- 様々なミュージシャンと共作したソロアルバム
- J-PUNK/LOUDのサウンドとして全く違和感無い仕上がり
- 前半部のアグレッシヴな曲の出来が特に良い
言わずと知れた日本のバンドシーンの生ける伝説的存在・L'Arc〜en〜Cielのフロントマンである、hydeさんがソロのHYDE名義で2019年に発表したフルアルバム。
本作に手を伸ばしてみた理由は、先日のARABAKI ROCK FEST.で観たパフォーマンスが、その日のベストアクトと言っていいほどに良かったからですね。ずっとシーンを駆け抜け続けたベテランらしいオーラと、ベテランらしからぬ躍動感を同居させたライヴは、初見の僕でも充分に凄みが伝わるステージでした。
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2017年ごろまでVAMPSとしての活動を続けた後、10年ぶりくらいにソロ名義での活動をスタートさせ、そこから単発のシングルを何作か発表してから、満を侍してリリースされたのが本作であるとのこと。ソロ名義のアルバムは10年以上もの間隔が空いているらしい。
まあ当然ながら僕は後追いもいいところなんで、前作から10年以上経っている云々とか、既発のシングル曲とかを意識せず、純粋に単体のアルバム作品として聴けましたが。
本作はソロアルバムとして制作されているものの、作詞作曲はhydeさん一人で行われてはおらず、国内外の多様なミュージシャンと一緒に共作している。そのせいで散漫になっていることはなく、アルバム全体通して統一感のある作風になっているのは、「ライヴで盛り上がれる曲」というテーマを最初に決めていたからなのかもしれない。
基本的にはJ-PUNK/LOUDに分類されるような楽曲で、歌メロにしっかりとキャッチーさが備わっていつつ、タイトに安定した演奏で、アッパーに聴かせるものが多数を占めています。
代表曲をちょろっと聴いたことがあるだけなので、あまり偉そうなことは言えませんが、彼の本業(?)であるL'Arc〜en〜Cielに比べて、かなりラウドにロックしているので、ラルク本隊よりもこちらの方が僕の好みには合うかもしれない。シンプルにカッコいいロックチューンばかりで、気持ちよく聴き通せますね。
出だしのM1「WHO'S GONNA SAVE US」こそ、オープニングトラックとしては少々地味というか、やや落ち着いた感じの曲ではありますが、M2「MAD QUALIA」はアップテンポに駆け抜けつつ、適度にハードでメロディアスなナンバーで、ここでしっかりとヒートアップさせてくれるのがデカい。
疾走するAメロからスケールの大きなサビへ繋がり、FROM ASHES TO NEWのマットのラップもフックとなったM3「SICK」へ続く展開が良く、ここでシンプルにアガれるのが良いですね!前半にしてアルバムのハイライトが早速出来上がった感じです。
この2曲以外だと、Pay money To my PainのPABLOさんが制作したM6「AFTER LIGHT」がお気に入り。どっしりしたリフとバスドラの気持ちいい連打がアグレッシヴで、メロウなサビとシンガロングの交錯具合もカッコいい。
短所としては、上記した楽曲が前半部分に固まってしまっているので、後半が相対的に少々弱く感じてしまう点。もちろん後半がつまらないというわけではないのですが、前半ほどのインパクトは弱まってしまっているかな。M2のような曲がもう1曲ぐらいあれば、また少し印象が違ったかもしれない。M10「LION」のような風変わりな曲も、これはこれで面白いんですが。
あとこれは完全に自分の好みですが、サビになるとテンポダウンして、聴かせるムードが強くなる傾向があるので、せっかくハード&ラウドな作風でアルバム作るなら、1曲通して爆走する、ハードコア的アプローチの曲も聴いてみたいと思いますね。アラバキでサークルピットを促すMCもあったし、やってみたら結構ウケるんじゃないかと。
しかし御年55歳(本作発表時でも50歳)という大ベテランだというのに、自分より遥かにキャリアの短いアーティストと共同制作をし、ここまでJ-ROCKとしてハイエナジーのアルバムを制作、さらには若手バンドマンをバックバンドメンバーとして招き、様々な大型フェスにまで出演するなど、本当にバイタリティのある人だなと思わせられますね。
彼ほどのキャリアを積んだ人なら、もう過去の曲を歌うツアーを回ってるだけで、生活に困らないだけ稼げるはずなのに。なんなら「最近の音楽はようわからん」みたいな事をふんぞり返って言い放つ大御所ムーブをかましてもおかしくないのに。
あくまで現役のミュージシャンとして、若手達と同じ土俵で活動しようという意思が感じられて、それだけで好印象を持ってしまうな。その活動によって、ラルク世代でもファンでもなかった奴が、こうやってCD聴いてみようと動かされた訳ですから、やっぱりスゴい人だよ。
個人的に本作は
"ラルク云々関係なく、純粋にハード&キャッチーなJ-LOUDアルバムとして、気持ちよく聴き通せる。前半の楽曲の充実度が特に高い"
という感じです。