ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

AS I LAY DYING 『Shaped By Fire』

AS I LAY DYING 『Shaped By Fire』

素晴らしい復活作。先行公開されていたMVの楽曲がどれも素晴らしいものばかりで期待が高まりに高まっていたのですが、それすらを超えてきた傑作。7年ものブランクが開いていながら、過去最高峰ともいえる出来の作品を出してくれるとは。

 

2013年にヴォーカルのティム・ランペシスが別居中の奥さんの殺害を殺し屋に依頼して逮捕されるという、バンドを崩壊させる大事件が勃発。普通に考えたら元鞘に収まって活動再開なんてできない状況に追い込まれたうえでの作品ですから、本人たちのプレッシャーは相当のものだったに違いありません。周りからは厳しい意見や批判もあっただろうと思います。

 

しかし彼らはそんな状況・重圧をも乗り越え、これほどまでの作品を作り上げてしまったのですから、いかに本作の作成に注力したのかがうかがい知れます。

 

彼らの生み出す楽曲というのは基本的にメタルコアの王道をいく作風。ヘヴィでキレのあるリフに、モッシュを誘発させるビートダウン、そして哀しみを湛えたメロディアスな旋律が絡む、攻撃力と叙情性の絶妙な融合振り。メタルコアというジャンルにおいてその実力は間違いなくトップクラスのものを持っていました。

 

そして本作もその路線を踏襲し、過去作と比較して方向性は一切ブレていません。いや、それどころか過去曲をさらに研ぎ澄ませ、ブラッシュアップさせたような楽曲ばかりで構成されている。

 

前作以前から必要充分なものを持っていた哀愁のメロディーがここに来てさらに冴えわたっており、ほぼすべての楽曲においてベーシストのジョシュ・ギルバートのクリーンヴォーカルのサビがフィーチャーされている。このメロディーがまさに絶品で、心の奥を締め付ける珠玉の哀愁が堪能できます。

 

ティムのデスヴォイス、シャウトは依然として獰猛な勢いが漲っているし、ブラスト並みの疾走とバスドラ連打、ハードコアモッシュ不可避のビートダウンがバンバン飛び出し、メタルコアというジャンルに求められる攻撃力は一切の不足が無い。唯一クリーンパートのないM6「Gatekeeper」なんて、オーディエンスが暴れ狂っている様が目に浮かぶ重低音に、SLAYERばりの狂ったギターソロが聴ける超アグレッシヴな曲でアドレナリンが噴出する。

 

ヘヴィなリフで疾走しつつ、サビでテンポダウンしてクリーンによるメロディアスさを演出するという、ある種メタルコアのお約束ともいえるパターンを踏襲した楽曲ばかりで構築されているため、似たような曲が多いという印象があるのは否めませんが、それはつまり彼らの美点を濃縮した名曲ばかりという事実の表れ。彼らの復活を宣言せしめたM8「My Own Grave」は本作中特に胸焦がす強烈な哀愁と激越なヴォーカル、演奏が完璧なバランスで配合された名曲。

 

メタルコアというジャンルが普及して20年ほど経った10年代の最後に、界隈最高傑作ではと思える作品を創り上げた事実にはただただ脱帽するばかりです。この7年間、メタルコアの帝王の威厳は揺るがなかった。

 

M2「Blinded」 MV

 

M8「My Own Grave」 MV