- メンバー脱退の苦難を乗り越え生み出された会心作
- 弾けるポップチューンは控え、哀愁疾走路線を強調
- 不屈のパンクスピリットに感動
前回BRAHMANのライヴ感想をあげたので、その流れってわけでは無いですが、今年発表されたパンク系アルバムの新作感想を。2023年の新譜感想記事はこれが最後になりますかね。
もうベテランの域に差し掛かっていながら、いまだにキッズのための音楽を貫き続ける堺のオッサン・GOOD4NOTHINGの新作です。
ここ数年のG4Nは動きは、内部事情を知らない僕からしても「激動だったんだろうなぁ...」と容易に想像がつくほどでした。
何せ、バンドのフロントの位置にいたTANNYさんが脱退し、3ピースとなって再出発した矢先にコロナ禍が始まって思うように動くことができず。そして2022年にはドラムのSUNEさんが脱退して、現在正規メンバーはU-tanさんとMAKKINさんの2人のみ。4人が2人になったのだから、もうメンバー半壊と言ってしまっていい。「G4Nは大丈夫か?」「もうこのバンドはダメなんじゃ?」という外野からの声とかもあったでしょうねきっと。
しかしバンドはサポートドラムを入れてライヴを継続、今年の終盤になって5年ぶりとなるニューアルバムを発表しました。歩みを止めようとしない姿勢にまずは賞賛の意を。
そして音を聴いてみて、「G4Nはまだまだ終わっちゃいない!」という確信を持てました。間違いなく本作は、2023年のJ-PUNK屈指の会心作だ。
過去作とほぼ方向性は変わっちゃいませんが、これまでのアルバムにあった弾むようなポップさ重視の曲、異ジャンルの要素をつまみ食い程度に入れた曲はほぼ無し。アルバム全体を通して、翳りを含んだ哀愁のメロディーと疾走感を強く押し出している。元々サウンドの振れ幅は小さいバンドでしたが、本作はそれに輪をかけて統一感がある。
そしてその哀愁疾走路線を貫いた方針が大正解で、迷いなき切ない高速メロコアのオンパレードに仕上がっている。聴き通した際の爽快感はかなりのもの。不純物無し、極上のメロディックチューンで構成された1枚が誕生しました。
まず出だしのM1「BURNING」から、どこかもの悲しいアコギのイントロに、切ないサビで爆走するショートチューンとなっており、「これを待ってた!」と言いたくなる最高のツカミ。
完全にメロディー重視で、郷愁を誘うかのような旋律を掻き鳴らすギターソロが素晴らしいM4「CHANGE」、メロコアらしい快活なシンガロングがもりだくさんなのに、根底にあるメロディーがこれまた哀愁に満ちたM6「Wishing」を筆頭に、どの曲もエモコアにも通じるような美旋律が息づいている。それでいて、あまりにも悲しくなりすぎないポップさもキープしているのが、メロコアらしいバランスを取り持っていて、この辺もこのバンドのセンスの良さでしょう(Hawaiian6みたいに激泣きクサクサ路線も好きだけど)
先行発表されているシングルM5「NEW STORY」、M9「FLAG」、M11「THIS SONG'S TO MY FRIEND」は、いずれも最初聴いた時からキラーチューンだと思っていただけに、アルバムの流れで聴いても依然魅力的。特にM9のサビの叙情性MAXのサビメロなんてたまらんねマジで。
TANNYさんとSUNEさん脱退に伴い、M5とM11はリレコーディングされており、TANNYさんのキッズらしいヴォーカルから、MAKKINさんのやや落ち着いたヴォーカルに変わったことで、M11は若干受ける印象は異なるかな。
メンバー半壊という事態を受けてもなお、不屈のパンクスピリットでここまでクオリティーの高い作品を出してくれるとは。辛さを乗り越えて、それでもバンドが好きで、やり続ける意志の強さをヒシヒシと感じる歌詞の熱さも相まって、メロコアキッズとして音楽を聴き始めた身からすると、ちょっと聴いてて何か込み上げるものすらある。
デビュー以来一切方向性がブレることなく、ここまで質の高いアルバムを出し続けられる力のあるバンドって、今のJ-PUNK界においていくつあるんでしょう?日本の全メロコアキッズ必聴ともいえる強力作ですよこれは。
個人的に本作は
"苦難を乗り越え生み出された、哀愁疾走メロディックのオンパレード。悲しくも楽しい旋律に、笑い、泣き、暴れられるサウンド"
という感じです。