- クリスマス・キャロルをベースにしたコンセプト作
- シンフォニック&シアトリカル要素が大幅増量
- スピードは落ちたが劇的さは向上
元々はREINXEED名義で活動していた、Sabatonのギタリストであるトミー・ヨハンソン率いるメロディックスピードメタル・プロジェクト。MAJESTICA名義となってからの2枚目のフルアルバム。
Sabatonといえば本国スウェーデンやヨーロッパ諸国のメタルシーンにて多大な支持を得る人気バンド。今年はライヴ活動が満足にできなかったとはいえ、そんなバンドに身を置きながら、自身のプロジェクトにおいても早いスパンでフルアルバムを制作できるとは、彼の曲作りの才能は並大抵のものではないのでしょうね。
本作は前作で提示してみせたハイクオリティーなメロディックメタルの基本スタンスはそのままに、イギリスの小説『クリスマス・キャロル』を下敷きにしたコンセプトアルバムとして制作されています。
クリスマスという神秘的で煌びやかなイメージを再現するためなのか、前作に比べるとグッとシンフォニックメタル要素、シアトリカル要素が強くなっているのがわかります。さらにネタ元が小説ということもあってか、全体的にかなりファンタジック。もっとハッキリ言うとTwilight Forceに非常に近い雰囲気です。
かつてTwilight Forceにサポートでヴォーカルを担当した事もあるトミーのこと、こういうファンタジック路線のアルバムを作るにあたり、Twilight Forceからのインスピレーションは結構大きかったのかもしれません。M4「Ghost Of Christmas Past」なんてモロにそんな感じだし。
Twilight Forceほどのフックに満ちたキャッチーさはないのは少し残念ではありますが、ミュージカル風ともとれるクワイアやセリフ回し、バックのキラキラしたサウンドによって、より格式高いというか上品な雰囲気をまとっています。ポジティヴでクサいメロディーやシアトリカルなドラマ性を求める人には、かなりツボにハマるのではないでしょうか。
シリアスなクワイアがかなり目立つM6「Ghost Of Christmas Present」から、セリフによるやりとりが挟まれ最も演劇的な側面が目立ったM7「Ghost Of Christmas To Come」という劇的な曲の連打、クライマックスで壮大な大団円を迎えるM8「A Christmas Has Come」とくる展開が特に素晴らしい。ただエンディングのM9「A Majestic Christmas Theme」は、歌無しアウトロで5分はちょっと長いかも。
「クリスマス・キャロル」というコンセプトに基づいたため、少々ファンタジックすぎ、メルヘンチックすぎと感じる人も多いかもしれません。個人的にもよりストレートなメロスピを貫いていた前作の方が良いと感じたし、「Alliance Forever」のようなメロスピキラーが無いのも少し物足りなくはあります。
しかしそうはいっても、トミー・ヨハンソンの親しみやすいメロディーセンスはかなりのものであるのは事実。バックのアレンジの盛り上がりはかなり向上しているので、シンフォニックでシアトリカルなメタルが好きな人は聴いて損なし。
個人的に本作は
"Twilight Forceにも通じるファンタジック&シンフォニックメタル。メロスピとしての純度は減退したが、良質なメロディーと劇的なアレンジはバッチリ"
という感じです。
MAJESTICA - Ghost Of Marley (OFFICIAL MUSIC VIDEO)