- LINKIN PARK的スタイルのモダンロック
- 北欧出身ならではのキャッチーなセンスが活きる
- バックストリートボーイズっぽいかはわからん
先日一夜限りの来日公演を実現させた、フィンランド出身の6人組ニューメタル/オルタナティヴロックバンドの5thフルアルバム。国内盤デビューは前作からだそうですが、僕がこのバンドの存在を知ったのは本作から。
タワーレコードに陳列されている本作で目を引いたのが、"メタル界のバックストリートとボーイズ"なんていう売り文句。
この手の文言は、"猟奇趣味的激烈音楽集団"とか"世界一危険なロック・バンド"みたいな、日本のレコード会社主導のキャッチフレーズなのだろうと思ってましたが、これに関してはバンド自らが標榜しているのだそうです。なんでも「こんなのロックバンドじゃなくて、バックストリートボーイズみたいなグループだろ」揶揄された過去があり、それを自らの武器にしてしまおうという狙いらしい。
何だか先日のBリーグチャンピオンシップで「ノコノコみたいな脇役」とSNS上で言われたことを、そのまま自分の愛称として定着させた、広島ドラゴンフライズの山崎稜選手みたいな話だな。こういう批判的意見を糧にするかのような精神性は嫌いじゃないです。カッコいいよね。
まあ、僕はバックストリートボーイズについては「Shape Of My Heart」くらいしか知らない(幼少期に家で流れていた記憶がある)ので、このキャッチフレーズが適切なものかは判断できないのですが...
さて、そんな本作のサウンドの印象としては、モダンな質感を強調したヘヴィなギターに、時折ラップとシャウトを織り交ぜつつ、キャッチーに歌い上げるヴォーカル、跳ねるようなリズムを取り入れており、初期LINKIN PARKを彷彿とさせるスタイル。実際メンバーはLINKIN PARKから多大な影響を受けているそうです。
一応メタルバンドとして扱われているようですが、あまりメタリックな音作りではなく、当然ギターソロとかも無し。そのためメタルというよりは、グランジ/オルタナティヴロックのような印象が強いかもしれません。
だいたいどの曲もタイプが似通っていて、抜きん出たキラーチューンも無いので、「普通に良いアルバム」以上の感想を抱くのは難しいかも。ヴォーカルもよく歌えていて、演奏もカッチリとまとまっているのですが、このバンドならではの際立った何かまでは見出せなかった。
ただ、流石にフィンランドのバンドといったところか。ヴォーカルメロディーがどこか湿った叙情性を持っていて、キャッチーな曲を好む感性の人でも、楽しむことができるくらいには歌の充実度があります。こういうところもLINKIN PARK的かな?
冒頭を飾るM1「Where's The Exit」をはじめ、M3「Wolves In California」、M8「Happy Doomsday」のようなアグレッシヴな曲は、シンプルにキャッチーなロックとしてカッコいいし、M6「Die Another Day」のようなバラードのメロディーも結構良い感じ。
モダンでキャッチーなオルタナティヴロック/メタルを好む人ならば、高く安定したクオリティーのあるアルバムとして楽しむことができそうです。サマソニとかに出れば結構人気でそうですね。ルックスもカッコいいし。
なお、母国フィンランドでは、アリーナ規模の会場でライヴできるほどの人気バンドらしく、国内盤にはボーナストラックとしてヘルシンキでのライヴ音源が2曲分入っています。
その音源を聴けばわかりますが、まあ声援の黄色いこと!こういうアーティストに対するファンの反応は、遠く離れたフィンランドという地でも、日本と変わらないという事実がわかりますよ。
個人的に本作は
"モダンでシンプルなオルタナティヴロックのスタイルで一本化した作品。全体通して歌のキャッチーさと、演奏のタイトさが安定している"
という感じです。