ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

UNLEASH THE ARCHERS 『Abyss』

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  • スペーシーで近未来的アレンジのメロスピ
  • 伸びやかなハイトーンと流麗な演奏の掛け合い
  • 馬力よりもキャッチーさとしなやかさ重視

 

ここ数年でよく名前を目にするようになったけど、実は2007年結成というそこそこのキャリアを持つ、カナダのメロディックパワーメタルバンド・UNLEASH THE ARCHERSの5枚目のフルアルバム。

 

前作『Apex』リリース時からすでにいろんなところで名前は出ていましたが、僕が彼らの音源に触れるのはこれが初めて。先行でMVが公開されていた楽曲の良さ、リスナーの評判がなかなか高く、興味をそそられました。

 

結論から言うと、充分に買って正解の良作でした。演奏とヴォーカル、メロディー一つ一つのクオリティーが押しなべて高く、カッコよくも聴きやすい楽曲に溢れています。

 

大きな武器はヴォーカルですね。紅一点のブリトニー・スレイズの伸びやかで、かつ4オクターブもの声域を持つというハイトーンヴォイスがまず耳を引く。中音域でしっとりと歌う場面にも説得力があり、このヴォーカルのおかげで楽曲のクオリティーを底上げしているのは間違いないでしょう。

 

なんでも彼女、幼いころから地元の合唱団で歌を歌っていたが、8歳の頃にMEGADETHの『Countdown To Extinction』にハマり、高校卒業時にはJudas Priest、IRON MAIDEN、QUEENSRYCHEDIOなどを聴くガチガチのメタルヘッズになったんだとか。何が彼女をそうさせたのでしょうか。

 

演奏面に関しても安定しており、メロディアスなフックを持ちながら粒のそろった速弾きを披露するギターがよく目立つ。あまりヘヴィな音圧を出しているわけではないため、全体的に少し音作りの迫力が不足する気もしますが、まあバンドのスタイル的にヘヴィさ重視ではないため、さして気にする必要はないでしょう。

 

あとスコット・ブキャナンによるドラミングがかなりアグレッシヴなのも聴きどころ。ここぞっていうところのフィルインで流れるような連打を決めるドラムプレイが魅力的。

 

楽曲はどれも秀曲ぞろいで、ジャケットやMVから想起されるような近未来的というか、スペーシーな雰囲気をデジタルシンセサイザーによって醸し出し、非常にキャッチーなメロディーを歌い上げるヴォーカルとパワーメタルサウンドが重なる。この近代的でスピーディーな音世界はGLORYHAMMERにも通じるところがありますね。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

本作の方向性を100%わかりやすく提示してくるM2「Abyss」から、エモ/オルタナロックのような出だしからいきなりブラストビートに突入するも、パワーは控えめでどちらかといえばキャッチーさ重視なM4「Legacy」、キャッチーなリードギターが鳴り響く中、やたら邪悪なデスヴォイス(昔はデスメタルやってたんだとか)が絡みつくM5「Return To Me」、最も叙情的でメロディックなサビを持つパワーバラードM9「Carry The Flame」など、メロディックメタルとして秀でた楽曲で占められている。

 

中でもM6「Soulbound」~M7「Faster Than Light」というアグレッシヴな二連打が素晴らしく良い。クールかつキャッチーなリフとソロ、そしてサビを持つ前者に、本作中最もメロスピ然としたスピードチューンの後者。こりゃあ良曲揃いの本作の中でもひと際輝くキラーチューンですよ。

 

これは予想以上でした。2020年のメロパワ/メロスピ系アルバムの中ではトップクラスの力作といっても差し支えないのでは?思わず頭を振りたくなるゴリっとしたパワーは控えめですが、メロディーのとっつきやすさ、ヴォーカルの上手さ、演奏のタイトさが揃った見事な一枚です。

 

 

個人的に本作は

"高クオリティーなヴォーカルと演奏に近未来的なアレンジが加わった、新世代メロスピの一等星"

という感じです。

 


UNLEASH THE ARCHERS - Abyss (Official Video) | Napalm Records

 


UNLEASH THE ARCHERS - Faster Than Light (Official Video) | Napalm Records