バンドがまだ訪れたことのないライヴハウスを中心に回る、BRAHMANの自主企画ツアー「Hands and Feet」に行ってきました......って、前回と同じ書き出しになってしまったな。
show-hitorigoto.hatenablog.com
そう、10月にわざわざ九州遠征までして行ったこのツアー、奇跡的に横浜のチケットも取れてしまったもんだから、有給取って行ってきたんです。BRAHMANのライヴは何度観てもイイもんですから。
案の定チケットは速攻でソールドしてしまったので、そんなライヴに年2回も行くことができるとは、もう2024年の運は今年で使い切ってしまったのかもしれません。
横浜は家から遠いものの、電車の乗り継ぎは複雑じゃないので結構行きやすい。明日普通に会社に行かなきゃいけないという日程はいったん無視して、以前と同様地獄のモッシュピットに揉まれる覚悟を決めて出発。
ライヴが始まるまでは横浜ビブレやディスクユニオンをプラプラしながら時間を潰し、開場時間ちょうどくらいに、横浜 BuzzFrontへ。今年の1月にオープンしたばかりの新しいライヴハウスで、BOMB FACTORYとNUBOのメンバーが中心になって立ち上げたんだとか。
300人ほど入る小規模なライヴハウスで、バーカウンターと物販スペースを兼ねたフロアはだいぶ狭い。ソールドしているだけあり、かなりの密集地帯になっていました。なんとかクロークの袋を預け入れて、ワンドリンクのペットボトルをもらい、ライヴスペースへと移動。
本当は19時半に開演というスケジュールだったのですが、入場がだいぶ遅れてしまっていたのも関係しているのか、少し時間を過ぎてからの開始となりました。それでも最後の方に入場した僕は、1曲目の開始には間に合わなかったのですが。
HUSKING BEE
本日の対バンはBRAHMANより先輩のHUSKING BEE。90年代のバンドブームにおいて活躍し、日本のエモ/パンクシーンではかなり名の知れた彼ら。このツーマンをこんな小さな会場で観られるというのは、なかなか無い機会なのでは。
ただ、有名バンドとはいえ個人的に特に思い入れのあるバンドではなく、「Walk」くらいしかしっかり聴いた曲がないという貧弱な予習ぶり。そのため後ろの方でゆったりと観るようにしていました......が、とても観れたもんじゃない。
というのも、小さなフロアに人がギチギチに詰まっていて、かつステージが高いわけでもない会場。後ろの方から観ようと思っても、視界に入るのはお客さんの後頭部ばっかりで、バンドの姿はまったくといっていいほど視認できない。この状況ではとても「ライヴを観た」とは言えません。
一応人の頭の間から、磯部正文さんの顔だけはそこそこ見えました。「おお、あれが生のイッソンか〜」と思うことなら何とかできる。ホントそんぐらい。
「久しぶりのブラフとの対バン、ライヴハウスのBRAHMANは僕も楽しみです」と、丁寧に語りつつ、ライヴの展開は割と淡々とした印象で、フロアの盛り上がりも熱狂的というよりは、もっとリラックスした感じ。鬼気迫るような緊張感はなく、ピースフルな空気感が会場を包んでいました。
ただ、やはりパンク畑のバンドなだけあり、メロコアテイストの強い曲になると、フロア前方にはモッシュピットも生まれ、クラウドサーファーが次々と登場。狭い会場だと、やはり足が天井の照明にぶつかってしまわないかが心配になるな。
やはりというか、一番盛り上がったのは「Walk」で、この曲になると目に見えてフロアの熱量が上昇。シンガロングもステージダイブも、タガが外れたかのように増えていました。やっぱみんなこういう切ない系メロディーが好きなんだなぁ。
BRAHMAN
HUSKING BEEが終わってから、結構長いこと転換の時間が続く。ライヴ開始はもう20時半を回っていました。
しばらく待たせた後に、いつもの登場SEが流れてTOSHI-LOWさんを除く楽器陣3人が登場。結構前の方にいたんですが、やはりステージの高さがないため、RONZIさんはほとんど見えない。
オープニングのイントロをKOHKIさんがギターで奏で始めると、驚きの感情を含んだようなどよめきが生まれる。『WAIT AND WAIT』収録の「SWAY」です。
今回のツアーのセットリストを見てると、結構他会場でもこの曲はやっていたようでしたが、いざ激レア曲を生で聴けるとわかると、俄然テンションが上がる。間近でバンドのパフォーマンスをこの目に焼き付けようと思ったのですが......
