ハードロックファンなら知らぬ者はいない超大物・GUNS N' ROSESの来日公演に行ってきました。人生初ガンズです。
正直言うと、このライヴに行くかどうかは直前まで迷ってたんです。理由は大きく分けて以下の2つ。
①2万近いチケ代を払うに充分な楽しみを得られるかわからないから
②翌日の仕事に支障をきたす恐れがあるから
①については、単純に好みの問題ですね。基本的に叙情的でパワーのあるメタルが好きな僕にとって、アメリカンな空気や、LAメタルっぽい"セックス・ドラッグ・ロックンロール"的アティチュードを持つバンド、楽曲はさほど響かないのです。
彼らのデビューアルバムであり、ロック史に残る名盤とされる『Appetite For Destruction』は、ロックの基礎教養みたいな感じで自分も聴きましたが、やはりツボにハマったとは言い難い(もちろんカッコいいと思えるパートも随所にある)…
一夜にして2万円が消し飛ぶというのは、薄給の社会人にはキツい。それに見合ったリターンが、僕の音楽感性で得られるのか?という疑念があったのが一点。
ただ、理由が①だけであれば、さほど迷うことなく行ってたんですよ。以前KISSの東京ドーム公演だって行きましたし。音楽的な好みから外れていても、ベテランのロックンロール・ショーはエンタメとして完成されてますから、行けば何かしら感銘を受けるものがあると思ってます。大事なのはもう一点、②の理由。
彼らのライヴに行ったことがなく、音源も満足に聴けてない僕でさえ知ってる、アクセル・ローズの遅刻癖。これが大きい。
以前にもこのブログで書きましたが、現在仕事の立て込みが厳しく(そのせいでこのブログの更新ペースが落ち気味...)、あまり夜遅くまで起きていたくはない。
ライヴ当日は日曜日。当然その翌日は月曜日で、そこから一気に五連勤が開始される。週の始まりを寝不足でスタートさせるのはキツいものです。
そんな日にライヴの開始時間が1時間でも2時間でも遅れてみなさいよ。さいたま新都心から自宅最寄りまで1時間半は確実にかかるのだから、遅刻されようものならたまったものではありません。
しかし、しかしです。彼らももう60歳ほどになってきており、年齢的な限界というのが近づいてきているはず。もうあと何回来日できるかどうかわかりません。
仮にもHR/HMファンを自称するのであれば、やはりこういったレジェンドのライヴは観られる時に観ておいた方が良いのではないか?そういう思いが募っていたのも事実。今ここでしっかり観ておかないと、「次また来た時にでも...」はもう無いかもしれない。
そんな思いが翌日の仕事のリスクを超え、結局直前になってチケット購入に踏み切り、当日さいたまスーパーアリーナにまで足を運ぶことになりました。秋のさいアリ...LOUD PARKを思い出しますね。
開演時間の30分ほど前に到着し席に座る。最後方ではあるものの、ステージ真っ正面に近い場所。直前で買ったにしてはまあ悪くないでしょう。ゆったり座りながらステージ全体を鑑賞できる。最近買ったオモコロライター雨穴さんの著書「変な絵」を読みながら、スタートまでのんびりと待機。
GRANRODEO
オープニングアクトはBAND-MAIDとGRANRODEOと聞いていましたが、なぜか本日BAND-MAIDのライヴは無く彼らのみでした。
彼らのことはアニメソングを主に担当している音楽ユニットとして名前は知ってましたが(CDショップでバイトしてた時にアニメコーナーでよく見ました)、ヴォーカルの方は本職が声優らしい。
ガンズほどビッグなアーティストになると、ファン層は「そのアーティストのみが好き」というタイプの人が多くなり、オープニングアクトにはあまり注目されないのが世の常。やはり立ち上がって腕を振り上げたり、ペンライトを振ったりする人はごく少数といった感じ。
ただパフォーマンスとしては、普通にハードロックとして通用するのではと思えるくらいにタイトで、ギターはメタルに通じる速弾きに、タッピングを交えたソロも披露。リズム隊の演奏もパワフルだし、声優という声を使った職業に携わるだけにヴォーカルもうまい。ハイトーンの叫びも本格的でした。
アニソンが本職というだけあり、ヴォーカルメロディーがかなりポップなのは好みが分かれやすいところではありましたが、最後に披露された「modern strange cowboy」は、疾走感あふれるドラムにキャッチーなメロが乗り、普通に聴いてて爽快。僕個人の好みで言えば、ぶっちゃけガンズよりもこっちの方が好き......なんて言ったら会場中のファンから袋叩きにされそうだ(笑)
GUNS N' ROSES
18時開演ということで、そこからどれだけ待たされるか不安でしたが、なんと10分ほどの押しで暗転。「おお!思ったより早かった!」とポジティヴな驚き。
バックのスクリーンに映像が映し出され、多くの人がスマホのカメラで様子を撮影。やはり真っ暗な会場内で、画面の明かりが至る所でチラチラしてる光景はあんまり好かんな〜...
