- 80年代型ピュアメタルの継承作
- 音だけでなくジャケットから歌詞に至るまでメタル一直線
- メタル愛と熱量はピカイチ
近年活躍している日本の若手メタルバンドといえば、CRYSTAL LAKEやGraupelのようなモダンメタルコア、THOUSAND EYES(メンバーは必ずしも若手ではありませんが)やGYZEのようなメロディックデスなど、エクストリームなバンドばかりな気がします。
2000年代にはまだクサメタルブームによりGALNERYUSや陰陽座以外にも、メロディックメタルバンドはそこそこ勢いがあったようですが、ここ最近ではかなりアンダーグラウンドというか、狭小なシーン以外で注目を集めることはほぼ無いような状態。Unlucky Morpheusとかはまだまだ頑張っている感じですけど。
さらに正統派ヘヴィメタルというジャンルで言えば、LOUDNESSやANTHEMといった80年代から活動しているベテランの有名どころ以外ではほぼ絶滅状態というか...。僕が無知なだけかもしれませんが、勢いのある若手バンドはほぼほぼ見かけない。BLACK SWEETとか?
まあそんなエクストリーム特化な現代のジャパニーズメタルシーンですが、こんなご時世にまさかこれほどまでのピュアメタル特化型アルバムが出てくるとは思いませんでした。
以前渋谷メタル会でも剛直なメタル愛が感じられるパフォーマンスを見せてくれた、正統派/スラッシュメタルバンド・HELL FREEZES OVERの1stフルアルバム。
show-hitorigoto.hatenablog.com
手書きのジャケットに、裏ジャケのメンバー写真、ブックレットに挟まったダサめの和訳が書かれた紙に、ほぼ銀一色の盤面まで、徹底的に80年代の洋楽ヘヴィメタルを踏襲したデザイン。ここからすでにすさまじいメタル愛を感じます。
やっている音楽自体もまごうことなき純度100%のヘヴィメタル。音作りとしてはスラッシュメタルっぽいんですけど、ヴォーカルはハイトーンを用いてしっかりと歌心あるヴォーカルを披露していて、吐き捨て歌唱ではない。正統派メタルとしてのフィーリングも色濃くある。
何もかもデジタルの時代にあえてアナログレコーディングにこだわったり、MVをフィルムカメラで撮ったりと、とにかく求道的に古き良きヘヴィメタルを突き詰めているスタンス。この人たち、時代に迎合して売れてやると微塵も思ってないだろうな。
そのアナログレコーディングのためなのか、他のメタルバンドの音源と比べるとどうしても軽く感じるというか、隙間の多い音になってしまって音圧的に物足りなく感じるのは致し方なしかなあ。近代的な音に慣れた耳だと、ややB級っぽく聴こえてしまう。
しかしそんな点を補ってあまりあるほどの熱量がこのアルバムにはあります。80年代のヘヴィメタルへの限りないリスペクトと愛、若さゆえのガムシャラな勢い、溌溂としたエナジーがどの曲からでも感じ取ることができます。
個人的な好みからすると、もっとタイトな音作りの方が好きだし、メロディーはキャッチーな方がいいし、リフはもっとパワフルにしてほしい。しかし聴いてるうちにそんなことはもはやどうでもよくなる。潔いピュアメタルの愛に胸を打たれるしかなくなる。そんなメタルド真ん中のスタイルを本作は貫いているのです。
ただラストのインストM10「Eternal March Of Valor」は、充分カッコいいナンバーなんですが、もう少し短くしてくれた方が良かったかな?
個人的に本作は
"80年代の正統派ヘヴィ/スラッシュメタルの空気感を今に伝える、直球のメタル愛が貫かれた一枚"
という感じです。