GALNERYUSとHELLOWEENが同日にアルバムを発表し、さらにその翌週には期待の新鋭ILLUSION FORCEが1stフルアルバムを出すなど、メロスピ界隈が盛り上がっているようなので(気のせいかもしれんが)、このタイミングで我が国の華麗なるメロスピアルバムを取り上げてみます。
ちなみに前回の記事がSUNRISEで、今回のアルバムタイトルと被っているのは偶然です。この文章書いてる途中で気づきました。
活動のペースこそかなりスローではあるものの、結成は1993年にもなる、国産メロスピのベテランバンドであるAZRAEL。彼らが2003年に発表した3rdフルアルバムであり、彼らの代表曲とされている(ですよね?)キラーチューンが収録された作品。
同年にかのGALNERYUSがメジャーデビューを飾っており、彼らが現代メタルシーンのトップランナーにまで上り詰めたことを考えると、ちょっと気の毒な気がしなくもないですが、「GALNERYUSよりもこちらの方が良い」と言うリスナーがいても全然おかしくないほどのクオリティーを有していると思っています。
音楽性はHELLOWEENが作り上げた、ポジティヴなメロディックスピードメタルの型を踏襲するもの。クサいリードギターのメロディーに、天上まで届かんばかりのハイトーン、さらに透明感あふれるキーボードのバッキングをまぶした、まさにメロスピの王道中の王道。
このバンド最大の武器であり個性は、なんと言ってもヴォーカルでしょうね。AKIRAさんのハイトーンはまさに「天翔ける」と言う表現が相応しいような、高さと伸びの良さを完璧に兼ね備えたもので、初聴時は間違いなくそのインパクトのデカさに圧倒されるでしょうね...
ただ疾走曲だろうとミドル曲だろうと、隙さえあればガンガンにハイトーンを乱発しまくっている印象があり、聴き慣れてくると若干しつこいというか、クドさがあるのは事実です(笑)
またシャウト以外の通常の歌唱パートや、バックのコーラスとかはやや線が細く、その上結構なクセの強い歌い方をしているので、そこで好き嫌いは別れやすいかも。僕も正直あまり好みの声質とは言い難いな(特にM9「Promises」のサビ終わりの歌い方はかなりネットリとしている...)
アルバム全体としては、終始疾走しまくりというほどでもなく、結構ミドルチューンやキャッチーなキーボードと歌を生かした楽曲も多い。そういった比較的テンポを落とした曲も悪くはないのですが、そこまで面白みのある曲ではないのも弱点ですかね。かなりポップな歌メロで主導し、キーボードの旋律が目立ったM4「2 Many Heroes」とかはいい感じです。
とまあ、ちょっとネガティヴな意見を書き散らしてしまいましたが、そんな欠点を補える長所があるのです。本作の真髄はやはりなんと言っても疾走曲。ハイトーンが乱舞し、明るくクサく舞い上がるリードギター、劇的なメロディーを導入して駆け抜ける曲こそ彼らの真骨頂です。
ゴージャスなオーケストラルヒットをイントロに携えたM2「Gates Beyond Reality」に、よりシリアスで重厚なムードを持ったサビがドラマチックなM5「The Betrayers」、キラキラのキーボードとツインリードによる疾走、やりすぎなまでのハイトーンで強引に盛り上げるM11「Lay Down Your Guns」など、彼らの強みが100%活きた劇的メロスピはかなりの出来栄え。
そして本作を、と言うか彼らを語る上で外せない曲が、タイトルトラックのM1「Sunrise in the Dreamland」。極上のツインリードによるイントロから、メインメロディーを奏でるギターとハイトーンで幕を開け、サビ前のどこまでも伸びゆくシャウトでひと悶絶させた後、明朗でクッサい特大スケールのサビへ!日本が生んだポジティヴメロスピの一大名曲!海外の一線級のメロスピバンドでも、ここまでの爽快感を生み出す曲を書くのは難しいのではないでしょうか。
疾走曲とそうでない曲の完成度、スケール感の差は若干感じられるものの、日本人離れした本格的なヨーロピアン型メロスピとしてのクオリティーはさすがの一言。そして何より、バンドを代表する名曲を生み出せていることが何よりの美点です。国産バンドにありがちな歌謡的クサさも皆無なので、洋楽主義の人でも聴けるんじゃないですかね。
とりあえずメロスパーならばM1だけでも必聴でしょう。もうみんな聴いてるでしょうけど。
個人的に本作は
"明るくクサく、天まで届くメロディックスピードメタル。タイトルトラックは超名曲"
という感じです。