- スマッシュヒットを記録したメジャーデビュー作
- ポップパンクの衝動性とゴシックロックの哀愁
- アルバム全体に漲る勢いの良さ
前回がLOUD PARKのヘッドライナーであるPANTERAのメジャーデビュー作だったので、その次はやはりこのアルバムですね。PUNKSPRINGのヘッドライナー・MY CHEMICAL ROMANCEのメジャーデビューアルバム。フルレンスとしては2枚目になります。
このバンドもまた、さすがにPANTERAほどセンセーショナルな扱いではないとはいえ、2013年の解散から復活し、2020年のDownload Festivalの来日がポシャり、10年以上の時を経て待望の来日を成功させた訳ですからね。長年のファンにとっては待望のライヴだったのではないでしょうか。
本作はシングルカットされたM5「I'm Not Okey (I Promise)」のヒットも手伝ったためか、200万枚もの売り上げを見せ、バンドの知名度を爆発的に広める重要作となりました。
2001年結成で、2004年リリースの本作がヒットと、かなりのハイペースで売れてしまったためか、大型フェスなどに出演するとブーイングが飛び交っていたらしいですが、まあそれだけ多くの人の目に触れるメガヒットとなったんでしょう。
彼らはのちに劇的なロックオペラ作品『The Black Parade』、およびその作品のリードトラックとなる、マイケミ最強の超名曲「Welcome To The Black Parade」を生み出すことになりますが、本作はそこまで大仰で世界観は無し。激情スクリーモ的なシャウトによる緊張感と、ポップパンク直系のメロディックなサウンド、ゴシックロックのような仄暗い耽美な印象を併せ持った作風。
テクニカルなプレイはせず、ロックの初期衝動に満ちたアグレッシヴな演奏、それに伴うキャッチーな歌メロの存在はポップパンクの系譜に位置するものですが、底抜けな明るさはほぼ無く、前述したようにゴシックロックのムードが漂っているのが特徴。そのためいかにもパンクな空気感はあんまり感じられません。
ジェラルドのヴォーカルも、技術よりも感情優先といった感じで、ヤケクソじみた絶叫を要所で用いて、タイトさよりもアグレッション重視の衝動的サウンドに華を添える。切なくネガティヴな感情表現を演出するメロディーも合わさって、これにより生み出される世界観に、当時のキッズたちや、PUNKSPRINGに来ていた大勢の女性客はヤラレてしまったのでしょうなあ。
何よりアルバム全体に勢いがあってていいですね!オープニングを飾るM1「Helena」は、そんな作風の旨みを濃縮させたような名曲で、風を切る疾走感に哀愁のこもった激情のメロディーラインが、実に聴いていて爽快感がある。続くM2「Give 'Em Hell, Kid」も聴きやすさを保ったまま、勢いをそのまま引き継ぐかのよう。
シングルカットされた前述のM5は、哀愁寄りの本作にあって、ややポップなムードを強く押し出した曲。この曲が中盤に差し掛かるころに入ったことで、アルバムのメリハリがついていい感じ。
どこかメタルにも通じるようなパワフルなイントロを持つM9「Thank You For The Venom」から、ラストのM13「I Never Told You What I Do For A Living」までは、「アップテンポ+哀愁」という本作の方向性を如実に示した楽曲ばかりで構成されている。この後半の畳み掛けが素晴らしく、アルバムの幕切れを痛快なものにしてくれています。
どうしても「マイケミといえばブラックパレード」というイメージを持ってしまう僕ですが、ブラックパレードには無いロックらしい衝動がつまった本作は、これはこれでかなり気に入ってます。むしろこっちの方が好きという人も多いかも。
ほとんどの曲がアップテンポで駆け抜け、かつ収録時間もそこまで長くないので、ブラックパレードより敷居は低めですからね。気軽にサクッと聴くならこっちの方が向いてるかな。
個人的に本作は
"ゴッシク的哀愁ムードと、アグレッシヴなポップパンクの疾走感で心地よく聴ける痛快作"
という感じです。