テンションが上がったのは僕だけでなく、周りの人たちみんなそうだったようで、そりゃあもう怒涛のごとくクラウドサーファーが爆誕。頭上に人がいない時間の方が短いとさえ言えるほどに、次から次へと上から降ってきて、もうステージを観る余裕など皆無。いや、ホントマジで皆無。
「あ、これは身の危険が迫ってるやつだ」と、自分の生存本能が爆音でアラームを鳴らしてきたので、ほんの少しだけ後ろの方へ下がり、ステージダイブが止まない最前付近からは少し離れることに成功。それでも前方ど真ん中という位置であるため、モッシュの勢いは落ちることなく、押し合いへし合いの地獄は続いていく。
もうこの時点で脳内ドーパミンがドバババババーーッッ!!状態だったので、バンドのパフォーマンスがどうだったとか、ヴォーカルや演奏の安定感がどうだったとか、細かなことは覚えとらん(笑) だってただひたすらに暴れてただけだったんだもん。
ただ、「SWAY」に続いて、「まさかこの曲が聴けるとは!」と驚いたのが、GRUPO SEMILLAという民族音楽グループのカバーである「MIS 16」。翳りあるメロディーに、異国情緒満載のヴォーカルが載るオリエンタルな隠れた名曲。僕の会社の先輩社員(僕の10コくらい上の人)はこの曲が大好きだって言ってました。
細かな部分は変えつつ、セットリストの大筋は前回の佐賀と大きくは変わっておらず、ゼロ距離のステージ、酸欠必至のモッシュピット、床が汗だまりになっているようなフロアの状況、そのどれもが前回の佐賀RAG.Gと同じで、凄まじいデジャヴを感じていました。あの時も「ライヴを観る」というより、「爆音に塗れながら暴れ狂う」という感じだったな...
この日はあの時以上にバンドのパフォーマンスは見えなかったのですが(ステージダイブばっかりだったもん)、かろうじてKOHKIさんとMAKOTOさんは見切れる形で視界に入る。「不倶戴天」のギターソロでは、人間椅子の和嶋さんの如く、背面ギターを披露するKOHKIさんの姿が見えました。
そんな狂騒が少し落ち着いたのは後半のバラードタイム。「今夜」では本日唯一と言ってもいいMCがあり、「丸くなるな、星になれってあるけど、本当に星になってどうすんだよ。せめて星になった奴らに届くように、一緒に歌ってくんねえ?」と呼びかける一幕が。その人の名前はあえて語らなかったのですが、おそらくチバさんのことであることは想像に難く無い。
ただ、そんなセンチな気持ちになったのはその一瞬くらい。あとはもう酸欠・汗だく・瀕死のライヴ。いや、もはやライヴという名の肉弾戦。
ラストの「ARTMAN」は、ラストスパートと言わんばかりのモッシュ、クラウドサーフが巻き起こり、"Go! And! Stop!"のシンガロングで締めたあと、TOSHI-LOWさんがマイクスタンドをぶん殴って、余韻もクソも無い圧巻の幕切れとなる。狭きライヴハウスのBRAHMANに、必要以上のお涙頂戴はいらない。
1時間ほど矢継ぎ早に曲が繰り返される、長かったようなあっという間だったような、怒涛の時間が経過し、残されたのは息も絶え絶えになったオーディエンス(僕含む)と、水浸しになったフロアのみ。戦場の跡みたいだった。終わったあとしばらく茫然自失としちゃったもん。
ズボンまでグショ濡れになってしまった惨状を引き摺りつつ(もちろんTシャツは替えましたよ。風邪ひいちゃうから)、フラフラとライヴハウスを後にする。至近距離でのぶつかり合いを反芻しながら、ゆっくり歩いている時間で「俺はライヴハウスらしい遊び方をしたんだな...」と噛み締めていました。
自分が最も好きなバンド、それもZeppクラスの会場で普通にワンマンができるバンドのライヴを、ライヴハウスという原点となる場所で、短期間に2度も観ることができたというのは、自分の中では大きな出来事でしたね。このツアーは年内で終了してしまいますが、またいつか近いうちに小さなハコライヴをやってほしい。体力が保つかわからんけど。