2025年のライヴ初め!なんと早速大型フェスですよ。
音楽雑誌rockin'onが正月早々に開催する洋楽フェス・rockin'on sonic。直前に同会場で行われていた、COUNTDOWN JAPANの設備をそのまま使用したフェスで、2日間開催のうち、僕が行ったのは2日目。翌日が仕事という日程ではありますが、ケツの時間が早めであるのが救いですね。
日本の音楽シーンでは洋楽離れがどんどん進んでて、かつ今回出演する面子はキャリアの長いバンドも多い。必然的にターゲットの年齢層は高くなるはずですが、この時期その年代の人たちは、帰省やら家族サービスやらで自由に動けない可能性も高い。そんな訳で、当初は客入りは厳しいんじゃないかと思ってました。
しかし蓋を開けてみれば、2日間通し券はソールドアウトしたとのこと。やっぱりサマソニやフジロックにおいても国内アーティストを多めに起用せざるを得ない現状、ピュアな洋楽フェスに飢えていた人は結構多かったということなのでしょうか。
僕の好みであるパンク・ハードコア/メタル関連のバンドは皆無なため(エモもハードコアの一貫と言えなくもないかもですけど)、行くかどうかはちょっと悩んだんですけどね。weezerは普通に好きなバンドだし、DEATH CAB FOR CUTIEのような「ちょっと興味あるな」と思わせるバンドもいて、さらに未知との遭遇も期待できるとあって、2日目のチケットをゲットしてきましたよ。
11時半ごろに海浜幕張に到着すると、サマソニのように人がごった返すということはないものの、チョロチョロと本フェス目当てと思しき人を見かける。オジサンオバサンばっかりなのではと思ってましたが、意外にも僕と同世代くらいから、もうちょっと若いと思しき人も目につきましたね。少なくともLOUD PARKより平均年齢は低いはず。
サマソニとかもそうですけど、やっぱこういうフェスのお祭り感はワクワクしますね~。ちょうど時間はお昼時なので、昼飯を見定めるために屋台前をウロウロ。こういう時に「フェスに来てる!」と実感できます。
しかし...予想はしてましたが、フェス飯も値上がりしたもんだな...。ステーキ丼なんてちょっとだけの量で1500円とか、牛串1本1000円とか、インフレ具合がかなり進んでいることがよくわかる。みんな苦労してるんだろうけどさ...
とりあえずサッとかきこめる丼ものにガッツいて、最初のアクトであるMONOBLOCを観にCOSMO STAGEへと移動しました。
開演に先立って、主催のrockin'on代表の山崎洋一郎さん(僕は全然知らなかったのですが、渋谷さんはロッキング・オン・グループの社長から会長に上がったらしい)が登壇して軽く挨拶。会場でかかっているBGM(RED HOT CHILI PEPPERSとかRISE AGAINSTとか)は、自分が20時間分くらいまとめたプレイリストであることや、ROCK IN JAPANの前説と比べて、この日は客とのジェネレーションギャップを感じないことを話していました。
この手のフェスの挨拶にありがちな「場所取りしちゃダメだよ!」「モッシュ・ダイブは禁止だよ!」みたいな言いつけが一切なかったのは、客層的にマナーの悪い人が少ないと判断したからなのかな。
MONOBLOC
当日まで存在すら知らないようなバンドでした。ニューヨーク出身の5人組で、2023年始動というかなりの若手っぽい。実際メンバーの見た目はかなり若く、両端のギタリストとベーシストなんて、服装も相まって学生みたいだったし。
カラッとした雰囲気のギターロック/オルタナで、キャッチーさや叙情的なムードはほとんどない。バンドサウンドに棘があったりすることもないので、場内のリアクションはそこまで派手にはなりませんでした。
フェスの一発目の若手アクトとしては、そのサウンドはだいぶ大人びていて(僕がそういうサウンドのライヴに慣れてないからそう感じるだけかも)、メロディーの淡白さも相まって地味な印象は強いかも。ヴォーカルはそれなりにアクションしてはいるものの、MCもかなり控えめですし。
ただ、どっしりと仁王立ちするように構えて演奏する、ドレッドヘアの女性ギタリストは存在感があってカッコよかったですね。音は歪ませない軽いものだったけど。
THE JESUS AND MARY CHAIN
タイムテーブルの重なりがなく、すぐさま次アクトが開始されるため、MONOBLOCが終わったらそそくさとGALAXY STAGEへと移動。こちらも僕は全然知識がないまま観ることになりました。かなりキャリアは長いバンドのようですが。
ノイジーなポストパンク、シューゲイザーをプレイするバンドということで、先ほどのMONOBLOCに比べると演奏は刺激的。時折ドラムの連打が速くなるパートもある。
