- 名実ともにメタルシーンのトップへと上り詰めた
- メロパワ的疾走感は皆無
- 徹底的にシンプルな正統派HR/HMスタイルへ
全米・全英チャートNo.1を獲得したAVENGED SEVENFOLDの6thフルアルバム『Hail To The King』が、つい先日8周年を迎えたそうです。
本作で2作連続全米1位、さらにその他の国のチャートでも軒並み好成績を記録した作品で、本作を以って、彼らは現代メタルシーンのトップの地位を得たと言ってもいいでしょう。
ただ従来の作品にあったバラエティーに富んだ作風は消え失せ、3rd『City Of Evil』で表出したメロディックパワーメタル的疾走感も皆無となった本作は、ここ日本ではあまり評価が芳しくないらしく…
確かに今までの(ドラマーのザ・レヴ在籍時)に比べてメチャクチャシンプルな作風になり、派手な聴き応えという意味では、4thのセルフタイトル作には到底及ばないとは思います。
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しかし!それを認めたうえでなお言いたいのですが、本作は決して悪い作品ではないと思うのですよ。ただ派手に疾走したり、様々な楽器を取り入れたりすれば良いというモノではないのです。シンプルイズベストって言葉もあるじゃないのさ。
というわけでこの『Hail To The King』、先にも述べた通り、過去作と比べて存外シンプルでわかりやすくまとまった一作。各楽曲の方向性もほぼほぼ揃っており、これまでB級色濃いメタルコアや、メロパワ的クサメロ疾走、シンフォサウンドや管楽器入りのシアトリカル大作など、色々と手を替え品を替えてきた彼らのキャリアにおいて、過去最高に王道で正統的なHR/HM路線を貫いています。
正統的なメタルリフと、常に不穏でダークなオーラを纏い、ヨーロピアンテイストな様式センスを取り入れた王道ヘヴィメタル。初期のアンダーグラウンド臭は見る影もなく、アメリカのバンドでありながらカラッとしたアメリカンなノリはさほど強くなく、大仰なアルバムタイトルに相応しく堂々たる雰囲気を醸し出して進んでいく。
また今作で大きなポイントとなるのはギターソロ。従来から流麗でダイナミックなギターは聴かせてくれていたのですが、本作は技巧に走りすぎず、メロディアスな泣きを増強したプレイを要所で披露してくれます。
タイトルトラックであるM2「Hail To The King」やバラードのM5「Requiem」、ラストを飾るM10「Acid Rain」においては、美しき泣きに満ちた極上の旋律が堪能できます。M5のツインリードが切り込む瞬間、M10のピアノやストリングスとともに描かれる哀愁が、この上なく切なくツボを突いてくるんだなあ...
そう言ったエモーショナルな側面を覗かせつつ、不気味な鐘の音から怪しく力強く、流麗なギターソロも武器として進み行くM1「Shepherd Of Fire」に、バッドボーイズ・ロックンロール風味をどこか感じさせる、ワルなハードナンバーM3「Doing Time」、サビのメロディーに翳りあるフックを携えたアップテンポメタルM8「Coming Home」など、強烈にキャッチーというほどではなくとも、単純にメタルとしてカッコいい楽曲が並んでいて飽きさせない。
まあ過去作と相対的に、ちょっとスローすぎてタルく感じてしまう瞬間も無いとは言いませんが、余計な要素を極力削ぎ落とし、単純ながら理屈抜きに魅力的な、正統派ヘヴィメタルアルバムに仕上がっていると言えましょう。
あと全く関係ない話ですが、本作は学生時代CDショップでバイトしてた時に、クリアランスセールで300円くらいになっていたデジパック輸入盤新品を購入しました。今まででトップクラスにお得な買い物だったと思ってます(だからなんだ)
個人的に本作は
"かつてのような派手な展開やスピードを廃し、さらに進化した泣きメロのセンスを発揮させた王道・シンプルな正統派HR/HM作品"
という感じです。