LOUD PARKが終了してだいぶ経ちました。
いや〜〜〜〜、改めて俺はPANTERAのステージを観られたんだよな。そりゃあ本音を言えば、ダイムバックとヴィニーのいる完全体PANTERAのライヴを観たかったですよ。この形態でのPANTERAをPANTERAと呼んでいいものか、と思う人の気持ちもよくわかります。
しかし、ないものねだりをしても仕方ないですからね。メンバーの死によって伝説的存在となったバンドが、その名を正式に冠した状態で再び来日してくれたのです。これを観られただけ価値ある体験でした。
そんな余韻に浸りながら、彼らの重要作についてちょっと書き記してみます。LOUD PARK前後でよく本作を聴いていたので。
本作は1990年に発表された5thフルアルバム。これより前に4枚ものアルバムが出されていますが、音楽性はヘアメタルやB級正統派メタルのそれであり、現在のPANTERAというバンドのイメージとは似ても似つかないものだったそう。そのせいか、公式の方では完全に黒歴史化されているらしく、バンドのディスコグラフィーからは削除されています。
当時の楽曲はYouTubeでチョロっと聴いたことがあるくらいですが、B級ながらも正統派のヘヴィメタルとして普通に良い感じで、これはこれで悪くないんじゃないの?とは思いました。PANTERAというバンド名に合うかは別として。
本作において、90年代のヘヴィメタルシーンのトレンドとなった「モダンヘヴィネス」「グルーヴメタル」というジャンルの基盤を築いたと言えます。こうも音像が変わってしまって、当時を追いかけていたメタルファンはどういう心境だったのだろう。
思いっきりひしゃげた歪みによるギターが特徴的で、弾むような溜めを活かした、独自の跳ね感を持つ縦ノリグルーヴが非常に気持ちよく、フィル・アンセルモのハードコア的な咆哮も相まって、頭を振るのに申し分ない痛快なサウンドに仕上がっています。単にヘヴィなだけになってしまって、いまいちリフの響きが耳にひっかからないということが起きにくい。
ただガッツリグルーヴィなメタルへと変貌した次作『Vulgar Display Of Power』に比べると、本作の楽曲には、言われればなんとな〜くヘアメタルをやっていた頃の残り香とでも言いましょうか。一部のヴォーカルメロディーにそれが感じられます。フィルのヴォーカルも完全にハードコアスタイルに切り替わったわけでなく、そこかしこに正統派メタルらしいハイトーンが聴けますし。キャッチーな音楽的要素が完全に無くなっているわけではないです。
ダイムバック・ダレルによるダイナミックなギターソロも随所で強調されていて、ソロ皆無となった90年代ニューメタルとは一線を画す、メタルらしさが残っているのもポイントですね。ザクザクした歪み方、跳ね回るリズムと合わせて実に気持ちがいい!
オープニングを飾るタイトルトラックM1「Cowboys From Hell」、どこかキャッチーな歌メロと癖になるリズム、そして中毒性あるリフの畳み掛けを味わえる名曲で、アルバムの幕開けにふさわしい。LOUD PARKでの興奮が蘇る!
その後に続き、よりつんのめるような勢いが増したリフの応酬が冴えわたるM2「Primal Concrete Sledge」に、THE冠のライヴのラストでもお馴染みになったフレーズが出てくるM6「Domination」など、アグレッシヴな側面が色濃く出た楽曲はどれも魅力的。ラストを飾るM12「The Art Of Shredding」も、疾走するリズムに合わせた切れ味鋭いリフ、ド派手に唸りをあげるギターソロがカッコいい名曲。やや正統派ハイトーンの色を残したシャウトも聴きどころ。
全曲合わせて60分近くあり、バラードの類は基本的に無いので(M5「Cemetery Gates」は落ち着いた出だしですが、その後すぐにパワフルにグルーヴメタルしだす)、さすがにぶっ通しで聴くのは体力を使いますけどね。この否が応でも体を揺らしたくなるリフの魅力は、やはり素晴らしいの一言ですよ。
その後モダンヘヴィネスという、PANTERAの影響下にあるサウンドを出すバンドはいくつも出てきたようですが、結局彼ら以上にモダンなリフをキャッチーに聴かせるバンドはほとんどいなかったようで...(もしいたら教えてください) やはり彼らは伝説のバンドたり得る実力があったのでしょう。
個人的に本作は
"グルーヴメタル隆盛の嚆矢となった実質的デビュー作。PANTERAサウンドの基本形は確立してるが、どこか正統派HR/HMのフィーリングも残っている"
という感じです。