ただやっぱり、メタルだのメロコアだのにすっかり慣れてしまった耳では、メロディーが地味でフックに乏しく、気だる~い雰囲気も強いので、嫌な言い方になるけど辛気臭い印象を受けてしまうな...。このフェスのターゲット層にとっては、変にキャッチーになってない分、ツボにハマるのかもしれないけど。
ギターがかなりザラザラしたノイズを出しているので、前方で爆音で浴びた人は鼓膜大丈夫なのかな?とちょっと心配になりました。
DIGITALISM
ドイツのエレクトロポップデュオ。これまで少々地味に感じる音が続いたので、ここで激しめのEDMみたいな音が聴ければ、テンションもいい感じに上がるのでは?と思って、フロアの真ん中らへんに位置取り。
まず印象に残ったのが二人の編成の組み方。ステージ中央にターンテーブルなどの機材がある台があり、そこに2人が向かい合う形で演奏するという、だいぶ変則的なパフォーマンスだなと。
ヴォーカルが「ブチ上げろ!」と煽るなど、前2組と比べればかなりアクティブなステージング。ノリやすい反復のリズムもあり、フロアからはしきりに手が上がる。
僕の好みの音楽性とは言い難いんですが、やはりシンプルに盛り上がれるリズムですし、ギラギラド派手な照明効果も加わることで、結構楽しく観られましたね。僕のすぐ前の女性が、不思議な踊りを繰り広げててそっちに目が行ってしまう瞬間も多かったけど(笑)
MANIC STREET PREACHERS
その後すぐにGALAXY STAGEへと移動。80年代から活動している大ベテラン、MANIC STREET PREACHERSのステージ。
バンド形態の前2組が、少々気だるい雰囲気の楽曲が強かったのに対し、このバンドは溌剌としたエナジー溢れるサウンド。ようやくイキの良いバンドサウンドが聴けた!と、それだけでなんだか嬉しくなってしまった。
ヴォーカルのジェームス・ディーン・ブラッドフィールドなんて、もう50代後半に差し掛かるような歳らしいですが、歌声のキレや声量はバッチリ。
歌メロもそこまで叙情的なフックが満載というほどではないものの、適度にポップなムードを持っていて、歯切れの良いサウンドと歌も相まって、気持ちよく体を揺らすことができる。比較的わかりやすい音だからか、場内の雰囲気もいい感じにあったまってる印象でした。個人的にはここにきて最初に「ロックのライヴってこうだよね」って思えた感じです。
DEATH CAB FOR CUTIE
GALAXY STAGEで出番を待っているとき、僕のすぐ隣の20代と思しき女性ファンたちが、モニターに映されたバンドのアー写を嬉々としてスマホで撮影しているのを見てちょっとビックリ。洋楽ロック離れが進んでいる日本で、この手のバンドに若い女性ファンがついてるとは。
そしていざバンドが登場して演奏が始まったら、そんなファンがついてる事も十分に納得。だってカッコいいもん。
メンバー全員デブったりせず、服装もピシッとしてて、さらに変に若作りすることもなく円熟味を醸し出してる。いわゆる「イケオジ」ってやつです。飾らない中にも男の色気みたいなものがあって、こりゃ女性ファンもつくよ。
楽曲はポップなインディーロック・オルタナロックで激しさはないんですが、メンバーのアクションはなかなか大きく、ただ演奏するだけではないアグレッシヴな躍動が見て取れる。ちゃんとロックしててカッコいい。
ただまあこのバンドについては、ロックとしての勢いよりも落ち着いたエモのメロディーが魅力ですね。後半にヴォーカルのベン・ギバードが弾き語りのスタイルで披露した「I Will Follow You Into The Dark」は、エレアコと歌のみのアレンジだからこそ、じっくり染みわたるように哀愁が効いてきました。
ラストは"パラッパラッパッパー♪"のフレーズがやたら頭に残る「Soul Meets Body」。てっきり大合唱になるのかと思ってたけど、そこまで大きな声量にはならなかったのがちょっと拍子抜け。みんなもっと歌えばいいのに。
weezer
COSMO STAGEのトリもちょっと観ようかとも思ってたんですが、本日一番の目当てであるweezerが良い位置で観られないのはもったいないなと思い、そのままGALAXY STAGEで待機することに。そこそこ前方の中央付近に陣取ることができ、ステージも非常に見やすい。
前の方にいたせいでどのくらい人が集まったのかはわかりにくかったのですが、ざっと見渡した感じだとかなり盛況だったように思います。やはりこのバンドの泣きメロはみんなに響きやすいんでしょうね。
暗転するとまずバックのスクリーンに宇宙飛行士の姿をしたメンバーと、スペースシャトル発射のニュースを伝えるキャスターの映像が流れだす。ヘッドライナーらしくちゃんと演出がありましたが、なんかキャスターの声音ズレしてませんでした?
