ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

12/15 SECRET SPHERE & SERENITY Japan Tour 2023 at 初台DOORS

イタリアのシンフォニックパワーメタルバンド・SECRET SPHEREの来日公演に行ってきました。ジャパンツアー初日となる東京公演です。

 

正直なところ、このバンドに対しては取り立てて強い思い入れみたいなものはなく、「観られるなら観ておこうかな」くらいの温度感ではあったんです。

 

しかし今回サポートアクトとして帯同するのが、今年発表した新作『Nemesis A.D.』がかなりの力作だったSERENITY。彼らにとっては初来日ということで、これは是非とも観たいなと。

 

幸いにして当日はさほど仕事が忙しい日ではなく(いつも遅くまで残っている先輩社員が超ひっさびさに定時帰りするほど)、仕事場から初台までさほど離れていないこともあり、平日18時半スタートという悪条件ながらも割と余裕で間に合っちゃった。平日ライヴはいつもこんな感じだったらいいのに。

 

会場となる初台DOORSに行くのは、以前にJupiterのライヴを観て以来2度目。あの日はかなり寂しい客入りでしたが、この日はソールドしていないもののそこそこ入ってる。今から前の方に行くのは無理っぽいので、PA前くらいの下手側後方のスペースに入って、終始そこから観ていました。

 

 

ILLUSION FORCE

サポートアクト一組目は、EVP主催のライヴではお馴染みのILLUSION FORCE。EVOKEN FESTで観て以来なので、結構久しぶりかも。あの時からドラマーは変わっているらしい。

 

このバンドの強みは何といっても韓国人フロントマンのJinnさん。音源でもわかる強力なハイトーンシャウトを、この日も初っ端から披露。常人には信じがたいほどまっすぐで長く伸びる声は、わかっていても「すげえな...」と慄いてしまいます。

 

ただ音響の問題か、僕が下手側の際にいた関係か、シャウトとして張らない通常歌唱については若干聴こえにくい箇所もあったり、伸びが悪くなったりしていた印象で、少し歌いにくそうに見えたような。ガッツリ埋もれているわけではありませんでしたが。

 

演奏はタイトさよりも勢い重視という感じで(ベースはかなりテクニカルだったけど)、荒削りながらも突進力があって、ライヴで盛り上がるにはピッタリ。ポジティヴな哀愁に満ちた歌メロの良さもあって、非常に気持ち良い、爽快感のあるメロスピがたっぷり。

 

和の情緒をうまく絡ませた名曲「Cosmos」はやはり素晴らしいキラーチューンですね。この曲のサビにおける壮大なスケールを感じられただけで、彼らのライヴを観てよかったと思えるほどでした。

 

ステージが狭い分、前回観た時ほどステージアクションは大きくなかったですが、短い中でインパクトを残すに相応しいアクトを披露してくれました。

 

 

SERENITY

今回最大のお目当てがこのバンド。日本で初のライヴになるわけですから、これを見逃すわけにはいきませんよ。

 

最新作のオープニング通り、SEの「Memoriae Alberti Dureri」からの「The Fall Of Man」でスタート。幕が開いた段階で楽器陣はすでに揃っており、遅れてヴォーカルのゲオルグ・ノイハウザーが上手側から登場する......のですが、真ん中に設置されたスタンドマイクに飛びついた時に掴み損ねて、危うくスタンドが倒れそうになる。

 

「うおっ!アブねっ!」という表情を一瞬見せたものの、すぐに持ち直して歌唱に入る。いや〜ハプニングにならなくてよかった。見てるこっちも少しヒヤヒヤしちゃったよ。

 

そしてライヴパフォーマンスですが、これが非常に良かった。やや気品さや煌びやかさが強調されたようなシンフォニックメタルをプレイするバンドですが、ヘヴィメタルらしいパワー溢れるステージアクションをメンバー全員がしており、盛り上がりに欠ける気配がまったくない。

 

新加入となったギターのマルコ・パストリーノが特に押し出されていて、途中でマルココールを促したり、ゲオルグと一緒にハゲであることをネタにしたりといった一幕も。

 

そんな彼がギターだけでなく、ヴォーカルとしての力量も優れていることを見せつけたのが、最新作からの「Reflection (Of AD)」で、下手なフロントマンよりも安定したヴォーカルを披露していて、「歌上手っ!」驚かされる。曲自体は短縮バージョンみたいだったけど。

 

メインヴォーカルのゲオルグも、スタジオ音源通りの甘い魅力に満ちたナイスな歌を聴かせつつ、頻繁にハンドクラップやフィストハングを要求する、存在感のあるフロントマンぶり。わかりやすく疾走する瞬間はさほど多くなかったにも関わらず、腕を振り上げ歓声が上がり...と、熱い盛り上がり。正直メインアクトであったはずのSECRET SPHEREよりウケてたんじゃ。

 

まあ僕も今回のメンツで一番楽しみにしてたのはSERENITYでしたし、そういう人は他にも多かったんでしょうね。SECRET SPHEREは、ロベルトがヴォーカルを務める編成では初めてですが、すでに何度か来日経験はあるわけですし。

 

