ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

LORNA SHORE 『Pain Remains』

  • 最凶レベルの新ヴォーカルを携えたフルアルバム
  • 人外級の極悪さと、それにマッチした哀しく劇的なシンフォニー
  • エクストリームメタルの究極系となるトリロジー

 

このブログでも何度か書いていますが、僕はあまりにエクストリームすぎるサウンドを進んで聴くことは多くないです。

 

やはり音楽的に一番重要視しているのはメロディーの良さ、正統的なパワーメタルに通じるリフワークやバンドサウンドなどであり、それらをかなぐり捨てた熾烈な音は、インパクトこそすごいものの、積極的に好き好んで聴くことはありません。

 

ロディックメタルコアは大好きだけど、デスコアにまでなるとちょっと...。メロディックデスメタルは大好きだけど、普通のデスメタルになるとちょっと...。そんなことを言いたくなるようなリスナー。他のメタルファン人たちがTwitterにあげている感想とかを見ていると「すげえな、よくこんなマニアックなサウンドを見つけてくるな...」と感心しきり。

 

フックとなるメロディアスさ、勇壮さや劇的さといった要素がないと、正直僕の琴線には引っ掛からず、MVを見て「ヘヴィで迫力あるなぁ」という感想を持った後、特にその後は気に留めることはない......というのが常なのです。

 

しかし、そんな体たらくな僕ですが、ここ最近ある1枚のエクストリームメタル・アルバムに徹底的に打ちのめされ、心臓を鷲掴みにされ、脳と鼓膜に不可逆な衝撃を与えられるという現象が発生してます。

 

アメリカはニュージャージー州出身のデスコアバンド・LORNA SHORE。彼らが放つ4thフルアルバム『Pain Remains』

 

2020年に来日が決定していたそうなのですが、当時のヴォーカルが複数の女性に対して虐待をしているのが公になり、バンド側から解雇、来日もポシャってしまうという事件があったそう。その後発表された3rdフルアルバム『Immortal』は、解雇前にすでに録音済みであり、ヴォーカルトラックの差し替えなどは特に行われずに発表された...という難儀な経歴を持っています。

 

その後は新フロントマンであるウィル・ラモスを迎え入れ、EPのリリースを挟んだ後に、今回取り上げる新作を発表しました。

 

本作発表前に、デジタルシングルとしていくつか本作収録の楽曲が公開されており、それらの評判があんまりにも良いものだったので、僕も「ふ〜ん、どんなもんなんでしょ?」ってな感じで、ちょっくらMVをチェックしてみたんですよ。

 

そしたら、もう衝撃

 

サウンドはデスコア、それもブラッケンドデスコアと呼べばいいんでしょうか、ブラックメタルにも通じる超速ドラムに激烈なリフが奏でられる、極めてエクストリームなもの。

 

それなのにどうだ。このあまりにも哀しく、そして美しく響き渡るシンフォニックサウンドは。これが時にはバンドサウンド以上かっていうくらいに前面に出てくる。音自体の美しさももちろん、奏でられるメロディーラインが狂おしいほどの哀愁を持ち、メロディアスさを好む僕の琴線を強烈に掻きむしってくる。

 

こんなにも邪悪なのに、こんなにも激しいのに、至る所に僕の心を揺さぶるドラマチックな旋律があって、最後の最後まで意識を音から離すことができない。

 

テンポをガッツリと落としたブレイクダウン以上に、ミシンのごとき激速ドラムによる、フルブラスト的疾走パートの存在感が大きい。そのため、ヘヴィなリズム落ちでノるよりも、疾走する音に身を委ねる方が好きな僕の趣向に合っていたのも気に入った要因かも。

 

ジャンルは少し違えど、2年前に発表されたANAAL NATHRAKHの新作に近い感覚を覚えました。超エクストリームなのに、感動的という言葉すら似合いそうなほどメロディアスな点が通じてます。

 

show-hitorigoto.hatenablog.com

 

そして新ヴォーカリストとして加わったウィル・ラモスですが、まあ知ってる人はとっくに知ってると思うのですが、バケモノです。本当に人間が発声しているのか疑わしいほどの悪魔的叫び。高音の金切り声から、地を這うグロウルまで、バリエーション豊かながら、どこを切っても凶悪無比。声色の変化がメチャクチャスムーズで、どれだけ楽曲が高速展開しようとも、見事なまでの唱法を立て続けに披露してくれる。マジで人外級。MANOWARよりもLOUDER THAN HELLしてると思う。

 

気になる点としては、大体どの曲も方向性が一貫していて、基本的にファスト、時たまデスコアらしいリズム落ちを挟んで、サビにあたる箇所でシンフォニックアレンジが大仰にメロディーを奏でる。このスタイルを貫き通してるために、アルバム全体の起伏はやや少なめなところくらいか。それでも各曲のクオリティーが有無を言わせぬほど高いため、些細な問題でしょう。

 

全ての曲が極上の出来ですが、やはりなんと言ってもハイライトは、ラストを飾るM8「Pain Remains Ⅰ: Dancing Like Flames」〜M9「Pain Remains Ⅱ: After All I've Done, I'll Disappear」〜M10「Pain Remains Ⅲ: In A Sea Of Fire」という、タイトルトラックを冠したトリロジー

 

この3曲、合計20分超にわたる展開は、これまで聴いてきた楽曲に輪をかけてドラマチック極まりない。各楽曲で聴ける悲劇的なシンフォニックアレンジは、いつ何度聴いても胸が熱くなる。

 

全てが聴きどころと言っても過言ではありませんが、特に好きなのはM8とM9両方で用意された、終盤にかけて繰り広げられる強烈な泣きを帯びたギターソロ、そこからなだれ込むラストの大サビ!

 

そしてアルバムを締めくくるにふさわしいM10の6:30〜ごろから聴ける、あまりにも壮麗で壮絶なエンディング。恐ろしく完璧な幕引きであり、三部作最終章としても、単一のアルバムのラストとしても、これ以上ないほどの終わり方だ。

 

むしろここまで音楽的になってしまうと、ヘヴィパートでモッシュしたいデスコアキッズから反感を買われてしまうのではないかと心配したくなったりもしますが、この旋律は泣きを愛する感性を持つメタルヘッズであれば、必ずや受け入れられるものだと思います。

 

デスコアらしい破壊的な音圧による圧倒ももちろん素晴らしい。しかし、どれほど容赦ないブラストビートが支配的でも、エグいヘヴィリフ満載でも、類を見ないほどの極悪ヴォーカルで歌われていても、この作品は音楽的感動を呼び起こすことができる。世界広しといえども、このレベルに到達しているエクストリーム作品はそうそう見当たらないのでは。

 

長々書き綴ってきましたが、正直本作を聴いた際の感情を表現する際に、「激情」とか「怒涛」とか、色々な言葉を持ち出しても足りないですね。実際に聴いてみた人でないと、このエモーションは伝わるまい。

 

 

個人的に本作は

"ヘヴィで凶悪無比なデスコア。そこに加わるあまりに劇的なシンフォニックサウンド。音圧と感動で圧倒させる超大作"

という感じです。

 


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