その後メンバーがステージに登場し、まずは4人が並んでドラム台に立ち大声援を浴びる。こうやってしっかりと視認できると、The Blue Albumの冴えなさすぎる姿から、貫禄めいたものがちゃんと感じられるようになったんだな、と思わずにはいられませんでした。
ロケットが空を突き抜けていくような映像と共に演奏が開始されると、weezer特有のポップで抜群に叙情的なメロディーが染み渡ってくる。先ほどのDEATH CAB FOR CUTIEも、エモ的な湿った叙情性が武器になっていましたが、やはりこのバンドのそれは別格と言わざるを得ません。
フロントマンのリヴァース・クオモが、しきりに前の方で出てきては、ステッカーが大量に貼られたギターを切なく泣かせる。ただこの泣きも、たんに弱々しくメソメソ泣いた感じではなく、なかなかしっかりリードギターとして太い旋律になっているだけあり、このバンドがHR/HMから影響を受けているというのも、プレイから何となく伝わるようでした。
ただ、機材トラブルか何かでしばらく音が止まった時間があった時は、とっっっても情けない声で「ゴメンなさ〜い」と言って、場内から笑いが起きたところもあり、やはりロックバンドとしての骨太なカッコよさみたいなものは、このバンドには無縁なんだなぁと思いましたね(笑)
ギターが最初に一音を鳴らしただけで歓声が上がった「Island In The Sun」で一つのピークを迎えましたが、今回のライヴのメインは何と言っても後半。月に降り立った宇宙飛行士のように、ステージに青のフラッグを立てて、リリース30周年を迎えたThe Blue Albumの楽曲を演奏するパート。
個人的にweezerの楽曲でトップクラスに好きな「Say It Ain't So」はまさにハイライトと呼ぶに相応しい時間となり、サビにおける曲タイトルの合唱は、演奏もピタッと止まってオーディエンスの歌声のみが響く。間違いなく本日中もっとも会場が一体となった瞬間でした。
ラストの「Only In Dreams」はこのフェスの締めくくりとして、長く長く続いていくアウトロをエモーショナルに響き渡らせてのクライマックスへ。ここでグワっと盛り上がるアクションとかを入れれば会場の熱量はさらに上がると思いますが、そこは肩肘張らずに淡々と演奏に終始するのがweezerっぽさなのかも。
特にアンコールとか特別な演出とかがある訳でもなく、「Only In Dreams」後は会場も明るくなり本日のアクトは全て終了。2日間の締めくくりとしてはややあっさりめですが、出演者と同じく、あんまりドラマチックにしすぎない感じなんですかね。
これまで参加してきたロックフェスよりも、ガッツリ興味あるバンド目当てにするという感じは薄く(しいて言えばweezerですが)、フェスの雰囲気や洋楽ロックの味わいを体感するような楽しみを得ました。
前述したように結構お客さんの数は多かったし、かといってごった返すことはないため快適で、良い形で締めることができたフェスだったのではないかと思います。もし来年以降も開催されるというなら、正月休みの大きなイベントとしてちょいちょい気にかけることにはなりそうです。