- 生まれ変わってからの初のフルレンスアルバム
- ストレートなメタルコアから暴悪なオーラを纏ったデスコアまで
- オーケストレーションを用いた衝撃的キラーチューン
ヴィジュアル系にカテゴライズされるバンド群において、ヘヴィなサウンドを出すバンドというのは数多くいます。
その多くはDIR EN GREYのDNAを色濃く受け継ぐバンドですが、中にはそれ以上に本格的なラウド/モダンメタル、メタルコア、デスコア志向を貫くバンドもちょくちょく増えてきている昨今。
まあ僕はヴィジュアル系界隈に詳しい訳ではないので、パッと出てくるのなんてDEVILOOFとDEXCOREくらい。あとはJILUKAとか、解散したけどDIMLIMくらいなら名前を知ってるかなあ...という塩梅です。まだまだアンダーグラウンドを掘り起こせば、ヘヴィで危険なバンドはたくさんいるんでしょうねきっと。
そんなヴィジュアル系における、本格派メタル路線の先達と言っても過言ではない存在がNOCTURNAL BLOODLUST(元々ヴィジュアル系ではなかったようですが)
二度にわたるメンバーの脱退で存続の危機を迎えるなど、ここ数年はかなりキツい思いもしてきましたが、2年前に新ギタリスト二名を加えて、ついでにゴテゴテしたヴィジュアル系らしさもほぼ払拭した状態で完全復活を遂げることに成功。ミニアルバム『The Wasteland』は、派手なヴィジュアル系らしさを押し出していた頃に比べて、良くも悪くもシンプルになり、より普遍的なメタルコアサウンドを聴かせてくれました。
show-hitorigoto.hatenablog.com
そして新ラインナップも板についた状態で、満を持して発表されたフルアルバムが本作。フルアルバムとしては、なんと2014年発表の『THE OMNIGOD』以来8年ぶりというのだから驚きです......っていうか、"2014年が8年前"ってマジ?2014年ってつい最近じゃない?(汗)
まあそれはさておき、現在のラインナップになって初のフルアルバム。モダンでヘヴィなメタルコア路線に舵を切った『The Wasteland』から、よりダークでドロドロしたエクストリーム要素、アンダーグラウンドなデスコア要素を強めた印象。曲によってはシネマティックと言えるようなシンフォサウンドの装飾も施し、邪悪な暗黒音楽としての説得力が飛躍的に増しています。さらにいうとサウンド・ルックス両面から、ヴィジュアル系としての要素はほぼ皆無。
こりゃ〜かなり攻めましたね。とにかくアルバム全体に渦巻く狂気と、暴悪なオーラが凄まじい。
地の底から聴こえてくるようなイントロから続くM2「Red Soil」はキャッチーな要素を極力廃して、不気味なギターフレーズをバックにヘヴィなリフで進み行く。オープニングにしてはやや無愛想な印象ながら、本作のダークな世界観をこれでもかと押し付けてくれます。
前作発表前にデジタルで先行配信され、ノクブラ復活を高らかに宣言した3曲を織り交ぜながら、タイトル通りストレートなメタルコアとしての魅力に満ちたM3「Straight to the sky」、本作中特に重心が下がりに下がったヘヴィさ、超速バスドラに代表されるエクストリームサウンドが武器のM4「Dagger」、従来の彼ららしいノリの良い早口ヴォーカルとリズミカルなリフに、シンフォニックサウンドの壮大な味付けをブレンドさせたM10「Eris」と、既存の楽曲含めて実にパンチのあるキラーチューンが並んでいきます。
ここまで極悪なメタルコア/デスコアとして振り切ってしまうと、先行シングルとなったM11「THE ONE」が、ちょっと爽やかっぽい浮いた曲に映ってしまうのは無きにしも非ず。まあ、これはこれで良い曲だから問題はない。
そんな本作を語る上で外せないのは、やはりリードトラックにもなった中盤に鎮座するM7「Cremation」でしょうか。映画的な映像展開のMVの時点で、従来の曲とは一線を画する感じでしたが、楽曲の方も凄まじい仕上がり。
本場海外のデスコア勢にだって引けを取らないであろうヘヴィリフと超速ドラムに、本格的なオーケストレーションを大々的に融合、ホラー映画のような緊迫感を持ち寄り、全てを叩き潰すかの如くブレイクダウン、ドラマチックで圧巻のラストを締めくくるまで、片時もサウンドから意識を離すことができない衝撃の名曲。
前作リリースの時点でバンドの復活は充分に知らしめることには成功した彼らですが、そこからさらに衝撃度・破壊力共に、遥かに上回る激作を生み出してくれるとは。8年ぶりという長い期間をおいて、高まった期待に完全に応えてくれたと言っていいでしょう。
本作の半分以上の楽曲は、新加入のValtzさんとYu-taroさんの手によるもので、新生ノクブラのソングライティングがいかに高い水準になったのかが窺い知れますね。一時期は半壊状態となってしまったバンドを、本作は立て直すを通り越して、大きくレベルアップさせることに成功しています。
個人的に本作は
"デスコアとしての極悪さとヘヴィさ、ダークな世界観を大幅にレベルアップさせた、暴虐の限りを尽くす衝撃作"
という感じです。