- モダンなシンセで彩るサイバーパンク感
- 根底の80年代型メタルは一切ブレない
- 相変わらずのキャッチーなメロディーセンス
BATTLE BEASTの中心人物でありながら、他メンバーに疎まれ解雇されたギタリストのアントン・カバネンが結成した正統派メタルバンド・BEAST IN BLACKの3作目のフルアルバム。前作『From Hell With Love』をから2年、METAL WEEKENDによる来日公演も挟んでのリリースです。
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このバンド、正統派好きのメタルヘッズからは非常に評価が高く、実際に音源・ライヴ共に、その評価に見合ったクオリティーの高さを提示してくれているのですが、本作もその流れをしっかりと汲んだ出来。
シンセがかなり幅を利かせた音作り、正統派然としたエネルギッシュなサウンド、金属的スクリームと女性的ソフトな歌唱法を武器としたヴォーカル(ライナーノーツでは「一人男女デュエット」と称される)、非常にキャッチーなメロディーを取り揃えた一作。前作を気に入った人であれば、きっと本作でも同様に気に入るはず。
ジャケットやブックレットの写真から伝わるように、本作はややサイバーパンク的世界観をテーマとしているようで、時にはギター以上と言ってもいいくらいにモダンなシンセが目立つ。曲によっては「ダンサブル」なんて言葉すら浮かんでしまうほどですが、それでもモダンメタルとしての空気感は無く、80年代型ヘヴィメタルのスタイルを一貫しているのがこのバンドらしいところ。
M1「Blade Runner」の、正統派然としたリフと近未来的シンセの音色が加わり、アップテンポに駆ける曲調、続くM2「Bella Donna」のよりキャッチーでフックあるサビメロの展開で、過去作と変わらぬ完成度を確信させてくれます。
ヴォーカルのヤニスが器用に柔らかな歌い回しを披露するM6「Moonlight Rendezvous」のような曲も彼らのお得意ですが、やはり僕としてはパワーメタリックな疾走感を演出し、よりメタルとしてのエネルギッシュさを全面に打ち出したM7「Revengeance Machine」のような曲に耳を惹かれますね。
正直に言ってしまうと、80年代を原体験していない僕としては、彼らの音はちょっと80年代的ポップさ、ダサさが強く、どちらかというとBATTLE BEASTの方が好きです。音楽的方向性が変わっていない本作においてもその感覚は払拭されず「良いアルバムだけど、そこまでガッツリとはハマらない」という感じ。
しかしこのバンドが普通の正統派メタルバンドと差別化されているのは、まさにその強烈なまでにポップでキャッチー、かつメタルらしいダサさが顕著であることだと思うし、ファンはそういった要素を好んでいるはずだと思うので、この方向性を強化していくのがバンドにとって最善であるとは思います。
エクストリームメタルが主食である人は「メタルにこんなポップな音求めてねーんだよ」という感じなのかもですが、メロディックメタルを好む人には変わらず歓迎されること請け合いの、良質ポップメタルの宝庫ともいうべきアルバム。ボーナストラックはMANOWARとマイケル・ジャクソンのカバーの二曲で、これはちょっとばかし蛇足かも。
個人的に本作は
"近未来的シンセが大きく幅を利かせつつ、相変わらずのポップセンスを発揮した80年代型ヘヴィメタル"
という感じです。