そしてバンドメンバーがステージに現れ演奏開始。オープニングは「It's So Easy」。ノリノリのな曲調がいかにも80年代HRの雰囲気をプンプン放つ。そして遠目から見ても、ギタリストであるスラッシュの存在感は大きい。
黒のハットにグラサンという、一目でわかる風貌と、代名詞でもあるレスポールを弾き倒す姿はインパクトがありますね。若干お腹が出ているように見受けられるのは、まあある程度は仕方ないか。
見た感じ一番カッコいいと感じたのは明らかにベースのダフ・マッケイガン。スラっとしながらもロッカーらしいワイルドさを感じさせ、ピッキング時の堂々たる立ち振る舞いは、明らかに他メンバーとは一線を画していました。僕の左隣に座っていたお兄さん二人組も「ダフカッコいい!維持できてる!」と言ってました(笑)
後衛にはドラムとキーボーディスト二人が構えていたのですが、やはりオリジナルメンバーではない人たちにはなかなかスポットが当たらない。キーボードソロにでもならない限り、ステージ両脇にある大型スクリーンにアップで映されないし、やはりファンのニーズはアクセス、スラッシュ、ダフの3人に大きく割かれてるんでしょうね。
しかし、アクセル・ローズのヴォーカル。このクオリティーがなかなか厳しいものでした。まず音が低い!そして聴き取りにくい!
まあライヴが進むにつれて喉があったまってきたのか、少しずつ声量もアップしていって、安定もするようになってはいたのですが、序盤の歌唱は声が埋もれ気味というか、音源で聴けたような高音、溌剌としたエナジーを感じ取るのが難しい状態でした。
まあ還暦近い年齢になった人に、30年以上前の作品と同程度の歌のクオリティーを求めるというのが、そもそも酷な話なのかもしれないですが...
しかし、ライヴのパフォーマンス自体は良かったんです。広いステージを右から左に動き回って、オーディエンスに積極的に手を振ってアピールしたり、声を張り上げて盛り上げたり、この辺はやはりロックスターたる所以。
代表曲である「Welcome To The Jungle」はやはり格別の盛り上がりで、アリーナフロアをほぼ一瞥できる位置にいた僕は、無数の手が曲に合わせて上がっていることが確認できて、アリーナライヴの壮観っぷりを肌で感じました。
スラッシュの長めのギターソロタイムが設けられたり(メンバー紹介で彼だけもったいぶられてただけに、やはり彼の存在は特別なんだろうな)、弦楽器隊が椅子に座ってアコースティックテイストなバラードをプレイしたり、アクセルがステージど真ん中に鎮座したピアノを演奏したりと、ちょくちょく趣向を凝らした演出がされるも、基本的には王道を貫くハードロックパフォーマンス。
正直サブスクで代表的な楽曲をサラッと聴いた程度の予習で臨んでいたので、「あれ?この曲なんだっけ?」となる瞬間が多かったのですが、ギラギラの照明と大観衆に囲まれながらプレイされるアリーナロックをほぼ俯瞰に近い形で観られる、というのはなかなかない経験でした。
レジェンドと呼ばれるバンドのライヴをフルセットで観られる良き1日でした......と締めたいところなんですけどね、正直に言いますとですね、後半はだいぶ辛かったんですよ。
というのも、長い。アンコール含めて、ライヴが終了したのが21時。3時間にも及ぶ超長尺のセットリストだったのです。
先に述べた通り、僕は彼らの音楽が好みであるとは言い難く、このライヴに足を運んだのも、曲を楽しむというよりは「一度は生で観てみるべきだよな」という気持ちに従って来たのです。
そのため、「うおおお!この曲をやってくれるとは!」という喜び、興奮が他のファンの方と比べると低くてですね。ライヴ後半になってくると、GRANRODEOから3時間以上座りっぱなしで、取れないここ最近の仕事の疲れ、頭痛持ちである体質も相まって、体が異様にダルくなってくる。正直、ラスト1時間はだいぶグロッキー状態でした。
「ふう...これで終わりか......え!?まだあるの!?」という心のやりとりを何度か繰り返しながら、ようやくくるクライマックス。この時点でまだ「Knockin' On Heaven's Door」のサビをシンガロングし、立ち上がって腕を振り上げ盛り上がっている人がたくさんおり、「俺よりだいぶ年上だろうに、皆さんなんてタフなんだ...」と慄いていました(笑)
こうしてロック界のリヴィングレジェンドのライヴ、お腹いっぱいを通り越してゲップが出るまで味わい尽くしたわけですが、さすがに「ガンズのライヴはこれで充分だろう」と思わせられたな...。
どんどん細分化していき「誰もが知ってる超大物」という存在が生まれづらくなっているHR/HMシーン、彼らのような存在は今後現れないかもしれず、そういう意味では貴重な体験になったのではないかと思ってます。密かに期待してた「兄貴の位牌......ヤクザ!」も聴けたしね。