- サイバネティック・ヘヴィメタル(でも曲自体は割と普通)
- 手堅い安定感が嬉しくもちょっと物足りない
- メロパワ的疾走感はほとんどナシ
1996年結成という何気に長めのキャリアを誇り、Evoken Fest 2018で準トリを務めた(ベーシストの怪我によりベースレスという不完全な状態ではありましたが)、ドイツ出身のパワーメタルバンドの最新作。
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4年前に発表された前作『Gunmen』は、ジャケットの雰囲気や、ライヴでのステージセットなどから西部劇風の世界観を感じ取れたわけですが、本作においてバンドイメージを一新。アンドロイドに改造されたIRON MAIDENのエディのようなジャケットに、SFチックな出で立ちになったアー写と、だいぶ大きめな方向性の変化が見て取れます。前作が『カスカベボーイズ』なら、さしずめ本作は『仮面ライダーゼロワン』...?ほとんど見たこと無いけど。
実際に楽曲を聴いてみても、ところどころにSF的な電子音が使用されていて、どことなくGLORYHAMMERっぽいなと思う瞬間がありました。
しかし電子音といっても、トランスやダンスミュージックのようなものではなく、あくまでアルバムのコンセプトを表現するためのSEとして、一部の曲のみで使用しているというだけで、決して多用されているわけではありません。「言われてみればなんとなく」の域は出ず、楽曲の骨組み自体は非常にオーソドックスな正統派パワーメタル。
骨太なギターリフに、力強くもマイルドな味わいも感じさせるヴォーカルが織りなすメタルサウンドは安定感抜群で、正統派好きのリスナーの欲求にしっかりと応えてくれるもの。
ただその安定感が全編に渡ってありすぎるのはちょっと不満な点かも。ほぼミドル〜アップテンポに終始し、いわゆるツービートの疾走感はほとんど無く、ギターソロもグッと耳を引くような瞬間は多くない(まったく無いとは言いませんが) 安心して聴けるのは嬉しいのですが、ひと際エキサイトさせるキラーも欲しかった。
後半になってアグレッシヴな疾走を見せるM2「In The Dawn Of The AI」、テンポ良く繰り出されるフックあるサビメロが魅力のM5「Interstellar」、クワイアを盛り込み、バスドラ連打と共に劇的な盛り上がりを演出するM9「Hollow」あたりが、抜きん出ているというほどではないけど、特に光っている楽曲だと思います。
ちょっと手堅すぎるというか、強烈なキラーチューンを持ってきてほしい気分になってしまう作風で、やや地味な印象は拭えないですね。ただ、充分に良質な楽曲で構成されていて、これといった隙なしのクオリティーを提示してくれているアルバムであることは間違いなく、その点は心強いです。
個人的に本作は
"ほんのりサイバー感を意識した正統的なヘヴィメタル。良くも悪くも安定・無難"
という感じです。