以前よりずっと続いてきたメロデス新作の感想記事連投も、とりあえずここで一区切りつくはず。
今回取り上げるのは、今年メロデスファンの間で大いに話題を振りまいた(と思う)、イギリスのMAJESTIESの1stフルアルバムです。
このMAJESTIESというバンド(プロジェクトといった方が良いのかも)、まだ音源リリースは本作しか出していないらしいのですが、メンバーはまっさらな新人という訳ではなく、OBSEQUIAEやINEXORUMといったブラックメタルバンド(両方とも全然知らない)で活動している経歴があるらしい。
しかし、本作で聴ける音楽はブラックメタルの要素は希薄で、純粋にメロディックデスメタルとして聴けるもの。
本作の何がメロデスファンを沸かせたのかというと......それはもう、音源を聴いて貰えばすぐにわかると思います。
初期IN FLAMESです。慟哭メロデス時代のIN FLAMESが描いていたイエテボリサウンド、それを2023年という現代に受け継いだバンドです。イギリスのバンドなのに、マジでIN FLAMES系統の音そのまま。黙って聴かされたらスウェーデンのバンドだと勘違いしてしまう。間違いなく。
ジャリジャリと潰れたような歪み方をしたギターの音作り、基本ミドル〜アップテンポ、時折疾走しつつ、ひたすらに哀愁の旋律を紡ぎ続ける慟哭のリード、アンダーグラウンド臭立ち込めるデスメタルらしいサウンド......そのどれもが90年代のIN FLAMESイズムを猛烈に感じさせる。
リードギターが絶対的な魅力の中心であり、本来のヘヴィメタルにおいて重要視されるリフの存在感が希薄なこと、M3「Our Gracious Captors」のように、途中でメランコリックなアコギの調べが登場することも、実にIN FLAMES的ですね。
その後に続くM4「Verdant Paths To Radiance」も、イントロを数秒聴いただけでモロにIN FLAMESを想起させるし、この初期メロデス路線の徹底ぶりは只事ではありません。
モダンで力強いリフの応酬とか、キラキラと煌めくキーボードとか、近代的な要素はまったく無し。ただひたすらに、泣きのメロディーをリードギターが弾き倒すことに特化した古き良きメロデス。派手さもメジャー感も皆無、このバンドならではの個性とかも薄いのですが、この哀愁慟哭一直線の潔いサウンドは、これだけでメロデスファンを振り向かせてしまえるパワーがあります。
あの頃のアングラなメロデス・メロブラを愛するメタルヘッズの方々は、きっと本作の音を聴けば、たちどころにメロデス過渡期にタイムスリップした感覚を味わい、慟哭の旋律に咽び泣いてしまうのではないでしょうか。
90年代型の初期メロデスが好きな人ならマスト、「IN FLAMESはやっぱ慟哭メロデス路線だよな!」と言ってる人もマスト、そうでないならわざわざ聴かなくていい。そうキッパリと言い放つことができる作品です。なぜ今になって、イギリスからこんな音が出てきたんでしょうねぇ。
個人的に本作は
"モロに初期IN FLAMESを想起させる、90年代型のメロディックデスメタルそのもの。イエテボリサウンド直系のリードに哭く"
という感じです。