ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

1/20 BRAHMAN presents tantrism vol.10 ~STUDIO COAST LAST MATCH~『中央演舞』 at USEN STUDIO COAST

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東京近郊にお住まいの音楽ファンであれば、一度は訪れたことがあるであろう新木場STUDIO COAST(去年1月にUSEN STUDIO COASTと名前が変わりましたが、そこから1度も行く機会に恵まれなかったので、この名前にちっとも馴染みがない) 当然ながら僕も何度もお世話になったデカバコです。

 

初めて来たのが、大学入学のために関東圏に引っ越してからすぐのHawaiian6のツアーファイナル、その後もdustbox9mm Parabellum BulletDIR EN GREYのような国内バンドに、BULLET FOR MY VALENTINEHELLOWEENなどの海外バンドの来日まで観ました。

 

そんな思い出深い会場も、今年1月をもって閉館。なんとも寂しい。

 

そんなコーストでの最後をライヴを彩ってくれるのがBRAHMANとなりました。ツアー真っ最中の段階で発表された『中央演舞』と名付けられたライヴ。ゲストアクトにハナレグミを迎えたツーマンです。

 

このライヴイベント名を聞いた段階で「センターステージになるんだろうな」と予想していましたが、フロアに入ってみると、中央に四角いステージがどどんと鎮座している。本来のステージには椅子が並べられていて、座った上での鑑賞ができる、いわば二階席のようなポジションになっていました。

 

ステージ正面のところはすでに結構な人だかりだったので、違う角度から観ようとフロアをうろついていると、ステージのちょうど背面側はかなり空いていることが確認できる。ドラムセットの左後ろのポジションで、かなりステージから近い位置で観ることができそう。

 

ライヴを背後から、それもこんな間近で観られる機会なんて今後そうそうあったもんじゃないぞ!と、後方スペースへと陣取る。僕の右横は通路になっており、ステージへと上がるメンバーを目と鼻の先で観られるという状況に、僕のミーハー心はピークになる(笑)

 

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会場の特徴である特大ミラーボールもこれで見納め

 

 

ハナレグミ

ゲストアクトであるハナレグミのステージからスタート。元SUPER BUTTER DOG(僕は未聴ですが、現レキシの池田さんも在籍していたファンクバンドらしい)のヴォーカルである永積タカシのソロプロジェクト。

 

ほっほっと奇妙にステージの階段を駆け上がり、アコギを背負ってステージ正面に位置取るのですが...

 

すでにBRAHMANの機材が組み終わっている状態だったので、ドラムセットとアンプの影に隠れて全っ然見えねえ。隙間からハットを被った後頭部と、背中がちょろっと見えるくらい。

 

もちろん歌を聴く事それ自体に影響があるわけではありませんが、表情もギタープレイも一切視認できない、それどころか全身見ることも叶わないという状況で「ライヴを堪能した」とは言い難いですよねえ... しかも基本的に弾き語りなので、ステージアクションを豊富にして、後ろのオーディエンスにもアピールするということがないだけに。

 

もちろんアコギ一本による素朴な歌声は聴いていて癒されるものがありましたけどね。時折ちょっとファンキーにテンポが速くなるパートでは、会場から手拍子も上がり「弾き語りって孤独なんですよ。手拍子嬉しいです」とコミュニケーションをとる場面もありました。

 

ただやっぱり基本的にはじっくりゆっくりと聴き入るタイプのアーティストで、スタンディングのライヴで観たい(聴きたい)音楽とはちょっと違う感じでしたかね。それこそこないだ行った中野サンプラザとか、Billboard Live TOKYOとかの方がマッチすると思いました。

 

そんなステージが続く中での後半、せっかくだからBRAHMANのKOHKI君とセッションしてみようか、と言い出すとステージ後方の通路からKOHKIさんがゆっくりと歩を進めてくる。TOSHI-LOWさんとは偶然にもお会いしたことがあり、かつライヴでもオーディエンスを踏みつけながら進んでくるため、かなり近くで見たことはありますが、他のメンバーはこれが初。

 

これまでアコギ一本だった音が、ブルースロックテイストのエレキの音と混ざって厚みが生まれる。そこまで複雑なプレイはせず、ホントにセッションレベルの演奏のみに終始していましたが、これまで弾き語り一辺倒だったライヴ内容に色味が増えた感じ。

 

そしてKOHKIさんだけに飽き足らず、MAKOTOさんとRONZIさんもステージに上がり、新生BRAHMAN「ブラリグミ」となってバンドサウンドありのスタイル、さらに遅れてTOSHI-LOWさんも登場し(すぐ右横に佇んでいて思いっきり萎縮してしまった)、より厚みのあるサウンドが展開され、ここにきて熱量が最初のピークを迎えた印象でした。

 

そしてその編成は最後まで解かれることがないまま、BRAHMANハナレグミのコラボ楽曲である「ナミノウタゲ」、そしてツインヴォーカル体制のまま「空谷の跫音」を披露して、ハナレグミとしてのステージは終了。アウトロのドラムが続く中、大きな拍手とともに真横の通路から去って行きました。そしてBRAHMANのメンバーはそのままステージに残り続け......

