本来はEDGUYの中心人物のトビアス・サメットによるサイドプロジェクトという位置づけのはずが、もはやトビアスにとってEDGUYよりもメインの活動になっているのではないかと思われるほどに精力的な動きを見せるTOBIAS SAMMET's AVANTASIAの、前作から2年ぶりの8thフルアルバム。
何でも前作『Ghostlights』のツアーが終わった段階でレコード会社との契約が切れ、スケジュールが白紙になった期間があったそう。母国のチャート上位の常連でWACKEN OPEN AIRのヘッドライナーも務めた実績のあるミュージシャン(しかも別に落ち目になったわけでもない)ですら一時期契約が無くなるなんて、やっぱ音楽業界厳しいんかなぁ...。
しかしトビアスはその空白期間を有効利用してガッツリと曲作りに専念し、その結果本作にこれまで以上の時間とお金をかけることができたのだとか。災い転じて何とやら。
そして本作はその丹念な曲作りの成果がバッチリと発揮された素晴らしい内容です。
もはやヘヴィメタルというジャンルの枠を超えたスケール感とポップさを兼ね備えた極上のメロディー、楽曲を豪華絢爛に彩る分厚いコーラス、多彩なゲストヴォーカルが各々の強みを活かした歌唱が重なり、メタル・オペラという名前に期待される世界観を完璧に描き出している。
オープニングトラックであるM1「Ghost In The Moon」から早速10分近い大作ですが、トビアスの生み出すメロディーと曲展開、サビが劇的で一切ダレを覚えることがない(7分半あたりの静かになるタイミングで終わらせてもよかった気がしなくもないけど)。しかしこんなものはまだ序の口。
突如として現れるKREATORのミレ・ペトロッツァによる邪悪なヴォーカルが良いアクセントとなっているメロディックチューンM2「Book Of Shallows」、キャンディス・ナイトとトビアスによる歌唱が幻想的な雰囲気を見事に醸し出すM3「Moonglow」、シンフォニックメタル顔負けのサウンドと、ラストの手に汗握る怒涛の展開が素晴らしいM4「The Raven Child」という連打に完全にアルバムの世界に入り込んでしまう。
ピアノを活かした美しいバラードから、ややヘヴィな質感を持った曲、オペラらしい豪勢な合唱を主軸にした曲、比較的コンパクトにまとまったノーマルなメロディックメタル、王道を行くメロスピまで、メタルオペラの名前から逸脱しない範囲で幅は広げつつ、どの曲にもじっくりと聴き入ってしまう芳醇なメロディーが詰まりまくっており、最後まで作品に没入することができます。長尺の曲、アルバムを好まない僕ですらこのドラマには酔わずにはいられません。
特に後半に待ち構えるM8「The Piper At The Gates Of Dawn」はまさに本作のハイライトと呼ぶべき壮大な名曲。AVANTASIAらしい抜群にキャッチーなメロディーと大仰な曲展開、ライヴで盛り上がれるコーラスがふんだんに取り入れられたアップテンポナンバーで、全曲中最多のゲスト参加となった曲ですが、そんなゲスト云々がどうでもよく感じるほど曲が良い！"Dance on the wire!"のフレーズには拳を振り上げ歌わざるを得ない！素晴らしい！！
また曲とは直接関係ないですが、スウェーデンのイラストレーターのアレクサンダー・ヤンソンが描いたというジャケットがまたバッチリマッチしていて素敵。この人の名前で画像検索してみたのですが、良いですね～～！この手の世界観を持つゲームや映画、嫌いじゃないですよ！
本作はメタル大国ドイツのチャートで第一位を獲得したそうですが、これほどの充実した内容であれば納得ですね。メタルとしての音作りはきちんとされつつ、映画音楽のようなスケールを感じさせ、それでいて万人が聴きやすいような魅力あふれるメロディーが込められていますから。
メロディックメタルファン、壮大で劇的な音楽を愛する人にとってのマスターピースと呼べる名盤。まだ2019年始まったばかりですが(それでももう2ヶ月経っちゃったけど)、早くもベストアルバム候補がでてきた感じです。大満足。
あとどうでもいいことですがM4「The Raven Child」の対訳..."おい、カラスの子供"っていう訳はどうにかならなかったものか(笑)
M3「Moonglow」 MV
