イタリア出身ながら、HELLOWEENが確立したジャーマンメタルのスタイルを今に継承するバンドとして、ここ数作優れた作品を発表しているSKELETOONの最新フルアルバム。
前作『Nemesis』から1年ほどしか経っておらず、かなりのハイペースっぷりを見せていますが、やはりこれはTRIVIUMと同様ライヴ活動ができない状況を逆手に取って、音源の制作に時間を割くことができた故でしょうか。
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本作はタイトルとジャケット、及び右下に書かれている"...WHERE THEY'RE GOING, THEY DON'T NEED ROADS..."というフレーズから分かる通り、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をテーマとしたコンセプト作。僕ももちろん観たことはあるんですが、最後に観てから何年も経ってるんで、内容は断片的にしか覚えてないかも...
コンセプト作とは言っても、内容的には従来の彼ららしいポジティヴなエナジーに満ちたメロディックスピードメタルで、特に各楽曲の連続性なども感じられないので、普通のフルレンスとして聴くことが可能です。敷居の高さは全くなし。
しかし、前作、前々作と優れた作品を出してきた彼らですが、本作もその例に漏れず非常に完成度の高いアルバムに仕上がっています。ジャーマンメタルやメロディックスピードメタルのファンが望むものがしっかりと、高い次元で提供されている。
まず静かなイントロからオープニングを飾るM2「Holding On」、これぞまさしくメロディックスピードメタル!こういうメロディーをメロスピで聴きたかったんだ!と叫びたくなる爽快な名曲。ほのかな哀愁を忍ばせたメロディーと共に、高く舞い上がるようなハイトーンとリードギター、透明感あるシンセもバックで効率的に働き、壮大なスケールを描くことに成功していますね!
この曲以上の高揚感を与えてくれる瞬間こそなかったものの、後続の楽曲についても、キャッチーなメロディーが一切損なわれず潤沢に存在しており、この馴染みやすいフックに満ちたメロディーセンスに唸らされるばかり。
M2から少し"陽"の雰囲気を強め、相変わらずの疾走感で突っ走るメロスピの王道M3「Outatime」、ポップさと哀愁の共存した歌メロのセンスを遺憾なく発揮したバラードM6「Enchant Me」、雰囲気を強めたイントロからの攻撃的リフ、及びシンガロングを誘発する爆発力のあるサビで一層勢いづくM7「We Don't Need Roads (The Great Scott Madness)」、メロディー・スピード・ハイトーンの三拍子全て揃ったこれぞメロスピ!なナンバーM9「The 4th Dimensional Legacy」と、頭からラストまでテンションが落ちない構成が素晴らしいです。
クライマックスを飾るM10「Eastwood Ravine」は、前半はポジティヴメロスピの王道スタイルで突っ走るも、途中急にブレイクを挟んで、シンセによるシリアスなメロディーを聴かせるアップテンポなパートへと移行し、クワイアっぽいコーラスで盛り上げた後に、開けたようなポップさでラストを彩る7分以上の大作。
最後に収録されているM11「Johnny B. Goode」は、チャック・ベリーの有名曲のカバーで、まあバック・トゥ・ザ・フューチャーをコンセプトにした作品なら、この曲をやらない手はないでしょうね。普通にポップなメロディックメタルとして楽しめるアレンジです。
いわゆる「メロスピ」「メロパワ」と呼ばれる音楽を愛する人ならきっと満足がいくであろう、キャッチー&スピーディーな要素がてんこ盛りで、メロスパーならマストでしょう。HELLOWEEN直系のスタンダードなメロスピを、今の時代最もクオリティー高くプレイしてくれるバンドは彼らなのではないか、という考えがいよいよ現実味を帯びてくる快作でした。
個人的に本作は
"明るくキャッチーに疾走するメロスピの王道を外さない爽快感マックスの一作。メロディーの充実ぶりが極めて秀逸"
という感じです。