- フィメールゴシック+メロディックデスメタル?
- 女性ヴォーカルがパワフル&ビューティフル
- 疾走曲からスロー曲までメロディーのフックはなかなか
バンド名が何て読むかもイマイチわかりにくい、ドイツのゴシック/メロディックデスメタルバンド・MalefistuMの1stフルアルバム。何と結成は2019年で、本作以前にEPやシングルすらも出していないというバンド。
とはいえまるっきりのフレッシュド新人というわけではないらしく、バンドの発起人のイェンス・ファーバーはDAWN OF DESTINYにギタリストとして活動しており、メインヴォーカルのメリッサ・ボニーはRAGE OF LIGHTのヴォーカルの他、SERENITYやWARKINGSのライヴでゲストヴォーカルを担当しているらしいです。ただ僕としてはDAWN OF DESTINYもRAGE OF LIGHTも「なんかバンド名は知ってるような知らないような...?」レベルなので(勉強不足)特に先入観などはなく、純粋に新バンドの音源として聴けました。
アルバム全体の感想としては、初音源なのに高品質でよくまとまっている。ところどころにネオクラっぽいシンセ、ストリングス(専任のヴァイオリニストがメンバーにいるみたい)が取り入れられていて、さらにはゴシックメタルっぽい仄暗く耽美な印象も強い。そしてメロデスらしい突進力もしっかりと感じさせる。
アルバム全体が美醜な雰囲気で満ちているのはメロデスと同様ですが、本作においてはゴシック風味も内包されているためか、叙情性はあっても明朗な雰囲気にはならず、薄暗く不穏な感じが強いですね。
M6「The Answer」、M9「Adore Me」、M11「I Will Know Your Name」の三曲以外はすべてメリッサによるヴォーカル曲ですが、彼女のヴォーカルはデス/クリーン共にしっかりしていて、デスヴォイスはARCH ENEMYのアリッサのような女性のものだとわかるけれど破壊力は充分な咆哮、クリーンはうってかわって澄んだ歌声で麗しく歌い上げる。バラードのM7「Fear Of Tomorrow」ではクリーンの魅力がしっかりと現れています。
男性ヴォーカルも必要充分なものはあるようですが、M6における歌唱はちょっと稚拙な感があるかも...?オペラチックな歌い方は勇壮なメロディーにマッチはしていますけどね。
M2「Towards The Sun」やM4「Left Without A Cause」などの突進力のある疾走曲はなかなかカッコよく、しかも壮麗な印象は決して損なわない。そのタイプの曲がラストに立て続くM11「I Will Know Your Name」とM12「My Enemy」の二連チャンの流れも良いです。
スローな楽曲も陰鬱でまるでホラーゲームのBGMかなんかかと思ってしまう暗~いものから、美醜のうちの"美"の方に傾いていると思しき曲まで、メロディーのフックはあり退屈させずに聴かせてくれます。
純粋にメロデスとは言い切れない、ある意味で中途半端な音楽性はデスメタラーにはウケが悪そうではありますが、ヴォーカルと演奏面に特に不満は感じられないし、暗くも綺麗なメロディーセンスは良い感じ。フィメールゴシックとかに理解がある人でデスもいけるって人は試しに聴いてみる価値はありそうですよ。
個人的に本作は
"暗く荘厳で美しいメロディーに、メロデス的疾走感とシンフォニックな装飾を掛け合わせた個性派パワーメタル"
という感じです。
MalefistuM - Towards the Sun feat. Melissa Bonny (Official Lyric Video)
MalefistuM - Fear of Tomorrow feat. Melissa Bonny (Official Video)
メインヴォーカルがフィーチャリングってことは、バンドというよりもイェンスのプロジェクトって趣なんでしょうねきっと。