ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

TOBIAS SAMMET's AVANTASIA 『A Paranormal Evening With The Moonflower Society』

  • ゲストヴォーカルの個性に合わせたハイクオリティーメタルオペラ
  • 前半のメタリックな強力楽曲連打がハイライト
  • メロディー・アレンジの充実度は相変わらず抜かり無し

 

EDGUYのヴォーカルであるトビアス・サメットが指揮するメタルオペラプロジェクト、TOBIAS SAMMET's AVANTASIAの9thフルアルバム。

 

前作『Moonglow』と同様に、ジャケットはアレクサンダー・ヤンソンが手がけているようで、連作であることがわかります。ライナーによると、本作は前作とセットでAVANTASIAの第4期を構成する作品なんだとか。

 

そんな前作『Moonglow』は、どの楽曲も非常に完成度高く練り込まれ、どこまで行っても素晴らしく叙情的なメロディーが鳴り止まない、個人的ツボに特大ヒットをかましてくれた超名作でした。リリースされた当初から「これは2019年のベストアルバムになるな...!」と予感させてたほどで、実際ベストアルバムに選びましたからね。

 

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そんなわけで当然ながら本作にかける期待は非常に高く、素晴らしきメロディックメタル絵巻を提供してくれるだろうと確信していました。

 

そして出来はというと、超名作だった前作にはやや及ばないかな...という感じ。しかし期待にはしっかり応えてくれる力作であることはすぐに理解できる。

 

オープニングトラックであるM1「Welcome To The Shadows」は、不穏で仄暗いムードを醸し出す出だしで(サビはメロディックですが)、前作の神聖かつファンタジックな空気感のオープニングと比べると少し地味めに感じてしまったり。もちろんこういうシリアスな空気感も良いものではありますが。

 

そこから続く楽曲群が本作のハイライトたる部分であり、Primal Fearのラルフ・シーパースをゲストに迎えたM2「The Wicked Rule The Night」、Nightwishのフローア・ヤンセンが参加したM3「Kill The Pain Away」、そしてメロスピファンお馴染みのマイケル・キスクが本領を発揮するM4「The Inmost Light」。この流れが実に強力!

 

ヘヴィだがモダンではない強力なリフが叩きつけられるパワフルなM2は、Aメロだけ聴けばPrimal Fearの楽曲かと思わせるほどにゴリゴリな正統派。M3はどこか美しくも暗いゴシック的雰囲気を持ちつつ、麗しきクワイアも飛び出してくる。M4は本作唯一のメロスピチューンで、マイケル・キスクのよく通るハイトーンが非常に気持ちいい。

 

それぞれタイプの異なる楽曲に、異ジャンルメタルのスーパーエキスパートと言えるような実力派ヴォーカルを抜擢しており、トビアスは「適材適所」という言葉をよく理解してるんだなと思わせられますね。どの楽曲でもヴォーカルの魅力が浮き彫りになっているよう。

 

この名曲の連打で一気に高まった熱量を、M5「Misplaced Among The Angels」という美しいバラード調の曲を挟んで、一旦落ち着かせるアルバム構成も良い感じ。サビにおける解放感が実に染み渡りますな...

 

その後もトビアスの作曲センスが大いに活きた名曲・佳曲が連発されますが、後半はどちらかというと、メタルとしての興奮以上にメロディーの充実や、バッキングのアレンジ、ゴージャスな装飾などに凝った印象があり、前述したM2〜M4ほどテンションが上がる瞬間はなかった。

 

とはいえもちろん、このプロジェクトにおいて平々凡々なヌルい曲が生まれるはずはなく、どの曲にも心を捉えるフックが備わっている点は素晴らしいと思います。ここまで良質なメロディックメタルをポンポン生み出せるトビアスはやはり底が知れない。

 

後半においては、綺麗なピアノのアレンジに、切々したトビアスとロニー・アトキンスのヴォーカルが重なるM7「Paper Plane」、強烈な哀愁が効いたサビのメロディーと、トビアスの伸びやかなヴォーカルがマッチし、ドラマチックな展開をもつギターソロも聴きどころになったM10「Scars」が好き。

 

全体通して、さすがトビアス・サメット!と拍手喝采したくなる充実盤でした。前作が超すんばらし〜い出来だったために、その比較としては若干聴き劣るかな...という感覚は無きにしもあらずですが、本作が今年発表されたメロディックメタル作品でも、トップクラスの完成度を誇ることに違いはないです。

 

しかし、ゲストヴォーカルの魅力をそれぞれ十二分に引き出し、かつ曲単位でもアルバム単位でも、これだけクオリティーの高い作品を連発できるトビアスは、他に思いつかないレベルのソングライターですね。まだまだこの才能が枯渇する気配がありませんし、気が早いこと言いますが、次のアルバムも安泰だな。

 

 

個人的に本作は

"多彩なゲストヴォーカルを活かしきった、劇的極まるメタルオペラ。ファンタジックなアレンジとメロディーの充実ぶりはメタル界最高峰"

という感じです。

 


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