同じこと書いてるな俺(笑) "「前作とほぼ同じような感じだから、前作聴いて満足した人は今回も聴いてみてね!」で感想文を終わらせちゃってもいい"と書いてますけど、本作に関しても全く同じことが言えるな...
まあそれだけバンドが目指す音楽的方向性が確立されているということですし、こういった保守本流のパワーメタルを好む人は、路線変更を嫌う傾向が強いと思うので、これはこれで良いのかも。
ただその新鮮味の無さはやっぱりどうしても「マンネリ感」とは無縁になれないですし、本作はどの曲も非常に良質ながら、際立ったキラーチューン、およびアルバム全体における明確なハイライトが無いため、そこで物足りなさというか、刺激の足りなさを感じてしまうのがやや痛いところか。
安定感が抜群な分、アルバム中盤に箸休めのインストを置き、核となるキラーチューンをガツンとかまし、ラストはクライマックスにふさわしいドラマチックな一曲で締め、みたいなアルバム構成の面白みが無いという弊害も生まれてしまっているように感じます。ラストのM10「Where Dreams Die」とか、安定して良い曲ではあるけど、アルバムのラストとしてはあまりに普通すぎる。
オープニングを力強いリフで飾り、シンガロング必至のサビと中盤のヘヴィパートが勇ましいM1「We Are The Fire」、民族楽器を用いて古代ギリシャの世界観を色濃く描き、これまた男臭さ全開シンガロングで煽るM2「Sparta - Part Ⅱ」、より叙情性を増した雄大なサビの歌唱で魅せるM7「Ave Roma」などをはじめ、楽曲単体のクオリティーはどれも文句なしなんですけどね。
そんなわけで「安心安定の高品質パワーメタルを聴かせてくれてさすがだぜ!このバンドは裏切らないな!」という気持ちと、「流石にマンネリ気味かもな〜。せめてコレだ!っていう必殺の曲で起伏を生んでくれたらな...」という気持ちがちょうど半々くらいです。
とはいえ何度も言うように、これぞ正統派ヘヴィメタルという方向性で、極めて高く安定したクオリティーを擁していることは間違いないため、正統派好きメタルヘッズは聴く価値大ですよ。
個人的に本作は
"過去二作と何ら変わらない高品質なエピック・パワーメタル。キラーチューンやハイライトの無さが気になるも安定感はさすが"
という感じです。