- 旧作と何も変わらぬHAMMERサウンド
- 北欧的哀愁が支配的なヴォーカルメロディー
- ラストにかけてパワーが一段上がる構成
METAL WEEKENDでの好演も記憶に新しいスウェーデン出身の5人組正統派ヘヴィメタルバンド・HAMMERFALLの、前作から約2年半ぶりに放つニューアルバム。90年代という正統派メタルが非常に厳しい時期にデビューして、そこから12作ものアルバムを重ねたんですね。地力のあるバンドです。
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前作『Dominion』は、HAMMERFALLというバンドの個性(それほど個性的ってバンドではないものの)と強みが従来作通りに順当に発揮された充実作でしたが、本作もまたそれに倣った作品。新鮮味は皆無ながら、安定感とクオリティーの高さは折り紙付き。正直、前作と方向性はほぼ変わんないので「前作が好きなら買って損しないよ」の一言で、この文章を終わらせてしまってもいいレベル(笑)
ヨアキム・カンスによるヴォーカルと、それほどゴリゴリしたヘヴィさを主張しないバンドサウンド、北欧由来のメロディーセンスが作用することによって、紛れもない正統派メタルのスタンスでありながら、どこか清涼感すら感じさせる造りはHAMMERFALL節ですね。ドイツとかのパワーメタルバンドと比べると、馬力は一歩劣る印象ですが、クドさを感じさせずにサッと聴き通すことができる。
本作は全体的にヴォーカルメロディーの哀愁という点がやや目立っていて、この辺は叙情的メタルを愛するリスナーの心に引っかかり安いと思われます。M4「Venerate Me」のリードギターとウォーウォー言うコーラス、M7「Not Today」の演歌ばりに泣きの旋律を生み出すバラードなどに顕著に現れています。
その一方でメロスピ的疾走感は控えめな印象で、いかにも疾走パワーメタルチューンだ!と思わせるイントロのM6「Too Old To Die Young」も、歌が入ってからはややテンポダウンしてしまったり(雄大なサビとツインリードは素晴らしい)と、この辺はややもどかしい思いをさせられてしまうかも。必ずしも疾走を売りにしたバンドではないんですけど。
ただバラードのM7が終わってからの残り3曲は、本作の中でもパワフルさが強調された楽曲が立て続いて、勢いよくアルバムを締めてくれる構成は好き。正統派リフがズンズン進みゆく様が聴いていて実に気持ちいいですね。
全体を通して「さすがHAMMERFALL!何も変わっちゃいないぜ!」と言いたくなる、高品質な正統派メタルを本作も貫いてくれました。充分に熱量はあるけれども聴きやすい。意外性は無いけど外されることも無い、この安定感がパワーメタルファンにはありがたいですね。
個人的に本作は
"HAMMERFALLらしい、馬力控えめで聴きやすさ重視の正統派パワーメタル。哀愁寄りのヴォーカルメロディーが充実"
という感じです。