インターネットが台頭して久しい昨今。YouTubeでMVが無料で見られるのが当たり前になり、Apple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスが本格的に稼働して、CDの売り上げは減少の一途をたどっているのは周知の事実であると思います。
90年代はドラマのタイアップやら何やらで知名度を獲得した曲・アーティストは、シングルでも数十万枚はもちろん、百万枚単位で売れていたのに対し、現在はアルバムでも一万枚売れれば週間チャートのトップ10に入ってしまうありさま。
僕のように20代半ばでCDを買い続けている人なんていうのはかなり稀で、きっと多くの若い世代の人はスマホのアプリで好きな曲を延々にかけているのだと思います。まあ僕もCDをスピーカーを通して聴く機会は減って、iPodに入れた音源を再生する頻度が高くなっているのですが。
そんなメディア冬の時代において、売り上げを伸ばしていると言われているのがアナログレコード。大きなジャケットに黒光りする盤面、CDとは違った趣の音質などなど、このご時世において音楽ファンの心を(局所的ではありつつも)しっかりと掴んでいるようです。
レコードがCDを超える......。CDが当たり前になっている時代に生を受けた身からすると(かろうじてカセットテープもありましたが)にわかには信じがたいけれど...
僕は別に「音楽ファンならアナログレコード持ってなきゃアカン!」なんて考えは持っちゃいませんが、大学時代バイトしていたCDショップの先輩にアナログの魅力を色々と語ってもらい、興味を引かれてプレイヤーを購入。数こそ少ないもののレコードは持っています。
先述の通りiPodで通勤中や出かけに音楽に触れることが多くなりましたが、そういった行動中のBGMみたいな聴き方ではなく、大きな盤を取り出し、盤面のホコリを払ってターンテーブルに乗せ、ゆっくりと針を下ろし聴き浸る...。デジタルにはないこの段取りを踏んだ後、どこか丸みのある暖かな音に触れた時、しっかり音楽と対面している感覚が味わえるのです。「ああ、俺は今音楽を聴いてる。音楽鑑賞をしているんだあ...」と。まあ音楽通ぶりたい気持ちからくる自己満の面も多少はあるのは否定しませんけどね(笑)
僕が最も敬愛してやまないBRAHMAN。もちろんアナログ盤も愛聴しております。『超克』が中古盤屋さんをめぐってもなかなか見つからず、バイト時代に何故買わなかったのかを後悔中......
COCOBATのアルバム。ハードコアバンドはアゲインストなスタンスをとるのが基本なので、デジタル全盛の時代においてもアナログ率は高いと思われます。
IRON MAIDENの名ライヴ盤も何故かアナログで所有。4枚組という大作で重量感タップリ!
AVENGED SEVENFOLDの最新EP。最初聴いたとき45rpmの本作を33rpmで回したため、M・シャドウズのヴォーカルがアザラシのようになってしまい面食らったのはナイショ(笑)
バイト時代に先輩から譲ってもらったハービー・ハンコックとデューク・エリントン。CDショップでバイトしてなければジャズを聴く機会なんて喫茶店のBGMくらいでしかなかっただろうな。
そして今年発売された新譜においても、あえてCDではなくアナログレコードで購入したタイトルがあります。それがOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)の最新作『OAU』。
先日感想を上げた「帰り道」「Where have you gone」を収録した全13曲入りの最新作。本作は初回盤と通常盤のCDの他、アナログレコードの形態でも発売され、僕はレコードを選びました。
理由はOAUの音こそアナログの音質で聴くべきものではないかと思ったからです。
BRAHMANの求道的で甘さの無いハードコアパンクとはうってかわって、様々な楽器を用いて柔らかで優しい音楽を奏でるOAU。彼らの音楽はiPodのデジタルな音でながら聴きするものではなく、アナログの音質でじっくりと浸るように聴くのがベストだと判断したのです。
いや、もちろんCDやイヤホン越しで本作を聴いても魅力が損なわれるようなことはないとは思いますが、せっかくレコードとしても生産されるのであれば、よりよく音楽的ポテンシャルが発揮できそうな音で味わいたいものじゃないですか。
実際針を落としてみると、その木綿のように柔らかくたおやかで、時に楽し気に、時に儚く響くアコースティックサウンドはすこぶる魅力的。特にA面のM2「こころの花」、M4「帰り道」は「2019年 心にグッとくる賞」の大賞を与えたい出来栄え。
僕はストリーミングも否定したくないのですが、たまには手間をかけてレコードを再生するのも悪くないですよ。特に彼らのようなぬくもりに満ちた音ならなおさら。シンプルにオススメです。
M2「こころの花」 MV