 

 

BRAHMAN

そのまま流れが途切れることなく、SEであるブラジリア民謡が流れる。そしてステージを囲うように配置されていたパイロからが火が吹き出し、スモークがステージ上に焚かれるという演出が。

 

最初にこのステージを見た時から「周りにあるのパイロっぽいな〜」とは思っていましたが、まさかこんな近い距離からブワッと吹き上がるとはちょっと驚き。もちろん火柱が立ち上がるほどのものは危ないのでできませんが、なんかRPGに出てくる神殿のような趣が館内中を立ち込める。

 

そして民族音楽風のギターフレーズが切り込まれると、何度も点滅を繰り返す照明に照らされて「虚空ヲ掴ム」からスタート。何気にこの曲を生で聴くのは、7年半前(もうそんなに経った!?)Tour 1080°以来かな。キメのフレーズに合わせて雷光のように光る照明の演出がカッコいい。

 

そこからはいつものBRAHMAN。近年のスローな楽曲主体のものではなく(さすがに「SEE OFF」や「BEYOND THE MOUNTAIN」のような定番はなかったが)、久方ぶりに聴けた「賽の河原」「BASIS」「Speculation」「AFTER-SENSATION」といった、オーディエンスが肉弾戦を繰り広げるハード&シリアスなナンバーを次々と投下。ベースのMAKOTOさんは、いつもの暴れっぷりを見せるに飽き足らず、ステージ後方の階段を下りて、通路上で(つまり僕の目の前で!)頭と足を振り乱しながら大迫力のプレイを続ける。

 

ただステージ自体はかなり小さめで、自由に動き回れる範囲はそれほど広くないために、MAKOTOさんが足踏み外して落ちちゃうんじゃないかと少しハラハラしてしましたが、とりあえず事故りはしなかったので一安心。

 

ドラムセットの後ろという、本来であれば関係者くらいでしか観ることのできない視点だったので、普段のライヴでは決して味わえない光景でした。何せRONZIさんのバスドラムの動きがしっかりと視認でき、かつKOHKIさんとMAKOTOさんがそれぞれRONZIさんにアイコンタクトを取る様子まで確認できる。これはセンターステージだからこそ。

 

そして個人的ハイライトは、今まで聴く機会に恵まれなかった「HIGH COMPASSION」が聴けたことですね。この曲はまだBRAHMAN聴き始めの頃は「終始淡々としてメロディーもわかりにくい曲」として、さほど注目度が高くなかったんですが、聴いていくうちにその怪しく呪術的、不可思議な中毒性にどんどんハマっていったクチです。赤と緑が交錯する照明がまた、この曲の怪しさとマッチしていました。

 

ライヴの終盤、BRAHMANの爆発力が活きた「ANSWER FOR•••」の素晴らしさはもちろん、息を呑んだのは「満月の夕」。オープニングで灯ったパイロの火が再び現れ、その他の光は完全に消滅。温かく照らされた光に囲まれ、ゆっくりと歌い上げられる旋律に意識はうっとりと取り込まれていく。

 

センターステージのため、以前までの垂れ幕の演出はできませんでしたが、クライマックスに披露された「Slow Dance」「旅路の果て」の二連打はもちろん素晴らしい。緊迫感ある疾走に魂を熱く揺さぶられ、会場の熱量がピークに達した後、その余韻をゆっくりと継承するように聴かせる構成が良いんですよ。

 

最後に披露されたのは、先日のZepp Tokyoの最終公演でもやった(行きたかった...)真善美」。Zeppでもコーストでも、自分たちが最後に立つ日の最後のナンバーに"さあ 幕が開くとは 終わりが来ることだ"というフレーズを持つこの曲を持ってきたことに意味を感じずにはいられない。

 

演奏を終え、メンバーが一人一人黙って退場していく中、一人取り残されたTOSHI-LOWさんが「スタジオコーストは無くなります。Zepp Tokyoも無くなって、AXやBLITZはとっくの昔に無くなって、俺たちが愛する小さいライヴハウスもどんどん無くなって...」と今の実情を口にしつつ、「一度きりの意味を、今日の帰り道、あなた方が問う番だ」と最後の言葉を口にしてマイクを落とす。

 

ハナレグミのライヴが始まってからおよそ2時間半、ほぼノンストップで繰り広げられた人生最後スタジオコースト。弾き語りによる柔らかな空気感から、一転してスリリングな時間が継続され、片時も目を離すことができない怒涛の展開。

 

普通であればこんな長時間動かず立ちっぱなしという環境は辛くなるものなんですが、終演までそれを一切感じなかったのは、やはり凄まじいライヴアクトを観た際に出る脳内麻薬のようなものなのか。

 

関東に越してきてから9年ほど経ち、何度も素晴らしいライヴを体感させてくれたコーストとも、これでお別れ。名残惜しいですが、最後の最後にここまで熾烈なライヴを観ることで締めることができたのは、有終の美と言ってもいいのかなと思いました。

 

正直いうと、新木場はコーストに行く以外の目的でいくことはまず無く、あったとしてもお台場とか豊洲へ行く際の中継地点くらいしかなくなってしまうのかな〜と。まあ、オフィスと倉庫くらいしか駅周辺にないですからね...

 

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観覧車を望む橋を渡るのも、こうやってライヴ終わりの遅い時間にホームで立つのも、この日が最後かもしれない。ラストにやった「真善美」の歌詞とメロディーを反芻しながらこの地を後にしました。