2024年も残すところあとわずか、最終盤のこの時期にメタルの神とのご対面を果たしました。
Judas Priestの最新作『Invincible Shield』リリースに伴うジャパンツアー、追加公演であるKT Zepp Yokohamaのライヴです。ド平日極まりない日程ですが、休日出勤の振休をこの日にあてがいました。
今までJudas Priestのライヴは2015年の日本武道館、2018年の武蔵の森総合スポーツプラザに続いて3回目ですね。Download Festivalのトリの時は、SLAYERだけ観て帰っちゃったんですよ。
1日OFFということなので、昼近くまで寝た後横浜へ行って、タワーレコードやディスクユニオンをめぐり、横浜中華街で軽く腹ごしらえをした後に、鋼鉄神を拝みにいく。なんという贅沢な休日ではありませんか。
開演30分ほど前くらいに入場。最前ブロックはVIPチケットを買った人のみが入れるエリアとなっていたので、その一つ後ろのブロックへと入る。VIPではなくともZeppのこの位置に陣取れれば十分といえますね。メタルゴッドをこんな近くで観られるとはなんて貴重な機会だ。
シンフォニックな登場SEの後に、新作のオープニングトラック「Panic Attack」のイントロが流れる。先にロブ・ハルフォード以外のメンバーが登場して演奏を開始したあと、満を持してド派手なギラギラジャケットを羽織ったメタルゴッドの登場。
武道館で観たときのように杖をついてヨロヨロと歩いてくるのではなく(動き自体はゆっくりしてたけどね)、堂々とした立ち振る舞いをするロブ。ヴォーカルについてもカミソリのように鋭い"Panick attack!"の高音フレーズを連呼していて、まだまだメタルゴッド健在を示すかのようでした。ただ、さすがに御年73歳という高齢故、武蔵の森で観たときほどの切れ味は望めなかったかな。こればかりはもうしょうがないというか、むしろおじいちゃんレベルの年齢になって、まだこれだけ歌えることを称えるべきでしょうね。
「Priest is back!」とオーディエンスに高らかに叫ぶロブの姿を見ると、やはりオーラというか、カリスマ性を感じましたね。若かりし頃の動きはもうできないところまで来ているはずですが、やはりその御姿・存在感には圧倒されるものがありました。こないだ観たIRON MAIDENのブルース・ディッキンソンと比較すると、溌剌としたエナジーはまったくと言っていいほど無いはずですが、それでもなお「メタル界のカリスマ」たる所以を感じさせるというか。これだけ近い位置で観ると、彼の凄みをより一層強く味わえる。
楽器陣については、やはりリッチー・フォークナーが一番目立っていましたね。ステージ上の動きもアグレッシヴというほどではありませんが、ギターヒーローは俺だ!と言わんばかりに、前に出張ってきては流麗なソロを披露する。彼の存在で老人バンド呼ばわりされるのを防いでいるかのよう。イアン・ヒルはさすがにほとんど自分の持ち場を離れなかったので...
パーキンソン病によりライヴ活動はリタイアしているグレン・ティプトンの穴を埋めるアンディ・スニープは、正式メンバーではないという立ち位置のためか、はたまた僕が下手側にいただけだからか、さほど目立った動きは見せておらず、しっかりと自分の仕事をこなすようなスタンス。あからさまに目立つギターソロ以外では、あまり前に出てくることはありませんでした。
ライヴの後半に演奏されるイメージが強かった「You've Got Another Thing Comin'」が、2曲目という超序盤に演奏された事には少々以外に思いつつ、クラシックとなった楽曲を連発。新作のツアーながら新作の曲があまり演奏されない(わずか3曲のみ)のは残念ではあるものの、過去の名曲・佳曲がたくさん聴けることに文句はない。特に「Riding On The Wind」は大好きな楽曲だけに、ヘッドバンギングを抑えられませんでしたね! この非常にキャッチーに流れゆく歌メロはかなりツボなんですよ。
Judas Priestというバンドの格式高さがわかりやすく提示された初期の楽曲「Sinner」( この曲のロブのヴォーカルは少々崩れ気味...)、そこから相反するかのようにポップな「Turbo Lover」という、やたら極端なコントラストの畳みかけを終えた後、ステージ左端にロブがちょこんと座ってMCに入る。
