先日のEvoken Fest 2019にて、結成して間もないバンドの初来日でありながら(メンバーのキャリアは結構なものがるとはいえ)非常に充実したライヴを観せてくれたメロディックスピードメタルバンドの1stフルアルバム。
ジャケットからしてすでに北欧の香りがプンプン漂っていますが、中身もジャケットに違わない冷気をまとっています。まさに北欧の旨味を濃縮した純メロスピと呼べる音楽性で、メロスパーなら飛びつくような音でしょう。
どこかネオクラっぽさも持ったキラキラのキーボードと、メロディックなリードとシュレッドを披露するギターがアンサンブルの中心となり、そこにハイトーンを積極的に交えるクリアなヴォーカルが乗る北欧メロスピの王道。
こういった超STRATOVARIUSタイプのキレイなメロスピよりかは、もっとパワーのある正統派、メロパワ、メタルコアといった音の方が好きになりやすい僕ですが、ポップで聴きやすく、かつほのかに哀愁を含んだメロディーのキャッチーさは抜群と言うほかなく、良質なメロディックメタルを愛する者としてはかなり心惹かれるものがあります。
M3「Follow Me」の劇的で力強く、そして切なさ全開のサビが疾走する様はかなりツボを刺激されるし、M7「Shape Your Reality」のハイトーンから始まり、ポジティヴなサビが飛翔し、ラストにウォーウォー言うコーラスで大団円を迎える展開はベタベタなんだけど悶えちゃう(笑)
他にもアルバムの幕開けを飾るに相応しいポジティヴさに満ちたメロスピナンバーM1「Welcome To Paradise」、イントロからアウトロまでネオクラ臭をプンプン放ち、ギターとキーボードのソロバトルも聴けるM9「Siren's Fall」、本作中特に性急な勢いを出しつつ、サビのスケールも特大なM12「If Angels Are Real」など、とにかく疾走曲の気持ちよさが素晴らしいんですよね。
スピードチューン以外にもタイトル通りのリズミカルなキャッチーさが魅力のM4「The Rhythm Of Life」、LAメタルバンドか?と思ってしまう出だしから、フックのあるサビに繋がるM8「Everyone's A Star」、正統派メタル風のギターリフが特徴的なM10「Bring Down The Mountain」など、疾走感に頼らない楽曲の個性も充分。やっぱメロディーセンスに優れたバンドのアルバムは強いな。退屈に感じる瞬間がない。
そんな楽曲により一層の煌めきを与えてくれるのがクリスチャン・エリクソンのヴォーカル。Twilight Forceの音源およびライヴから、彼が魅力的な声を持つヴォーカリストであることはわかっていましたが、ハイトーンでシャウトしてもヘロヘロにならず、クリーンでウェットな雰囲気を持つヴォーカルワークはまさにベストマッチで絶品。
Twilight Forceを抜けたことが良かったか悪かったかは置いといて、とりあえず良いバンドに入ってくれたね!と言いたい。ここまでしっかり歌い上げられる人は、メロディックメタルのヴォーカルを続けるべきよ絶対。
そして時にメタルの主役であるはずのギターを喰ってしまうほどに存在感の強いキーボードも素晴らしいの何の。ネオクラ様式美の影響を隠そうともしないキラキラサウンドに、北欧らしい美しい冷気の味付けもバッチリ。このキーボーディスト、良いセンスしてますね!この人が北欧人ではなくアメリカ人だというのが意外!(笑)
大半が疾走感に溢れていて、ギターとキーボードが目立って、ヴォーカルはうまくて聴きやすい。そしてメチャクチャにキャッチーなメロディーが全編に渡って聴けるという、まさに北欧メロスピの理想郷ともいえる音を1stにしてしっかり提示してくれた優良作。今年はAVANTASIAにSKELETOON、MAJESTICAにGLORYHAMMERと、非常にクオリティーの高いメロディックメタルの秀作がバンバン出てきていますが、それに続けと言わんばかりの完成度でした。
M7「Shape Your Reality」 Official Lyric Video