今年に新作の発表も控えている(先日公開された新曲、メッチャ良かったですよね)、メタルヘッズなら誰もが知る鋼鉄神・Judas Priestの8thフルアルバム。1982年発売ですから、もう40年以上前なんですねコレ。
ここ最近のこのブログは、パンク系統のCD感想が多かったりしたので、ヘヴィメタルの成分をちょっと濃くせねばならんと思いましてね。正統派メタルの名盤と称される本作を、久方ぶりにCDラックから取り出して聴き返しております。
前作『Point Of Entry』はアメリカでのブレイクを目指して作られた一作だったものの、従来のファンからは不評だったそう。Wikipediaの記載ではアメリカでもそこまで商業的成果は上げられず(失敗と言うほどでもないようですが)、SLAYERのケリー・キングは、本作の出来に憤慨し、レコードを庭で焼き払ったなんてエピソードもありました。やることが豪快すぎる。
その反省が活かされているのか、本作に収録された音は、Judas Priestという名に求められている"ブリティッシュ・ヘヴィメタル"という姿を創造することに重きが置かれているように感じます。
まず本作を語る上で欠かせないのは、オープニングとなるM1「Hellion」、そこからシームレスで繋がるM2「Electric Eye」の流れでしょうね。太陽の守護神・ヘリオンが降り立つ様を描くドラマチックなイントロは、これから始まる音世界の期待感を膨れ上がらせるのに、120%機能している導入です。
メタリックなリフと、ロブ・ハルフォードの厳かなヴォーカルにて展開されるM2で堂々たる正統派メタルを繰り出したあと、そこからさらにギアが上がる。怒涛のドラムから切れ味鋭いリフを叩きつけ、タイトル通り風に乗っているかのような爽快感を醸し出すM3「Riding On The Wind」へと移行する流れもお見事。この曲もまた、ロブのハイトーンと軽快なテンポが組み合わさっていてカッコいいんですよ。軽快とはいえ、しっかりメタルとしての重厚感あるギターが荒ぶっているのも良い!
このオープニングのインパクトの強さが、どうしてもアルバム全体の印象を作り上げてしまい、その他の曲のお株を奪ってしまっている感はありますが、これら以外にも妙にクセになるギターフレーズとヴォーカルが印象深いM4「Bloodstone」、ザクザクとしたリフが反復される様が一見地味な印象ながら、絶妙なノリの良さに引き込まれるM8「You're Got Another Thing Comin'」のような良曲が目立ちます。
そして何と言っても、タイトルトラックであるM7「Screaming For Vengeance」ですよ!この曲が持つダイナミズム、メロディアスさ、鬼気迫るヴォーカルパフォーマンスは、これぞブリティッシュ・ヘヴィメタルの正しきカッコよさ!
ド頭からロブの魂が乗る渾身のハイトーンスクリームに脳天を撃ち抜かれ、あまりにもドラマチックなギターにて幕を開ける。サビで聴けるメタルゴッドの叫びには心が震えるし、何よりも中盤のツインギターが織りなす、極上のメロディックなギターソロが最高にカッコいい!
個人的にJudas Priestの全楽曲の中でも、トップクラスに好きですね。ドラマチックなヘヴィメタルとはこれのことだよ。
このタイトルトラックの完成度が圧巻すぎるため、ここで興奮のピークを迎えてしまい、最終盤のM9「Fever」、M10「Devil's Child」が若干消化試合的なテンションで聴くハメになってしまうところが、本作の歯がゆいところかもしれない。決して悪い曲ではないんですけどね(特にM9の哀愁あるギターの旋律はかなり良い)
アメリカ受けを狙った前作よりも、メタルゴッドとしての姿をそのまま打ち出した本作の方が、世界的にヒットしたのだとか。やはり慣れないことをするよりも、自身の真髄をそのまま素直に打ち出した方がうまくいくもんなんですね。
個人的に本作は
"メタルゴッド本来の姿に立ち返り、ブリティッシュ・ヘヴィメタルのドラマ性を堂々と打ち出した作品。タイトルトラックはバンド史上屈指の完成度"
という感じです。