1stアルバムの『Rocka Rolla』から50年もの年月が経ったことに触れたあと、これまでのバンドの歴史を紡いでいくかのように、リリースしてきたフルアルバムのタイトルを1枚ずつ挙げていく......のですが、ヘヴィメタルが低調だった時代の『Jugulator』と『Demolition』には一切触れなかった(笑) これは自分が歌っていないからなのか、黒歴史にしているのか、どちらなんでしょう。
最後に『Invincible Shield』の名前を叫んだあと、そのタイトルトラックがスタート。 この曲はヒリヒリとした緊張感に満ちつつ、ブリティッシュセンスに彩られたメロウさも持ち合わせた楽曲なだけに、僕の興奮も跳ね上がるというもの。音源で聴いたときも思いましたが、アウトロのツインギターが絡むフレーズが非常にカッコいいんですよね。ステージ中央で弾き倒すリッチーとアンディに見入ってしまいました。
ただし、それ以上の興奮が待ち構えているのがクライマックス。これまで淡々と堅実にプレイしてきたドラムのスコット・トラヴィスが「3 more songs!」と告げた後に、"あのドラムイントロ"を奏で始める。ここにきて次の楽曲を確信したオーディエンス(僕含む)から大きな歓声が。
Judas Priestをメタルゴッドたらしめる超名曲「Painkiller」。もちろん今のロブの歌唱だと、音源ほどの鬼気迫る感を完璧に演出するのは難しいのですが、まくしたてるようにハイトーンを振り絞る姿には、まだまだ緊迫感と説得力がビリビリと伝わってきました。両手でマイクを握りしめ、グッと屈みながら人間離れした唯一無二の重金属ヴォイスを張り上げ続けているこの姿、これが観たくて僕はここに来たと言っても過言ではない。いや~やっぱこの曲の迫力は凄いわ。改めてわかった。
そしてアンコールとして少し時間を置いたあとに、ヘリオンが舞い降りる旋律が流れるとさらにフロアの熱気は昂る。思えば武道館で初めてJudas Priestを観たときも、「Painkiller」と「The Hellion」のイントロが流れたときの、全身がゾワっと震えたような感覚を味わったよな...と、過去の体験に思いをはせました。あの時と同じ感覚をまた味わえましたよ。もちろんそのあとは「Electric Eye」が登場。ステージ上部につるされていたバンドのマークを模したオブジェ(ライト付き)がゆっくりと降りてくるギミックも含め、ここが最大のハイライトであることが場内全体に伝わりました。
そしてもちろんラストは、ハーレーにまたがったロブと共にシンガロングする「Hell Bent For Leather」に、ポップなムードが会場を包む「Living After Midnight」で大団円を飾る。正直なところ、「Painkiller」と「Electric Eye」がインパクト抜群の名曲なだけに、ラスト2曲に蛇足感が全く無いと言ったらウソになっちゃうんですが、やっぱりロブのハーレー姿は見ておかないとね。「Living After Midnight」のシンガロングも大きく木霊し、メタルゴッド降臨の場を豪華に締めくくりました。
こうしてライヴ終了。余韻に浸っていると、僕のすぐ左隣にいた屈強なお兄さんが、僕の『Angel Of Retribution』のTシャツを見ながら「20年くらい前のこのアルバムのツアー行ったんですよ!」と声をかけられて、ちょっとだけお話。20年前っつったら俺小学生だよ。
ちなみにそのお兄さんは『Jugulator』のジャケットがデカデカとプリントされたロンTを着ており、「あのアルバム結構僕好きなんですけどね~。バンドの中では完全に黒歴史にしちゃってるんですかね~」と豪快に笑いながら語っていました。やはり世界は広い、迷盤とされる作品でも愛好している人は少なからずいるのだ。
しかしこの2024年、IRON MAIDENとJudas Priestという、ヘヴィメタルを代表する重鎮2組を観ることができるとは、僕の音楽人生においても結構大きな意味を持つ年になったんじゃないでしょうか。
IRON MAIDENは先日ドラムのニコ・マクブレインがツアーから引退を決め、Judas Priestはもうグレン・ティプトンの姿がステージから見えない(バックのスクリーンにギターを弾く彼の姿は映されていました。K・K...)という状態。バンドメンバーの年齢を考えれば、今後また彼らのライヴを日本で観られるのかどうかは難しいところもあり、今のうちにしっかり目に焼き付けることができて良かったなと思います。