- 西海岸パンクの影響が色濃いメロコア
- ポップな開放感、ほのかな哀愁、何気にテクニカル
- 後のアルバムと比べて音質や演奏はやや荒め
前回のCD感想がIRON MAIDENの最新作という、難解かつ長大、オジ様向けの音楽(?)だったので、その反動を受けて今回はクソガキ臭漂うキッズ向け音楽を取り上げます。
個人的に「日本で最もキッズ向けの音楽を鳴らしているバンド」と認識している、4ピース(2019年にギターヴォーカルのTANNYさんが脱退して現在は3ピース)メロディックハードコアバンド・GOOD4NOTHINGの、2007年に発表した4thフルアルバム。
GOOD4NOTHINGは昔から楽曲の方向性が一貫しており、かつどのアルバムもクオリティーが安定して高いが故に、抜きん出た完成度を誇る傑作みたいなものが無い印象ですが、ライヴ定番の名曲を収録しているという理由で、一応本作が代表作扱いされている感じがあります。
後に出したアルバム群の方がヴォーカルも演奏も明らかに上手くなっており、音質も向上しているので、今改めて聴いてみると、本作の時点ではまだ未整理・未成熟な感じがあるのも事実。ただし西海岸パンクに強く影響を受けたポップで開放感あるメロディーに、単なるポップパンクに陥らないほのかな湿り気・叙情性も持ち合わせているメロコア路線は、本作の時点で確立しています。
オープニングとラストを飾るM1「It's My Paradise」とM12「Cause You're Alive」はライヴでもお馴染みのナンバー。シンガロング必至のドチャクソキャッチーなサビと、この頃から技巧的な一面ものぞかせているギターソロを持つ前者、大団円という言葉がよく似合うクライマックスを演出し、ポップながら哀愁を帯びたメロディーに胸を熱くする後者。どちらもこのバンドを語る上では外せない名曲。
この2曲が彼らの核となっているがために、その他の曲は現在ではやや存在感が希薄になっているきらいがあるも(何度か彼らのライヴは観たことがありますが、この2曲以外聴いたことない)、もちろんその他の曲も上質なものが多い。
ピロピロしたギターがのっけからインパクトを放ち、アメリカンなポップさの中に叙情性を見出せる疾走曲M2「The Rainy Season」、シンプルな爆走感に身を委ねつつ、より哀感を強めた(もちろんメロウになりすぎることはない)M3「Let Me Go」、タッピングのイントロから軽快に疾走し、程よく切なさを含んだサビが抜群にキャッチーで気持ちいいM5「Turning」、何気にギターが小刻みでパワフルなリフで主張するM7「Shouting My Heart」など、全編にわたってベタでノーマル、だけれども普遍的な魅力を持ったメロコアチューンのオンパレード。
中でも強力なのが、我らが愛するライヴハウスに生み出されしモッシュピットを賛美したM10「In The Mosh Pit」ですね。シンガロングに興奮を抑えきれぬ爆走、彼ららしいキャッチーなメロディーを取り込んだ激アツショートチューンで、キッズなら間違いなくブチアガり、半狂乱になりながらモッシュピットに揉まれ潰れること必至!代表曲であるM1やM12を差し置いて、この曲が一番好きかも。
やってることはあまりにもスタンダードであり、それでいてHawaiian6やdustbox、Last Allianceのような哀愁バリバリのメロディーもなく、良くも悪くもポップなメロコアの王道を突き進む音楽性。この手のスタイルが好きならハマり、そうでない人は良さを見出すことは困難なアルバムでしょう(それは本作に限らず彼らのアルバム全部に言えることですが)
やはりキッズとしてライヴハウスという空間を愛し、そして速くてカッチョいい曲を狂ったように聴いていた僕からすると、本作に込められた音は紛れもなく「魅力的な音」。何の不純物も無いメロコアには、いつだって17歳の頃の自分を思い出させてもらえるのですよ。
個人的に本作は
"グッフォ節100%のスタンダード・ハイクオリティーなメロディックハードコア。アメリカンなポップさと、ほのかに滲む叙情性の共存が魅力"
という感じです。
今年のライヴ映像で、本作収録の「It's My Paradise」をプレイしています。TANNYさんのヴォーカルパートはベースのMAKKINさんが歌っており、ハスキーで野太い声はカッコよくはあるものの、やはりTANNYさんの悪ガキ感満載の歌声が聴こえてこないのは違和感があるな...