ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

SLEEP TOKEN 『Even In Arcadia』

  • 現行ロックシーン最大の注目株
  • R&Bの影響が大きい歌と、それに伴う豊かなメロディー
  • メタルのシンプルなカッコよさを期待するものではない

 

2025年7月現在、「今話題沸騰中」というワードが一番似合うロック・アクトは、このSLEEP TOKENと言っていいでしょう。たぶん。

 

2016年頃にイギリスのロンドンで結成されたバンド(プロジェクト?)で、中心人物であるヴェッセルがヴォーカルと主な作曲を担い、あとはⅡ、Ⅲ、Ⅳと番号が振られたバンドメンバーがいる、という事は公になっているものの、詳しいメンバーの素性は一切不明。その不気味で神秘的な風貌に、一筋縄ではいかない音楽性で話題を振り撒きまくっています。

 

今年配信リリースされた先行シングルが軒並み大ヒットを記録、さらにはDownload Festivalメインステージのヘッドライナーを務め、今後予定されている北米ツアーはソールドアウト多数と、世界から凄まじい注目を集めているのだとか。

 

そんな一躍ロックシーンの最前線に躍り出た謎のバンドが、今年発表した最新フルアルバム。日本でもその熱波の影響が来ているのか、タワーレコードの旗艦店では大々的にコーナーが設けられているのを見ましたし、先日ソニーから国内盤も発売されています。こんなにもスポットを浴びているなら、そりゃあ無視するわけにはいかんでしょうと、僕もチェックしてみました。

 

彼らの音楽はなかなか一言で定義するのが難しく、一応HR/HMアーティストとして括られてはいるものの、いわゆる「メタリック」と形容できるようなサウンドではありません。非常にヘヴィなバンドサウンドが導入されているパートはあるものの、モダンで重厚な音作りで、オルタナティヴロック/メタルとしての側面が強いです。

 

そんな音作りの中で、R&Bというラウドなサウンドにはあまり適応しなさそうな要素をドッキング。ヴェッセルの歌声にはそういった色気と芯の強さがあり、このジャンルじゃ聴く機会の少ない声質が新鮮なインパクトを放っています。

 

ピアノをバックに雄大に歌い上げる弾き語りのようなパートや、ジャジーなバッキングなど、色々な音楽的素養をいたるところに散りばめていて、一口で形容するのが難しいんです。僕にもっと豊富な語彙があればいいのですが。

 

そんな音楽性であっても、決してとっ散らかった印象は与えず、ちゃんと一本化された個性、まとまりが感じられるのが本作の美点でしょうか。これはひとえに、しっかりと歌えるヴォーカルを有して、歌メロがポップで聴きやすいところが理由かと。ちゃんと歌心があるから、曲の芯がブレないんでしょうね。

 

ムーディーに聴かせるパートが多いので、正直なところHR/HM的なシンプルにアガれるカッコよさ、キレのあるサウンドで拳を振り上げたくなるアグレッションとか、そういった要素はほぼ無し。そういう点を期待して聴くようなバンドではないです。

 

ヘヴィサウンドもあるにはありますが、ぶっちゃけそういったパートよりも、ヴェッセルの歌の方が輝いてる気がするな。個人的に一番印象に残ったのはM3「Past Self」の歌メロだし。M5「Caramel」のオルゴールのように綺麗なイントロから、切なく歌い上げる出だし、M8「Damocles」の終始メロウに進みゆく展開など、単純に歌に浸れる箇所の方が気持ちいいですね。

 

通常のHR/HM作品とは趣が一切異なるので、暗い部屋に間接照明を灯したりして空間のムードを作り、曲の魅力に身を任せるようにじっくり聴き浸る......そんなスタンスの方が、無理なく音世界に溶け込める気がします。

 

「ロックとして刺さる!」というモンではないので、必ずしも僕の琴線に触れはしませんでしたが、普通に歌メロが良いためムーディな歌モノロックとして良質。意識をズブズブ取り込まれていくような、不思議な魅力を感じた作品でした。たまにゆったり聴く分には重宝しそう。

 

 

個人的に本作は

"ヘヴィなオルタナメタルと、R&B的色気を持つヴォーカルが融合した不可思議な魅力。メタルとしてではなく、ムーディな歌モノとして聴くのが吉"

という感じです。