昨年にSable Hillsが主体となって日本へ招聘し、アルバム完全再現ライヴを行ったことでも話題を呼んだ、アメリカはワシントン出身のメタルコア/メロディックデスメタルバンド・Darkest Hourの10thフルアルバム。
恥ずかしながら(別に恥ではないのだが)僕は過去に彼らの音源をほとんど追ってきてなくてですね。名盤とされている4th、5thも未聴で、前述の来日公演も行ってないのです。しっかりアルバム単位で聴き込むのは本作が初。
特に敬遠していたわけではなく、な〜んとなく聴くタイミングを逃していたというだけなのですが、メロデスからの影響が強いメタルコアバンドということで、僕の好みには合致するだろうという期待感のもと聴いてみました。
そして聴いてみて納得。なるほど、こりゃ確かにメロデスだ!
そもそもメタルコアというジャンル自体、At The Gatesをはじめとした、北欧のメロディックデスメタルを影響源として発展していったジャンルだそうなので、メロデスに近いというのは当然なこと。
しかしそれを踏まえた上でも、本作のメロデス度は高い方だと思う。AS I LAY DYINGやKILLSWITCH ENGAGEを聴いている時には確かに感じられる「俺は今メタルコアを聴いてるな」という感覚が、本作を聴いてるうえではあまり得られなかった。
それはやはり楽曲のスタイルが起因しているかもですね。メタルコアらしいブレイクダウンはほとんどなく、リフしかりリードしかり、ギターが常にメロディアスな泣きの旋律を含んでいる。アコギを使った叙情的パートもあったりと、重心の低いアグレッション以上に、メロディアスさ重視の姿勢が強い。
もちろん一定以上のヘヴィさや、噛み付くようなシャウトで構成されているのもあり、か細くて頼りないようなことはまったくないです。ちゃんとエクストリームな音楽をやっているという点は担保できる。そのくらいの攻撃性はバッチリあります。あくまで最も全面に押し出されてるのがメロディアスさというだけで。
M2「Societal Bile」のように、どっしりとしたヘヴィリフで進むパートもあるので、ある程度のメタルコアらしさもあるんですけどね。M3「A Prayer To The Holy Death」のスローテンポで泣きメロを紡ぐギターソロ、M4「The Nihilist Undone」のイントロの疾走感溢れるメロディックなリフ。こうしたメロデス的要素が多分に感じられる楽曲が立て続くので、普通にメロデスアルバムとして聴いてしまう。
まあ、そんなメタルコアかメロデスか、みたいなジャンル区分けは、良い音楽であればどうでもいいこと。聴いた限りでは、本作は間違いなく良いアルバムと言える。
上述した楽曲のメロディアスな旋律は、北欧メロデス直系の叙情性がダダ漏れ。暴れながらでもしっかりと泣ける。このメロディーは、泣きを愛するメタルヘッズの心に確実に刺さるはず。
M6「Amor Fati」のようなインストの小曲ですらガンガンに泣いているし、そこから続く疾走曲のM7「Love Is Fear」も、パワフルさと同時にメロディアスなリフも完備。M10「My Only Regret」なんかは本作中屈指のスピード感があるのに、バッキングで流れるリードギターのキャッチーさたるや、凄まじいものがありますね!俺はこういうのに弱い。好き。
ラストを飾るM11「Goddess Of War, Give Me Something Die For」は、もの悲しいアコギによる出だしから、中盤の叙情メロデスリフによる疾走、スピードを落とした後半部の壮大なヴォーカルパートに、ラストを彩る美しく悲しいギターソロと、ドラマチックな展開が次々と続いていく大曲。このギターソロパートは、メタルコア的モッシュではなく、拳を掲げながら目頭を熱くする鑑賞方法が似合うメロデスだ。
もはやメタルコアキッズよりも、メロデスオタクに喜ばれるのではないかと思うほど、泣き泣きの叙情美ギターに注力した、メロデスアルバムと言い切ってしまえます。ほどよくヘヴィで疾走感がありつつも、全曲根底にあるのは胸締め付ける悲壮美!
泣きメロのレベルは非常に高いので、「とにかく泣きのギターで悶絶したいんだよ!」というメタルヘッズは、メタルコアファンだろうとメロデスファンだろうと、聴いて損なしの力作でしょう。ここまでメロディー重視路線だとは思いませんでした。
個人的に本作は
"叙情的リフと泣きのリードギターが大きく目立ったメロデスサウンド。エクストリームではあるが、それ以上にメロディアスさが強い"
という感じです。