4月に行われるKNOT FEST JAPANにて来日が決定している、アメリカのメタルコア/ヘヴィメタルバンド・TRIVIUMの3rdフルアルバム。なんとなく前作『Ascendancy』と合わせて、初期TRIVIUMを代表するアルバムとして扱われているような気がする。
メタルコアというジャンルは、本来北欧メロデスからの影響を多分に受けた叙情性を、歌やギターフレーズに塗したスタイルですが、本作で聴けるサウンドはそういった一般的なメタルコアとはちょっと違う様相を呈しています。
マシュー・キイチ・ヒーフィーによるヴォーカルは、やや歪ませた声質ながらもシャウトやデスヴォイスの類はほとんど使用しない、クリーンな歌を重視したもの。そしてメタルの生命線であるギターは、北欧メロデス的な慟哭叙情リフではなく、正統的なヘヴィメタルのそれ。
この頃のキイチのヴォーカルはMETALLICAのジェイムズ・ヘットフィールドに似ていて、さらにはメタルらしい切れ味に満ちたリフがたくさんある作風も相まって、METALLICAが比較対象によく挙げられるらしい。The Metal ArchivesのSimilar Artistsの項目にも、一番上にMETALLICAが来てるし。
もはや本作で聴ける音は「メタルコア」ではなく、「エクストリームな要素もある正統派メタル」と言ってしまいたくなる。普通のパワーメタルとかに比べりゃ、だいぶエクストリームメタル的な激しさはありますけどね。明らかにメタルコアのうちの"コア"よりも、"メタル"の方に比重が置かれている造りです。『十字軍』なんてタイトルも、ハードコアよりはメタルっぽいよね。
この音ではガチのメタルコアファンからはウケなさそうな感じですけど、このヘヴィメタルとしての美徳をしっかりと詰め込み、かつ軟弱にならないアグレッションも担保されているスタイルは、ヘヴィメタルというジャンルそのものを愛する人すべてに響くであろう普遍的な魅力があります。
その最たる例がM4「Anthem (We Are The Fire)」ですね。この曲はもう完全に正統派メタルと言い切ってしまってよく、ほどよくキャッチーな歌に、ノリの良さと鋭さを兼ね備えたリフに次ぐリフ、そして叫ばずにはいられないサビのコーラスと、彼らのメタルバンドとしての魅力をすべて兼ね備えた名曲。オールドスクールな雰囲気プンプンなのに、古臭さを感じさせないバランス感覚も良い。
アグレッシヴに叩きつけられるヘヴィサウンドを主軸にしつつも、サビになると一転して猛烈にクールでキャッチーな歌を聴かせるM2「Detonation」、正統派然としたリフの畳み掛けとリードギターソロの絡み合いがたまらなくカッコいいM3「Entrance Of the Conflagration」も本作の路線を象徴する名曲で、このM2〜M4の流れはハイライトとしてこれ以上ないほど機能するもの。
もちろん後半になってもテンションは下降せず、スラッシュメタル的なリフによる疾走でインパクトを与え、その後はTRIVIUMらしい叙情的なサビが映えるM8「To The Rats」や、M2と並びサビのメロディーがトップクラスにフックに富んだM10「Tread The Floods」あたりは特に気に入ってます。
アルバムラストのM13「The Crusade」は、8分以上にも及ぶインストナンバー。これまで聴いてきた楽曲と同様に、キレのある演奏の応酬がたっぷりなのですが、そこまで長尺インストである必然性が見え辛く、もともとインストがあまり得意でないこともあって、ラストにこれだと少しダレなくもないか。カッコいいけど。
総じて、メタルコアよりも純粋にメタルとしての完成度を一気に高めた作風。シャウトこそほとんど封印されていれど、ザクザクしたメタリックなリフ、それに追従するかのように傾れ込むリード、普遍的キャッチーさを持ったメロディーと、そのどれもがハイクオリティーに磨かれた名作です。
個人的に本作は
"メタルコアの文脈にいながら、ほぼ正統派メタルのスタイルで統一。エクストリームではないが、純正ヘヴィメタルの美徳に溢れる"
という感じです。