ひとりごと ~Music & Life-Style~

HR/HMを中心としたCD感想、足を運んだライヴの感想をメインにひとりごとをブツブツつぶやくブログです。

九狼吽 『LIVESTOCK WORLD』 (2007)

九狼吽 『LIVESTOCK WORLD』

先日のPUNK LIVES!でのパフォーマンスに惹かれて購入したアルバム。1998年に名古屋で結成されたジャパニーズハードコアバンド・九狼吽(CLOWN)の2007年に発表した作品。

 

フィンランドスウェーデン、さらにはスカンジナビアまでツアーで回るなど精力的にライヴ活動をしたり、またヴォーカルのMUNEさんは日本で初めてヘルズ・エンジェルスの支部を立ち上げたりするなど、いろんな意味でグローバルなつながりを持っているようです。

 

ジャパニーズハードコアというジャンルから想像される音と言えば、社会や政府を痛烈に批判し反抗の叫びを上げる熱い歌詞、メロディアスさやドラマチックさをかなぐり捨てて、攻撃性に重きを置いたバンドサウンド、といったものだと思います。

 

彼らの出す音も基本的にはそんな感じではありますが、歌詞の面でもサウンドの面でも典型的なハードコアパンクとはビミョ~に異なる雰囲気もあります。

 

彼らの場合、歌詞の面で言えばストレートに怒りを吐き出すというよりは、満足のいっていない自分自身の人生や精神に対して問い、現状から少しでも脱却しようともがきながら前に進む熱さ、生き様を感じます。どことなくGAUZEの歌詞にも通じる、ケツを蹴り上げられるような精神性があると言えますね(あそこまでストレートではないけど)

 

「現実を見ないポジティヴシンキング」ではなく「自分のふがいなさを認めたうえで前進する気概」を持つ歌詞は素晴らしく熱く、特にM3「EMPTY & TRUTH・虚しい真実」の歌詞なんて、現代人なら血涙流しながら共感するのではないでしょうか。

 

そしてサウンド面でいうと、メタルのようなシャープさ、ザクザク感のない潰れたような歪みを効かせたギターと、MUNEさんによる喚き散らす迫力満点のヴォーカル、ハードコアらしいシンガロングを交えたスタイル。

 

これだけだと普通のジャパコアと大差ないのですが、彼らの場合COMIさんのギターがキャッチーというほどではないものの、なかなかにロディアスなリードともとれるようなフレーズを積極的に取り入れたり、ただひたすらに突進するだけではない、ある種の繊細さを見せるプレイが聴きどころとなっているのです。

 

特にM6「ドロドロ」のズンズン響くノリの良いリフ運びと、テク重視にならないギターソロ、M7「BACKPEACE FUCK OFF!」の熱すぎるシンガロングと共に流れる流麗なリードなんかマジにカッコいい。衝動だけではない、ここまで音楽的な魅力を放つギターはジャパコアにはあまり聴かれない要素なのではないでしょうか(僕が知らないだけで他にもいろいろいるかもしれないけど)

 

もちろんギターが多少メロディアスだからといって、エモ・メロコア路線(それはそれで好き)に日和るなんてことは一切なく、魂を揺さぶる轟音のハードコアパンクという軸は一切のブレがない。ハードコア野郎が「ケッ、メロなんて取り入れて売れ線に走りやがって」と唾棄するようなシロモノではありません。この辺のバランス感覚が魅力ですね。

 

この手のハードコアとしてはかなり聴きやすい部類に属する音だと思うので、「ハードコアってただ叫んでるだけで苦手...」だなんて言っている人にも聴いてみて欲しい1枚。まあそんな人がこのCD手に取るとは思えないけど(笑)