- リフからメロまでダスト節満載
- 後半のメロディアスな楽曲の畳み掛け
- ここ近作の中でメロディーの充実度は最高峰
国内のメロディックシーンを牽引し続け、気づけばもはやベテランの域に達しつつある、3ピースメロディックハードコアバンド・dustboxの最新作。前作『The Awakening』より3年ぶりとなります。
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本作収録曲はアルバムのリリースに先立って、3つの限定シングルに分けて販売されるという、だいぶ変則的な発表をされていました。僕は単一のアルバムとして聴きたかったので、特にシングルには手を出しませんでしたが。
そんな先行シングル収録の楽曲14曲に、過去曲「Still Believing」「Pity Party」「Jupiter」のアコースティックバージョン3曲をプラスした全17曲。収録時間46分と、彼らのアルバムとしてはなかなかのボリュームを誇る。
インディーズにドロップアウトしてから、基本的に哀愁美メロ疾走メロコアという軸はまったくブレてない彼ら。本作も当然のごとく、dustboxらしさ満載の軽快なメロコアがたっぷり収められています。
ヘヴィさはないけどザクザクした刻みが気持ちいいリフに、メロディーの叙情性をさらに強調させるバッキングコーラス、完全に明るくなり切れない絶妙な哀愁加減の歌メロと、ダスト流メロコアの方法論はどの曲にも息づいている。
M4「Hole」の叙情メロコアで進み行き、サビ前でボサノヴァ風というか、ラウンジミュージック的な展開になるところとかは、いかにもdustboxって感じ。M5「Wake The Sleeping Sun Up」なんかは、出だしのリフからラストの半音上がるサビに至るまで、全てがダスト節と言えるほどで、初めて聴いた気がしない(笑)
前半から良い感じに仕上がった楽曲が続きますが、特に素晴らしいのは後半。2004年のミニアルバム『triangle』収録の再録バージョンM8「Pieces Of My Heart」で、しっとりとした空気感に包まれた後の、M9「My Life Without You」以降の流れ。これが特に良い!
M9はdustboxというバンドに期待される、切なく美しいメロディーがギュッと凝縮された、文句なしのキラーチューン。バッキングの美麗コーラス、ラスサビ直前のアコギパート、そこからラストへ突っ走るサビの猛烈な切なさ、これこそdustboxに求める哀愁叙情メロコア!
疾走感を抑えながらも、強烈なフックを持ったヴォーカルを聴かせるM10「Sparks」、クリーンギターを主軸としたバラードながら、後半の狂おしいほどの哀感あるサビで疾走するM11「Summer To Remember」と立て続き、ここへきて一気に哀愁のギアが上がったのかと思わされます。「こういうメロを聴きたかった!」というニーズにバッチリ応えてくれる流れです。
M12「Smash The Crown」は、彼らがアルバム中1曲は入れてくるハードコアテイストの強い楽曲。従来の楽曲通り、音作りはジャパコアのようなバキバキの歪みではなく軽快なメロコアのそれで、サビはメロディックに決めてくれる。
そしてアルバムのクライマックスを彩るM13「Unnamed Song」は、美メロメロコアの決定版と言うべき芳醇な泣きを湛えた曲。この胸締め付ける珠玉のグッドメロディー、これこそdustboxの真骨頂!dustboxの音!
唯一欠点を挙げるとしたら(欠点というほどでもないが)、本編ラストのM14「Strawberry」が弾き語りによる短い曲で、その後前述した既存曲のアコギアレンジが3曲続くため、最後の最後になってテンションが落ちる構成になっていることくらいか。まあラスト3曲はあくまでボートラ的存在なので、さしたる問題ではない。
疾走曲にも、ミドル曲にも、さらにはアコギの弾き語りにまで、総じてdustboxらしい哀愁美旋律が支配的。彼らの強みであるメロディーセンスが遺憾無く発揮された良作だと言えますね。
現在のドラムのYU-KIさんが加入してからの音源(2016年の『skyrocket』以降)の中では、メロディーの平均点は一番と言ってもよく、とにかくdustboxらしい曲がたっぷり。まだまだ彼らの優れたメロディーメーカーぶりが衰えないことの証明になり得る強力盤です。
個人的に本作は
"近作の中で最も叙情美メロディーが溢れた一作。歌から演奏まで、ひたすら「dustboxらしい音」が目白押し"
という感じです。