あとちょっと意外だったのは、ゲオルグのガタイがかなり良かったこと。ヴォーカルだけ聴くと、品があって華奢で...みたいなイメージを勝手に抱いていたのですが、生で見ると「デカッ!体分厚っ!」と思っちゃった。夜に道で会ったら多分ビビる。

 

一番アガったのはラストで、メロディックなシンフォメタルの美学がこれでもかと詰まった「Legacy Of Tudors」に、彼らの楽曲で一番好きな「Lionheart」という超強力な二連打が繰り出された点。今までも充分に優れたライヴ運びを見せてくれたのに、最後の最後でこの名曲とは、もう文句なんかありません。

 

いや、あるとしたら1時間にも満たない短さですね。これほどライヴバンドとして優れているなら、もっと堪能したかったですよ。

 

 

SECRET SPHERE

SERENITYの短くも素晴らしいライヴを終えて、ラストはSECRET SPHEREの登場。以前来日した際のフロントマンは、イタリアンメタル屈指の実力を誇るミケーレ・ルッピで、ロベルト・ラモン・メッシーナがヴォーカルを務める編成になってからは初の来日。

 

個人的にはミケーレの超人的歌唱力を生で聴いてみたい思いがありつつ、ロベルトも特に文句のあるヴォーカルではないので、これはしょうがないと思い直してステージを見る。

 

メンバー全員がアー写同様に目元にメイクを施しており、なんとなく未来人めいたイメージを抱きました。

 

まず思ったのが、メタルバンドとしてのパフォーマンスの良さ。超絶技巧であっと言わすタイプではないものの、メンバー全員が非常にタイトにまとまった、ヘヴィメタルらしいパワーのあるサウンドを出している。

 

なんとなくこのバンドにはB級のイメージを持っていたので、ここまでメタル然としたパフォーマンスをしてくれるとは、ちょっと嬉しい驚き。特に僕の位置から観やすいベースのアンドレアは、これぞメタルミュージシャンって佇まいでした。ガタイも良くて存在感あります。

 

プレイ面で一番良かったのはドラムのマルコで、スムーズかつ鮮やかなスティック回しを挟みつつ、パワーメタリックなタイトさに満ちた疾走感のあるドラミングを披露。今日観たドラムの中で、個人的には一番パワーを感じました。

 

最新作のオープニングチューン「J's Serenade」からスタートし、このまま過去の楽曲を交えながらライヴを展開する...と思いきや、前半に「Lifeblood」を終えた後、早々にストップ。

 

事前告知されていたのですが、今回は日本のライヴならではの試みとして、彼らの2ndアルバム『A Time Never Come』の完全再現を行うことになっているのです。

 

僕としてはこれについてはちょっと複雑でした。というのも、確かに「Legend」という名曲を有しているものの、アルバム自体にはそこまで強い思い入れみたいなものはなく、普通に新作を中心としたセットリストで良かったのに...という気持ちがあったんですよ。新作普通に良かったですし。せめて「Psycho Kid」は聴きたかったなぁ〜......

 

とはいえ、他の国では観られないスペシャルな体験なので、ありがたいという気持ちもある。イントロから続く「Legend」は、人気曲ということもあり、このライヴで一番といってもいいほどの盛り上がり。

 

この曲の最大のポイントである(と僕が思っている)、ラスサビに入る直前のキーボードソロの畳み掛けも、やや粗めながらもきっちりと聴け、ここにきてガッツリとテンションが上がりました。やはりこの曲の高揚感は素晴らしい。

 

...が、やはり最大のハイライトとなる曲が序盤で終わってしまったがために、その後は(ちょっと嫌な言い方になりますが)若干消化試合的な気持ちになってしまったのが実際のところ。

 

わかりやすく疾走するようなパートが少ないので、ライヴでガツンと盛り上がるっていうようなムードになりきれない感じでしたね。もちろん退屈なライヴ運びになるようなことはなく、演奏もヴォーカルも充分にクオリティーの高いものを提示してくれたんですけどね。

 

一度引っ込んだあと、一瞬で戻ってきた(時間が厳しかったのかも)アンコールにてプレイされた「Recall Of The Valkyrie」で、これまで少し落ち着いた空気をさらに沸かせるかのような疾走を繰り出し、ここで「Legend」以来となる高速ヘドバンができました。ラストが爽快だと、終わった時の気持ちよさがあっていいですね。

 

 

こうして3時間以上にわたるメロスピナイトは終了。EVP主催のライヴは、ボリュームが潤沢にあって嬉しいのですけど、やはり疲労感がハンパじゃないんですよね...。脚が棒のようだ。

 

手放しで絶賛できるSERENITYに対して、ちょっとアルバムに思い入れが足らなかったこともあり、少し落ち着いたテンションになったSECRET SPHEREではありましたが、クオリティーの高いメタルライヴであったことは疑いようがなく、非常に充実したアクトだったと思います。

 

これだけのライヴが観られるのに、こんな小さなライヴハウスに当日券が余裕で出るというのは、やはり歯がゆいものがありますね。SERENITYなんて初来日だから、もっと盛り上がっても良かったと思うなぁ。まあ、後ろの方にスペースが生まれたおかげで、すし詰め状態にならなかったのはありがたいっちゃありがたいですけど。