日本のヘヴィメタルアーティストとしては最も世界的な知名度を獲得するに至ったBABYMETAL。前作『METAL RESISTANCE』より3年ぶりとなるニューアルバムで、YUIMETAL脱退を受けて新体制となってから(デジタルを除けば)初の音源リリースとなります。
メンバー脱退を挟み心機一転!という気概があったのか、本作にはB'zの松本孝弘さん、ARCH ENEMYのアリッサ、Sabatonのヨアキムなど錚々たるゲストアーティストを迎え、さらに二枚組仕様というパッケージと、かなり気合が入った作品であることが伺えます。
そしてアメリカのビルボードチャートで13位にランクインするという成績を残し、見事その気合に見合った記録を打ち立てました(まあ日本以上にフィジカルで音楽が売れない海外のチャートにどれほど意味があるのかはわかりませんが...)
本作発売直前に出たヘドバンVol.24の二人のインタビューでは「BABYMETAL像を守りすぎていたから、もっと自由で面白いものを作るためにそれを壊そうとした」という旨を話しており、編集長の梅沢さんも「聴いて思わず笑ってしまう」という感想を漏らしていたので、前作と比べてかなりバラエティに富んだ作風になるであろうことは簡単に予想がつきました。
実際にDisc1のM2「DA DA DANCE」は90年代J-POP風味のダンスミュージック要素をかなり大胆にブレンドし、M4「Shanti Shanti Shanti」はアラビアンなエキゾチックムードが濃厚、M5「Oh! MAJINAI」はかなり本格的なフォーキッシュメロが聴け、M6「Brand New Day」は変拍子を織り交ぜたモダンプログレと、かなり節操のない様相を呈している。
Disc2は本作最大の異色作M4「BxMxC」、タイのヒップホッパーのF.HEROを迎えたM3「PA PA YA!!」を含むとはいえ、Disc1と比べると比較的シリアスなメタル路線。豊かな曲調以上に純粋なメロディーの良さと、SU-METALの清雅でまっすぐなヴォーカルが活きており、メロディアスなメタルを好む身からすると楽曲単位ではこちらの方が気に入りました(BABYMETALらしい雑多な面白さはDisc1が上)
特にアルバム中一曲は必ず収録されるメロディックスピードメタルナンバーであるDisc2 M8「Arkadia」は、X JAPAN風のツインギターの絡みに、流麗で力強いメロディーが疾走する、ラストを堂々と飾るに相応しい一曲に仕上がっているのが嬉しいところ。
そんな感じで「モダンでラウドなメタルに様々な音楽スタイルを混ぜ込む闇鍋スタイル」は不変。それでいて音楽自体のクオリティーは一貫して高くまとまっていることもあり、過去二作を楽しめたファンであれば本作も間違いのない充実作に仕上がっていると思います。一つの作品でこれだけ曲調の横軸を広げられ、それを「アリ」にしてしまえるメタルアーティストなんて、世界広しといえどもなかなかいないはず。
ただバラエティ豊かとはいえ、世界的な成功を経験してしまい、かつメンバーも20歳を超えてしまったことも影響しているのか、1stアルバムのような「恐れるものなんて何もないから、やりたい放題し放題、とにかく面白いものを作ってやろうぜ!」という意志、グチャグチャでハチャメチャな印象は無く、良くも悪くも作品として真っ当になったのは意見が分かれるところかも(これは前作にも言えることですが) もう今のBABYMETALから「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」や「Catch me if you can」のような曲は生まれないのでしょうね。
ちなみに僕は国内盤の初回限定仕様を買ったのですが、ネット環境があれば高画質なMVがYouTubeでいくらでも観られる今、付属のDVDの内容が収録曲のMVのみっていうのはあんまり嬉しくないなあ(笑)
Disc1 M4「Shanti Shanti Shanti」 MV